院長の質問
診療所の院長、深浦は教育サービスの説明を聞き、「何人受ければ安全になりますか」と尋ねた。真壁千尋はすぐに数を答えなかった。研修を受けることと、すべての事故を防げることは違う。受講者数を成果として示すことはできるが、危険が消えたと保証することはできない。
日下部は画面越しに、短い研修とその後の問い合わせ先の整備を提案した。専門用語を覚えるより、不審な連絡が来たとき止まって相談できることが大切だ。川根は受付スタッフが交代で勤務するため、一度の講座に全員を集められないと説明した。
深浦は夕方の診療を終え、川根がまとめた勤務表を見た。教育が必要なことは分かるが、診療時間の短縮には患者への説明も要る。彼は全員同時に集める案を捨て、短時間の複数回開催なら可能か検討した。川根は早番と遅番の負担が偏らないよう案を作り直した。トラッバの側でも日下部が移動時間と資料の準備費用を見積もっている。どちらの会社も、空いている時間が無尽蔵にあるわけではなかった。
川根は院内の小さな会議で、患者を待たせないために研修をどこへ入れるか相談した。医師と看護師、受付担当で空き時間が異なる。深浦は無理に一日へまとめず、同じ内容を複数回実施する案を検討するよう指示した。
川根は来院者の目に触れない場所へ研修案内を置いた。スタッフの勉強会の詳細を待合室へ出す必要はない。受付の人へ聞けば分かる場所を決め、それを職員間で共有した。
深浦は持ち帰って検討することにした。待合室には午後の患者が集まり、川根は会議を切り上げた。真壁は小さく頭を下げて退出した。営業の結果が出る前にも、相手の一日は続く。帰社後、提案書へ「予定変更時の扱い」を明記したのは、そのためだった。




