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みんな真面目なのに、会社は赤字です。――十一人目の新人から始まる会社再建  作者: 竜太郎


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花屋の伝票

公民館の講座から数日後、花屋を営む女性がトラッバへ電話を掛けた。取引先を名乗る相手から、振込先の変更を知らせるメールが来たという。講座で聞いた話に似ている気がして、すぐ送金せずに電話したらしい。尾高は顧客契約のない相手だと確かめ、一般的な注意点を丁寧に案内した。

「メールの中の番号へ電話しないほうがいいんですよね」。女性の問いに尾高は、以前から知っている正式な連絡先で確認するよう伝えた。相手のメールが偽物だと断定できる材料はない。だからこそ、確認する手段を別にすることが大切だった。

良助は電話の後、尾高が書いたメモを見て「お花の仕入れって、早く払わないと困ることもありますよね」と言った。尾高はうなずいた。締切を急かす文面には、相手の暮らしを考える余裕がない。忙しい人ほど確かめる時間を取りにくい。だから短く分かる説明が必要だった。

午後、花屋から再び連絡があった。本来の取引先へ確認すると、振込先の変更は行っていないという。女性は胸をなで下ろし、講座へ出てよかったと話した。尾高は礼を受けながら、個別の被害調査や保証は提供していないことも改めて伝えた。 女性は普段、花の仕入れと発送を一人で管理していた。取引先の名前を見れば信じてしまいそうになるが、急ぐ理由が書かれているほど一度確かめようと決めた。尾高は送られたメール本文を安易に転送してもらわず、必要な範囲だけ聞いた。

その夜、花屋はいつもどおり閉店した。女性は伝票を片づけ、店先の鉢へ水をやった。特別な契約は生まれていない。それでも誰かの仕事が一日止まらずに済んだ。尾高は電話記録を個人情報に配慮して整理し、通常の顧客対応へ戻った。

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