工場長の不安
部品メーカーの工場長、藤原は定例報告を読んで、以前よりも気になる部分が増えたと感じた。通知の件数ではなく、「未確認」「顧客判断」と書かれた欄が目につく。安全を任せている会社なのに、どうして言い切ってくれないのか。藤原は情報管理者の三好を会議室へ呼んだ。
三好は報告を広げ、トラッバが確認する範囲と自社が決める範囲を説明した。生産設備を止めるか、外部サービスをいつ導入するか。技術的な情報は支援してもらえるが、事業の判断は自分たちの責任だ。藤原は不満そうに聞いていたが、説明の途中で「それなら、決めるための資料が必要だな」と言った。
三好は翌日、銀利へ相談した。社長は新しいシステムを売り込む代わりに、判断に必要な条件と担当者を整理する案を出した。野江は技術的な影響を確認し、真壁は契約の範囲を明確にする。良助は会議資料の「実施可否」という欄を「決定者」と「必要条件」に分けた。
工場では、設備担当と生産管理の担当者が同じ資料を見ることになった。今までは各部署が別々の表を使っていた。藤原は会議の終わりに「安全という言葉で全部まとめていたのかもしれない」とつぶやいた。三好は返事をせず、修正された一覧を手帳へ挟んだ。 藤原は会議後、自分が何を決めたのかを書き出した。機械が安全かどうかの答えを一言で求めるより、止める条件と続ける条件を先に揃えるほうが役に立つ。
数日後、工場から追加の質問が届いた。面倒な質問が増えたのではなく、何を決めるべきかが見えるようになったのだと銀利は考えた。別の町の工場でも、誰かが以前より長く資料へ目を通していた。




