写真の裏面
広瀬は研修資料へ実際の監視画面を載せようとして、日下部から止められた。顧客名を黒く塗っても、画面の隅に識別番号が残っている。研修用なら外へ出さないからよいと思っていたが、社内で広く配るにも理由と範囲が必要だった。
日下部は広瀬を責めず、どの情報が演習に必要か尋ねた。警告の見方だけ教えるなら、架空のデータで十分だという結論になった。久世が訓練用の画面を用意し、野江は本番と似すぎないよう表記を変えた。実際の顧客を使わないぶん、自由に失敗できる。
広瀬は架空の顧客名を考える際、実在の会社と偶然同じにならないよう気をつけた。笑える名前にすれば覚えやすいが、訓練が遊びに見えるのも避けたい。小田切は記録の時刻だけを少しずらし、因果関係を追える演習にした。模擬資料を使うと、失敗したときに本番の顧客へ迷惑を掛けない安心がある。梶原が入社した際にも使えるよう、正解だけでなく途中で迷いやすい点を別の紙へ残した。
広瀬が作った演習表を最初に解いた小田切は、途中に答えが二通りあることを発見した。良い問題にしたいという工夫が、かえって判断の前提を曖昧にしていた。二人は正解の暗記より、確認する条件を明示する形へ直した。
広瀬は模擬画面の配色も確認した。警告の重要性を色だけで判断させないため、文字と時刻の表示を優先した。小田切は別の端末でも読めるか試して、文字の大きさを直した。
完成した資料を最初に解いたのは、教えるはずの広瀬自身だった。意図的に誤った順番を混ぜたため、何度も見直すことになった。小田切は横で笑いながら解答を確かめた。翌週の演習では、参加者が本番の環境に触らず、判断の理由を話せるようになった。広瀬は資料の末尾に、改訂日と次の見直し時期を書いた。




