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みんな真面目なのに、会社は赤字です。――十一人目の新人から始まる会社再建  作者: 竜太郎


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社長の代わりではなく

銀利の出張中、顧客から技術的な質問が入った。いつもなら社長へ直接電話が来る内容だ。今回は尾高が受け、契約上の窓口から日下部へつないだ。答えに時間は掛かったが、確認すべき担当者が誰なのか分かっていた。

日下部は判断に必要な情報を揃え、銀利へ承認を求める必要がある箇所だけ分けた。社長は移動中の短い時間に要点を確認したが、細部の説明までは引き受けなかった。真壁も顧客との連絡を自分で進めた。全員が社長の代役になる必要はない。

日下部は社長不在の電話に緊張したものの、質問が分からないときは一度保留にした。尾高が顧客の名前と連絡予定を確認し、野江が技術的な証拠を揃える。複数人で対応したぶん、一人がすべてを即答するより時間は掛かった。顧客は理由が明確なら待てると伝えた。銀利も回答を聞き、必要以上に手を加えなかった。任せることは自分の知識を隠すことではなく、他人が判断できる条件を揃えることだった。

良助は社内の受付票へ「今決められる人」という欄を足していた。尾高が理由を聞くと「銀利さんだけが決められることと、皆さんが決められることが混じってたので」と言った。尾高は社内規程と合うよう表現を整えた。

真壁は翌朝、顧客へ予定どおりの時間に連絡した。社長の帰社を待てば早く終わったかもしれないが、約束した窓口で説明できたことには意味がある。先方も落ち着いて質問できた。

夜、銀利が帰社すると連絡簿には対応の履歴が残っていた。彼がいなくても進んだ仕事と、彼の判断を待っていた仕事が区別されている。自分が必要なくなったわけではない。必要とされる部分が正しく見えるようになったのだ。銀利は全員へ礼を言い、翌朝確認する項目だけ手帳に残した。

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