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みんな真面目なのに、会社は赤字です。――十一人目の新人から始まる会社再建  作者: 竜太郎


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雨の日の報告書

雨の金曜日、トラッバセキュリティの入口には濡れた傘が十一本並んだ。事務所の結露は業者の点検待ちで、田倉は床のマットを新しいものへ取り替えた。昼前、各担当から原価の試行記録が集まる。二週間分だけでは結論を出せない。だが従来の契約単価が、作業量の増加に追いついていないことは数字に現れていた。

銀利は社員を集め、事実を説明した。「会社はまだ赤字だ。いままでの働き方が悪かったからではない。引き受けた仕事の形と、受け取る対価がずれている」。責任をぼかしているわけではなかった。契約を決めた社長自身も、その結果を引き受けると言っている。誰も口を挟まず、表を見つめた。

田倉は来月の資金繰りを示し、真壁は更新交渉の状況を伝えた。飯塚は当番の見直しについて話し、日下部は手順書の整備が続いていると報告した。それぞれの改善は小さい。全て成功したわけでもない。銀利はそのことを隠さず、続けるものと止めるものをその場で分けた。

良助は机の端で、配布資料が足りなくならないよう数えていた。「何か質問は」と聞かれ、少し迷ってから「来月も同じ表を使うんですか」と尋ねた。銀利はうなずいた。「使う。変わった数字が見えるように」。青年は安心したように予備の紙を揃え直した。 田倉は会議前に窓を少し開けた。湿った空気が入り、紙の端が揺れる。雨音の中で話す数字も、明日にはまた変わっていくものだった。

会議が終わると、久世は点検に戻り、尾高は顧客へ電話し、広瀬は古い資料の参照先を修正した。赤字の会社にも午後の仕事はある。雨は夕方まで降り続いたが、足元の水たまりだけは、少し小さくなっていた。

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