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みんな真面目なのに、会社は赤字です。――十一人目の新人から始まる会社再建  作者: 竜太郎


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十六時の確認

田倉の休暇中、真壁千尋は受領した請求書の金額に違和感を覚えた。前月より高い。ただし同じ取引でも利用量が変われば金額は動く。真壁は慌てて田倉へ電話せず、引き継ぎ資料に書かれた連絡先へ確認した。必要な判断は翌日に持ち越せると分かった。

銀利は十六時の確認時間を設け、当日処理すべきものと、田倉の帰社後でよいものを分けた。真壁が営業へ出ている間、尾高は取引先からの返答を受け取った。請求増加は事前に知らせていた利用量の変更によるものだった。記録を照合していれば、余計な騒ぎにならない。

田倉は代行してくれた真壁へ、支払の判断を任せきりにしなかったことを感謝した。真壁は逆に、権限のない処理へ踏み込まなかったのは手順書に書いてあったからだと言った。銀利は二人の話を聞き、代理担当へ渡す資料は量が少なくても理由を記すべきだと確かめた。引き継ぎは人の記憶を奪い取ることではない。次に困った人が決定の経緯を探せるようにする仕事だった。

良助は受領簿の「確認した人」の欄を見て、「読んだだけと、承認した人は別ですね」と言った。銀利はうなずいた。受け取った書類へ目を通すことと、会社の金を動かす判断は異なる。彼は承認手順を崩さないよう、書類を封筒に戻した。

翌朝、田倉が出社すると机の上には短い記録が残っていた。何も起きなかったのではなく、いくつかの確認が済み、一件だけ判断待ちになっていた。彼女は報告を読み、休暇中のことを聞きながらお礼を言った。真壁は「自分にもできることがあってよかった」と笑った。代わりを務める人にも、自分の仕事がある。

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