古い送り状
尾高は医療機器卸から届いた資料の送り状に、退職した担当者の氏名が残っているのを見つけた。形式上の記載であって、誤送信が起きたわけではない。それでも今後の連絡が昔の担当へ向かわないよう、先方へ確認を頼んだ。
顧客側では購買部と情報管理部で異なる書式を使っていた。更新契約の窓口が変わった際、共有された一覧の修正が一部漏れていたという。尾高は訂正内容を受け取り、社内の連絡先一覧へ反映した。相手の組織図を勝手に推測して補うことはしなかった。
尾高は連絡先を更新するとき、旧担当者から受け取っていた丁寧な返信を思い出した。その人はすでに別の会社へ転職しているらしい。以前の良好な関係があっても、今の業務上の権限とは別だ。彼女は親しさと手続きを混同しないよう自分へ言い聞かせた。問い合わせが多い日、つい知っている相手へ直接電話したくなることがある。だが組織を動かす連絡は、今責任を持つ人へ正しく届ける必要があった。
日下部は新しい送り状の見本を見て、古い部署名が残っていないか確かめた。システム上の連絡先だけ変えても、手動で使う書式には古い名前が残ることがある。尾高と分担し、変更記録に訂正した場所を記した。
日付だけが違う書式もあり、尾高は更新履歴を調べた。古い様式を責めるより、次から迷わず新しいものを使えるようにする。棚の見出しは少しだけ長くなった。
後日、顧客から新しい書式が届いた。尾高は修正された箇所だけでなく、ほかの宛先が正しいことも確かめた。小さな確認は報告書の完成としては数えられない。しかし誰かが迷わず連絡できる状態は、事故のない日を支えている。




