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みんな真面目なのに、会社は赤字です。――十一人目の新人から始まる会社再建  作者: 竜太郎


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三枚の請求書

田倉澄子は机に三枚の請求書を並べた。支払先は同じだが、期間と契約番号が異なる。前任者が分割した契約の名残で、毎月照合に時間が掛かっていた。まとめて請求してもらえば楽になるかもしれない。しかし支払条件が変わると、手元の現金の動きにも影響する。

田倉が仕入先へ電話すると、担当者の長谷部は「一括にするなら翌月の初日に請求する」と答えた。つまり支払日が前へ寄る。帳票が一枚減る便利さと、資金繰りの余裕は同じではない。田倉は提案を保留し、銀利へ三か月分の予定表を届けた。

銀利は数字を見て、変更しないほうを選んだ。「いま便利さを買う余力はない。照合方法のほうを変えよう」。判断は早かった。顧客からの入金が約束どおりに来ても、月末に余る金が十分ではないことを社長は知っている。田倉は書式を統一し、請求番号の対応表を作った。

作業を手伝った良助は、三枚の請求書のうち一枚だけ税の表示方法が違うと気づいた。田倉は契約の開始時期が違うためだと説明し、勝手に数字を合わせないよう注意した。青年は電卓を返し、「同じ支払先でも、同じ計算じゃないんですね」と素直に答えた。

西園は送られてきた資料を見て、会計上の区分と請求書の見え方を一致させる必要はないと助言した。田倉は仕入先側の都合も考え、明細に契約番号を残してもらえるかだけ尋ねた。双方の事務作業が増えない範囲なら、契約自体を動かすより穏当な方法がある。銀利もその案に賛成した。

数日後、長谷部から照合しやすい明細が届いた。仕入先側も請求をまとめずに済む。田倉はファイルの背表紙を書き直し、資料を棚へ戻した。何かを削らなくても事務の苦しさが減ることがある。今月の資金残高は大きく変わらなかったが、確認待ちの箱は確かに軽くなっていた。

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