仕入れ先の通知
クラウド基盤の利用料金が改定されるという知らせは、細い封筒一通で届いた。電子メールにも告知はあったが、田倉澄子がようやく内容を確かめられたのは月末の締め作業が終わってからだった。値上げ自体は業界全体の動きで、抗議しても止められない。だが同じ使用量でも来月から費用が増える。
銀利は久世を呼び、保存期間と圧縮方式を再点検させた。重要な記録を費用のために捨てる選択はない。一方、同じ内容を何度も保存している場所は確かに存在した。誰がいつ作ったか不明のバックアップもある。良助は資料の横で、保存の理由と期間を書き分ける作業を手伝った。
久世は一つの保管領域を削れば大幅に節約できると気づいた。ところが日下部が過去の監査要件を調べ、その領域は証跡保全に必要だと示した。久世は案を取り下げる。自分なら気づけなかった、と言ってから照れたように笑った。技術的に消せるものを、組織として消してよいとは限らない。
代わりに彼らは、試験用の古い仮データを所定の手続きで削除する計画を立てた。削減額は小さい。銀利は「小さくていい、根拠のあるものから」と了承した。さらに仕入れ先へ、契約条件に合う割引制度がないか確認を依頼する。その交渉は社長自身が担当した。 田倉は請求書の明細を見直し、値上げの影響がどの顧客へ大きく出るか印を付けた。同じ割合の改定でも、監視量によって負担は違った。
夕方、田倉は改定後の支払予定表を更新した。数字は厳しくなったが、知らないまま迎えるよりは良い。良助は「来月の欄、黄色になりましたね」と言った。田倉は赤ではなく黄色を選んでいた。「まだ手があるから」。彼女はそう答え、一覧の端へ確認予定日を書き足した。




