診療所の昼下がり
市内の小さな診療所で、事務長の川根が業者への相談先を探していた。電子カルテを運用する会社とは別に、職員が受け取る不審なメールへの教育を検討している。サイバーセキュリティという言葉は知っているが、患者情報を外部へ見せずに相談できるか不安だった。
商工会の神谷から紹介を受け、真壁は診療所へ向かった。受付には診察を待つ人がいて、長い商談をする場所ではない。川根は休診時間の短い会議室へ案内した。真壁は先に守秘と対象範囲の話をし、職員向けの一般教育だけなら患者情報を預かる必要はないと説明した。
川根は診療所の休憩室で、職員が不審なメールについて互いに相談できているか聞いた。ある看護師は、忙しいときは相談する前に閉じてしまうと答えた。川根はそれを責めなかった。開かずに消すべき場合もあれば、報告が必要な場合もある。どう判断するか教える時間が必要だった。真壁はこの話を聞き、訓練をするなら受付と看護師の勤務時間を別々に確認するべきだと感じた。職種の違いも、現場の人数も、資料だけでは見えない。
川根は受付の空いている時間に、事務員へ困っていることを聞いた。専門家へ相談するほどではないと言っていた人からも、具体的な不安が出てきた。メールの差出人を確かめる場所や、迷ったときに誰へ声を掛けるか。誰もその答えを共有していなかった。
川根からは、院長と相談した後に返事をするという連絡があった。診療所には患者への説明や診療の予定があり、セキュリティの課題だけで時間が使えるわけではない。真壁は締切を強く迫らず、比較に使える内容と費用だけ送った。




