会議にいない人
飯塚航が休んだ日、運用班の打ち合わせはいつもより静かに始まった。小田切は当番表と対応中の案件を確認し、野江は設備変更の予定を説明した。広瀬は研修の進み具合を報告する。上司がいなくても、必要な会議はできるはずだった。
ところが一件、誰が判断を引き受けるのか決まっていない案件があった。顧客への説明資料はできているが、技術的な影響の最終確認を誰へ求めるのか曖昧だ。小田切は出席者に意見を聞き、代理承認の規則を確かめた。銀利へ確認すると、事前に任命した別の責任者がいた。
飯塚が休む前日の夕方、小田切は自分が司会をする会議の議題を三つへ絞っていた。増えすぎた案件を一度に片づけるつもりはない。野江は定例報告の期限、広瀬は教育時間を優先したいと言った。意見が違うのは自然なことだ。小田切は参加者それぞれの事情を聞き、今週決める必要があるものだけ残した。結果を翌日共有すると、飯塚は「それでいい」と返した。会議は上司のために開くものではなかった。
小田切は会議の終わりに、飯塚が不在だったため決められなかった事柄を隠さずまとめた。手順上の問題なら、会議に出席した人の判断力だけでは解決しない。翌日見せる一覧には、決定済みと未決定を色ではなく言葉で区別した。
広瀬は会議中に取ったメモを小田切へ渡した。報告の順番だけでなく、誰が何を担当するかを書いてある。議事録は上司のための記録ではなく、次の当番が読める地図になった。
翌日、飯塚は不足していた代理手順を聞き、謝罪より先に仕組みを直した。小田切は、迷いがあったことを隠さずに伝えた。会議が一度止まったからこそ、次に止まらない方法を作れる。飯塚は休暇中、久しぶりに昼寝ができたことを小さな声で話した。




