倉庫に残る機械
顧客の不審通信が収まると、久世匠には別の厄介な仕事が待っていた。更新を予定していた監視装置の交換だ。仕入れ先の技術者が到着できず、設置日は延びそうだった。営業の真壁は顧客へ延期の可能性を伝え、久世は影響のある監視範囲を確認した。
倉庫に残る古い機械は、まだ使える。だが交換を遅らせれば、保守期限に近づいてしまう。銀利は無理に社内だけで設置しないと決めた。手順上、仕入れ先の立ち会いが必要だからだ。久世は早く済ませたくてたまらなかったが、社長の判断が正しいことも理解していた。
良助は部品のラベルを読みながら「同じ型番に見えても、製造時期が違うんですね」と言った。久世は「だから間違えるなよ」と笑い、交換対象の一覧を示した。青年は触ってはいけない箱に赤い印を付け、作業スペースを空けた。地味な仕事だが、そのおかげで久世は確認に集中できた。
夕方、仕入れ先から代替の技術者を手配したと連絡が来た。延期は一日だけで済みそうだ。ただし顧客の担当者が立ち会えるか、まだ分からない。真壁は新しい候補日を二つ送り、相手の返答を待った。急いで約束を決めないことで、かえって余計な調整を減らせる。 久世は交換の予備機を机に置き、箱の番号を二度確かめた。忙しい日に増えた確認だが、作業を始めてから迷うよりずっと短く済む。
倉庫のシャッターを下ろす前、久世は銀利へ作業の状況を報告した。「予定より遅れました」「問題ない。安全に終わるほうが先だ」。久世はその言葉を素直に受け取った。いつもなら自分の遅さを責めたかもしれない。今日はまず、必要な手順を守れたことを確認した。




