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みんな真面目なのに、会社は赤字です。――十一人目の新人から始まる会社再建  作者: 竜太郎


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商工会の昼休み

真壁千尋は商工会の相談窓口へ出向いた。小規模事業者向けの案内を見てもらうためだ。窓口の神谷は資料を丁寧に読み、「この書き方だと、困っている人は結局何を頼めるのか迷います」と指摘した。専門家には明確な境界でも、花屋や工務店には読みにくい。

真壁は持参した表を広げた。まず現在の使い方を聞く短い面談、次に必要なら有償の確認、継続監視は別契約。神谷は「初回の案内と調査を混ぜないで」と助言した。無料相談から無期限の作業へ移ってしまう心配がある。真壁は安く見せる言い方を削った。

神谷は相談に来る商店の多くが、セキュリティの専門用語に慣れていないと話した。「不審メールを相談したいのに、まずシステム構成図を出してと言われたら諦めますよ」。真壁は確かにそうだと感じた。診断を始める前に必要なものを最低限に絞り、分からない項目は面談中に一緒に確認できる形へ変えた。商工会の廊下には地元の祭りのポスターが並び、開いた窓から準備の太鼓が聞こえていた。神谷も窓口の仕事を終えれば、その祭りの世話に向かうのだという。

真壁は窓口を出てから、持参した案内紙を手に取り直した。印刷費を節約するため両面にびっしり書いた説明は、自分でも読みづらい。机へ戻ったら余白を増やそうと決めた。営業資料は専門家の知識を見せる場所ではなく、相談する人が次の行動を選ぶためのものだ。

神谷は翌日、地元の印刷所の担当者へ資料を渡した。印刷所はすぐに依頼するつもりはなく、まず店内の端末を数え始めたという。真壁の売上見込みにはまだ一円も入らない。それでも相談窓口を開くなら、相手が自分で準備できることを示す必要があった。

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