契約が続く日
卸会社から正式な更新方針が届いた。無条件の値下げではなく、利用頻度の低い補助報告を減らし、必要な監視と緊急連絡を残す方向だ。契約金額はわずかに下がるが、対応工数も減る見込みがある。真壁は手放しで喜ばず、運用部門へ変更点を確認した。
銀利は新しい範囲が今の体制で守れるか尋ねた。飯塚は夜間の負担と報告頻度を再計算し、日下部は報告書の様式変更に必要な時間を見積もった。双方の署名が揃うまでは、まだ旧条件での仕事が続く。
新しい契約が成立した後、日下部は旧版の定例報告のひな形を参照用に移した。削減した項目がいつの間にか復活しないよう、担当者全員へ変更内容を説明する。尾高も顧客の窓口に、次月から変わる部分を確認した。相手がこれまで受け取っていた資料を急に失えば、丁寧な交渉の意味がなくなる。真壁は次回の定例会へ同席して、実際に不便が出ていないか聞くことにした。契約書に署名が入った後も、営業の仕事は終わらない。
良助は二枚の契約案を並べ、「安くなるけど、なくなる仕事もちゃんと書いてあるんですね」と言った。真壁はうなずいた。削られた仕事を、好意で後からこっそり続ければ、今回の合意が無意味になる。
報告の作成時間が減る見込みでも、飯塚はすぐに当番を減らさなかった。実際の一か月を見てから判断したい。真壁はその慎重さを支持し、契約の効果を急いで語らなかった。
署名が済んだ週の終わり、卸会社の担当者は旧版の資料を丁寧にしまった。営業を通じて連絡先が揃い、購買部も承認した。トラッバの収益が急に跳ね上がる契約ではない。それでも守れる約束が残った。真壁は机のカレンダーに次の定例会の日を書き込んだ。




