夜勤の条件
梶原の二度目の面談では、質問が途切れなかった。緊急時に誰が出社を決めるのか。夜間の連絡に出られなかった場合はどうなるのか。勤務が続いたとき、どのように休息を確保するのか。銀利は一つずつ答え、未整備の部分についてはその場で約束しなかった。
梶原は前職で、口頭の「大丈夫」を何度も信じてきた。正式な制度より上司の都合が優先される経験がある。銀利は彼を慰める代わりに、現在の就業規則と運用実績を示した。規則に照らして見直し中の点は、いつまでに回答できるかを田倉に確認させた。
銀利は面談を終えてから、説明に使った就業規則の版数を確かめた。採用候補者へ古い資料を渡していたら、善意で説明しても意味がない。田倉は改定履歴と相談窓口の電話番号を追記した紙を準備した。梶原にとって印象的だったのは、社長が難しい質問を歓迎する笑顔を作らなかったことだ。少し考え、資料を確かめ、分かることだけ答える。その姿勢は前職で交わされた曖昧な約束と違って見えた。
会議後、良助は廊下に落ちていた面談用の鉛筆を拾った。「まだ決めてないんですか」と田倉に聞く。「会社も本人もね」と答えると、「両方が決めることなんですね」と納得した。採用する側だけに選ぶ権利があるわけではない。
面談室の外では、別の部署の問い合わせが進んでいた。採用のために会社全体を止める余裕はない。尾高は電話を静かに引き受け、終わるまで会議室の扉を閉めた。梶原には、その気配も職場の一部に見えた。
梶原は帰宅後、二社の条件を比較表に書いた。年収の欄は比較しやすかったが、学べる仕事や生活の余裕は単純な点数にできない。日付が変わる前にパソコンを閉じ、翌日電話すると約束した友人の番号を確かめた。次の仕事は、長く続けられる場所にしたかった。




