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みんな真面目なのに、会社は赤字です。――十一人目の新人から始まる会社再建  作者: 竜太郎


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十二脚目の椅子

梶原の最終面談の日、田倉は会議室に椅子を一脚増やした。正式な採用が決まったわけではない。けれど予定に余裕があるほうが、落ち着いて話せる。梶原は前回より自然な顔で来社し、夜間当番についての追加質問を持っていた。

銀利は事業の現状を隠さなかった。一か月だけ小さな黒字だったこと、採用後に教育費が掛かること、まだ十分な余裕がないこと。梶原は不安そうだったが、説明を最後まで聞いた。社長は条件通知書を示し、返答期限を設けた。今日ここで決めてほしいとは言わなかった。

田倉は面談が終わってから、梶原の個人情報を扱う書類を鍵付きの場所へしまった。採用されるか分からない人の情報にも、適切な管理が要る。銀利は人事を任せきりにせず、正式な待遇の決定と資金の見通しについて自分の責任を確認した。候補者に魅力的な言葉を並べるだけでは会社は人を雇えない。決まった条件を守り続けることが仕事なのだ。田倉は面談室の時計を止めず、次の予定を書き加えた。

田倉は面談の資料を片づけ、応募者の個人情報を保管場所へ移した。銀利は返事の期限を改めて確認した。候補者を待たせたまま会社の事情だけで決定を引き延ばさないために、社内の次の会議を短く設定した。

飯塚は新しい人へ任せたい業務を、初日から扱うものと数か月先のものに分けた。採用の決定前から期待を膨らませすぎないためだ。紙の一番下には「相談先」を書き添えた。

梶原は帰路、もう一社の選考結果が翌週出ることを思い出した。どちらを選んでも生活が変わる。駅前の喫茶店で条件書を開き、心配な点を書き出した。トラッバの採用は、社長の期待だけでは決まらない。小さな会社の増員は、働く人の人生を一つ受け入れることだった。

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