箱に入らない記録
物流倉庫の保守担当、高瀬はトラッバの久世から届いた保管容量の案内に目を通した。ログが増えている原因の一部は、倉庫側で増設したハンディ端末にある。導入時にセキュリティ部門へ知らせる決まりはあったが、繁忙期で報告が遅れていた。
高瀬は上司へ謝るより先に、端末の台数と運用開始日を揃えた。自社の管理不足を隠せば、次の調査も誤った前提で行われる。トラッバの野江は受け取った一覧と収集対象を突き合わせ、追加の費用が必要な場合と不要な場合を分けて説明した。全部残せば安心とは限らない。必要な記録の種類も保持期間も、契約と業務で異なる。
良助は整理した表を見て「端末が増えた日の前後で、一台当たりの量は変わらないんですね」と口にした。久世は集計の単位を確かめ、想定より増えた分には別の設定変更が関わっていると分かった。だが勝手に収集を止める権限はない。顧客に確認したうえで試験対象を限定した。
高瀬の倉庫では夕方、出荷のベルが鳴った。安全担当が判断を終えるまで、現場の端末は通常どおり使われる。作業を止めるべき事態が出れば、別の手順に移る。それを決めておくのも高瀬の役割だった。
高瀬が一台ずつ端末を確認すると、予備機が想定より多かった。予備機も接続すれば記録が増える。かといって登録から外せば障害時に使えない。現場の責任者が予備機を使う場面を説明し、野江はその条件を別に記録した。両者が同じ端末を思い浮かべられるようになると、費用の話も具体的になった。
帰り支度のとき、彼は連絡帳に増設予定を一行書き足した。半年先の台数はまだ確定していない。分からない数字には、分からないと印を付けた。来週の会議へ持っていく資料は少し厚くなったが、何を確認すればよいかが初めて見える厚さだった。




