十二人の月曜日
月曜日の朝、トラッバセキュリティの事務所には十二人分の湯飲みが並んだ。尾高は電話の予定を確認し、野江は夜間の監視結果を引き継いだ。久世は設備の容量を見て、真壁は顧客との訪問日を調整する。梶原は研修用のノートを開いた。誰も会議室へ呼ばれなくても、会社の仕事は動き始めていた。
田倉は前月の赤字を示す表と、今月の見込みを並べて銀利へ届けた。黒字が一度出た後、採用費用で赤字に戻った。それでも契約の採算と現場の勤務は以前より明確になっている。銀利は売上の大きな伸びを約束せず、次に何を見直すか担当者へ確認した。
銀利は窓際の席で、最初のころに作った資金繰りの手帳を開いた。今も厳しい数字は残っている。だが当時は自分の記憶の中にしかなかった顧客の事情が、担当者の手元にも残るようになった。十二人になったことで管理が少し複雑になり、費用も増えた。それでも誰かが休みを取るたび仕事が崩れる状態へ戻したくはない。彼は手帳を閉じ、田倉から届いた今月の支払予定へ目を移した。昼の短い会議に備え、必要な質問を三つだけ書き出した。
良助は廊下に置かれた研修用の椅子を直していた。梶原が「手伝おうか」と言うと、「大丈夫です。そっちの表、午前中までですよね」と答えた。彼は新人を急かさず、締切を気に掛けるだけだった。銀利は二人の様子を見て、仕事を抱え込ませないよう飯塚へ予定を確認した。
昼前、商工会から新しい相談の連絡が届いた。大口顧客の定例会も控えている。机に置かれた請求書はまだ薄い束ではない。社長は全員の顔を順に見る代わりに、今日の予定表へ目を落とした。十二人の会社には、十二人分の役割と十二人分の生活がある。明日も同じように机へ向かえることが、いまは一番大切だった。




