借りた手を返す
印刷所の戸沢から、小規模診断後の改善作業について追加相談が来た。古い共有アカウントの切り替えは、ソフト会社の協力が必要だという。トラッバの日下部は前回の診断結果を確認し、自社が担当する範囲を改めて説明した。複数社の仕事が重なるため、誰が何をするか曖昧にできない。
戸沢は「全部まとめてお願いできると思ってました」と言ったが、日下部は契約にない変更を勝手に引き受けなかった。代わりに関係者を交えた確認会を提案した。作業日には印刷機を止める必要があるかもしれず、納期の調整は戸沢が決めることになる。
戸沢は印刷所の机で、納期表と作業予定を交互に見つめていた。取引先の学校は行事に使う冊子を急いでいる。ソフト会社にもトラッバにも別の仕事がある。どこか一社へ無理を強いるのは簡単だが、長い付き合いを続けるなら避けたい。戸沢の妻は印刷の順番を入れ替え、一日だけ機械を使わずに済む時間を作った。自分たちの小さな工夫が、ほかの会社の勤務にも影響することを初めて意識した。
真壁は三社の候補日を並べ、無理に休日へ作業を押し込まないよう調整した。戸沢の納期を守ることも、技術者が休むことも同じ予定表に載っている。誰か一人が無理をすれば済む、と考えないことにした。
戸沢は合意した作業範囲を家族へ説明した。機械に詳しくない妻にも、予定を変える必要があるからだ。彼女は納期表を見て「これならできる」と答えた。
三社で相談した結果、平日の空き時間を使って段階的に確認することになった。戸沢は顧客へ納期の調整を伝え、ソフト会社は必要な技術担当を確保した。トラッバの作業範囲も正式に合意された。作業はまだ先だが、準備の段階から誰かが無理を背負わずに済んだ。




