払えない相談
講座の話が広まり、地域の小さな福祉団体からも問い合わせが来た。寄付者の情報を扱っているが、専門家へ十分な費用を払えないという。真壁千尋は相談内容を聞き、すぐに無料で支援すると約束しそうになった。困っている人を前にすると、仕事の線を引くのが難しい。
銀利は団体の事情を丁寧に聞いたうえで、一般公開されている対策資料と、公的な相談先を紹介した。個別のシステムを調べるには、責任の範囲と費用を決める必要がある。無料で際限なく引き受ければ、別の顧客の監視や社員の休息へ負担が移る。
良助が「お金がないところは、どうするんですか」と聞くと、銀利は少し考えた。「私たちだけで全部を支えることはできない。でも、相談先を見つける手伝いはできる」。青年はうなずき、案内する資料のリンクを一つずつ確認した。期限切れの制度が混じっていないか、真壁も一緒に調べた。
福祉団体では、担当者が紹介された窓口へ連絡した。利用できる支援制度があるかは、まだ分からない。それでも何から始めればよいか見えてきたと礼のメールが届いた。真壁は返事を読み、契約にならなかった相談をただの失敗として数えないことにした。 田倉は無償相談に使った時間を記録する理由を、良助にも説明した。外部から見れば親切でも、社内では誰かの残業になっているかもしれない。銀利は無理なく続けられる地域向けの窓口を今後検討すると答えた。
事務所では翌月の予算を作る作業が続いている。田倉は講座や相談に使った時間も記録した。善意を無制限の残業へ変えないためだ。誰かを助ける仕事を続けるには、まず会社が続いていかなければならない。




