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森の一戦

「へえ! すごい魔力出力だね! 50メートルは距離あるよね。なんだろう今の魔法!」


「精霊魔法……を少し簡略化させたみたいなやつだと思う」


「え、それってまあまあ高度なことしてない? こんなモンスター人里に降りてったら普通に危なくなくなくない?」


 プランタは鉄の剣を抜き、精霊王に向かって走り出した。かなりの速度で走っているが、重心はブレない。精霊王は足元に魔法陣を展開した。それを中心に地を這う雷のような魔法を周辺に放つ。

 プランタはそれを空中に高くジャンプして回避した。そしてそのまま精霊王の首元に斬りかかる。

 しかし、剣身が精霊王に届く数十センチのところで赤い火花が散り、剣とプランタがバチンと弾かれた。


「今のは? スキルによる防御?」


 次にベルがプランタの後ろからナイフの斬撃を食らわせる。ブォンという音と共に、目で追えない程の速さのナイフが精霊王に飛んでいったが、プランタの剣と同じく弾かれた。衝撃で刃が曲がったナイフが地面にカランと落ちる。


「お姉ちゃん。多分これは装備による攻撃をオート防御する、みたいなスキルだ。装備した武器の生半可な攻撃じゃコイツには傷ひとつ付けられないね」


 プランタは剣を体の前に構え直し、もう一度斬りかかった。今度は連続した斬撃を精霊王に浴びせる。しかしそれは全て弾かれてしまった。


「フン……」


 プランタは少し不満気な表情を浮かべた。


 フーレンは少し離れた茂みから、精霊王と2人の冒険者の戦闘を見ていた。


「アイツら……。身のこなし、剣捌きからただモンじゃねえって分かる。冒険者階級で言ったら、青級? いや紫も有り得るな。けどさっきから精霊王にはまるで効いてねえ……! そりゃ討伐報告がねえわけだ!」


 精霊王は一瞬姿を消し、瞬きする間にさっきいた場所から10メートルほど離れた空中に現れた。


「距離をとった……。転移の魔法で……」


 ベルが歩いてプランタの横まで来た。


「それじゃあこれならどうかな?」


 ベルがそう言うと、ベルの腰の辺りを囲うように五線譜の輪が出現した。


『ミスティックマジック・ストライクアリア』


 五線譜の上に現れた無数の音符から放たれた白い光線は、精霊王に次々と直撃したかのように見えた。しかし、土煙が晴れて姿を現した精霊王は無傷でそこに立っているのだった。


「ダメかあ。無属性扱いの魔法なら属性耐性に関係なくダメージ与えられると思ったのになあ」


「《《アレ》》には属性耐性じゃなくて魔法自体に耐性があるのね」


 ベルは手を左右に広げてやれやれのポーズをとった。


****


 フーレンは木陰に身を潜めていた。もう少し近くで戦いを見てみたいという好奇心が一瞬覗いたが、すぐに我に返り、引き続き気配を殺すことに徹するのだった。


「アイツら何モンだよ……。あの子供はヤバそうな魔法簡単に撃つし、女はデカイくせに速いし」


 少年とデカい女騎士は近くに寄り、何やら話し合っている。ここからでは内容は聞こえない。


「でももうずっとアイツに攻撃叩き込み続けてるけどよ、ほぼ無傷じゃねえか……! 叶いっこねえよ、早く逃げろって……!」


 しばらくして、少年がパチンと手を合わせて喋り出した。


「……とまあ、こんなもんかなぁ。十分なデータも取れたことだし、そろそろやっちゃいますか!」


 ……? 2人の冒険者には先程からずっと焦りがない。それどころか、満足と安堵の雰囲気が伺える。


「プランタ?」


「うん」


 女騎士は剣を前に構え走り出した。女騎士を目で追うことができなかった。辺りに風が巻き起こる。

 この森に生息している、音速で飛ぶ鳥獣「バイング」を目で追う事ができるフーレンは驚嘆していた。


「私が、目で追えない……?」


 いつの間にか女騎士は精霊王の目の前に現れ、突きの構えを取っていた。


「ダメだ! アイツには剣の攻撃は効かない!」


 しかし女騎士の構えを見た精霊王は即座に転移の魔法で後退したのだった。


「やっぱり。守れるのは『斬撃』だけみたいね」


 そうか、同じ剣の攻撃でも「突き」は斬撃じゃない。

 精霊王が転移した先には少年が回り込んでいたのだった。


「はいー! お疲れ様!」


 少年は精霊王の腹に足の裏で蹴りを入れた。


 ――ギュイイイン!!


 次の瞬間、木々を薙ぎ倒しながら精霊王は50メートルほど吹っ飛ばされた。それに沿って大地も大きく抉れたのだった。


「……は?」


 フーレンは呆気にとられている。


「ベル、やりすぎ」


「ごめん! いやあ、あのデカブツ、見た目のわりに軽かったんだよお」


 2人は、デカブツが吹っ飛ばされた方向を見て肩を落としている。


「これじゃあ精霊の花がドロップしてても、どこに落ちてるかわかんないわ」


「うん、ほんとごめん」


「2体目、いく」


「承知致しました……」


 2人が歩き出したその時、突如背後から低い声がした。


「オイ、オマエらハンパねぇな……」


 間髪入れず声の主に蹴りを浴びせようとするベルを、プランタは即座に抱きかかえ、転移スキルを使用した。


 ――コンマ1秒前までベルとプランタがいた場所は地面が破壊され、直径10mほどのクレーターができていた。

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