小さな印刷所の決定
戸沢印刷で予定したアカウント切り替えの日が来た。朝の出荷を終えた後、ソフト会社の担当者が遠隔で接続する。トラッバの日下部は合意された確認範囲を担当し、戸沢は受注処理が続けられるか見守った。作業を進める権限はそれぞれ分かれていた。
途中、旧ソフトが過去の帳票を正しく表示できないことが分かった。新しい権限への切り替えと直接関係があるかは不明だったが、影響が出る可能性がある。戸沢は一度作業を止める判断をした。ソフト会社も賛成し、確認すべき点を持ち帰った。
切り替えが完了した日、戸沢は印刷機の横で小さく伸びをした。機器の設定が安全になったからといって、商売の不安が消えるわけではない。それでも仕事の道具を誰が使えるか分かるようになった。戸沢の妻は請求書の支払日をカレンダーへ書き、長く続けられる範囲で次の改善を考えた。真壁は必要以上の追加契約を勧めず、今後の相談窓口だけ伝えた。帰りの車で日下部は、日常の仕事が止まらなかったことを一番の成果だと思った。
良助は翌日報告を読んで「予定より遅れても、今日印刷できてるんですね」と言った。日下部は現場が業務継続を優先した理由を説明した。青年は「なら良かったです」と短く返した。
戸沢は翌朝、古い帳票を問題なく開けることを確認した。切り替えの成功は、設定画面だけでは分からない。いつもどおり納品書が印刷できて初めて安心できた。
次週、ソフト側の設定を修正したうえで切り替えが完了した。戸沢は作業費用を支払い、必要な記録を保管した。真壁は初めての小規模診断から続く案件を売上へ計上したが、工数も一緒に確認した。小さい会社同士の仕事は、値段より先に人の予定が重なっていた。




