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親父の遺産がダンジョンだった件  作者: 大石次郎


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97話

砂塵の向こうにコッカリルゴーストが率いる軍勢が見え出していた。猛進している。


飛行種の機怪人兵と機械の獣達は合わせて200体余りに減り、コッカリルゴーストはマシンジェムとウォージェムを使って巨大化済みであった。


「YOッ!」


最も射程のあるコッカリルゴーストが先んじてヴァーリンの都の結界に砲撃を始めた。


魔力を籠もった榴弾で一気に結界は消耗するが、被弾面に『事前』に結界の出力が集められていた為にまだ若干の猶予があった。


「どうにか攻撃面を予見はできましたが、城壁が破られる前に撃退できなければ被害は極端に増えてしまいます」


アストロロジーは水晶玉でコッカリルゴーストの様子を確認していた。場所は宮殿ではなく、攻撃を受けてる面に近い城壁近くに張られた本陣であった。


陣にはビショップ、まだ疲労の濃いヤクシャ個体、コメリナ、スキュラ、アリッサ籠を背負ったエル・ジェリーマン、ヒーラー個体達がいた。


「コッカリルゴーストの全身から出ているあの触手のような器官は生物を機械の身体に侵食してまう効果があり、予見するまでもなく非戦闘員の多い所では猛悪な結果を生んでしまいます」


「同士討ちですねぇ」


「コッカリルゴーストを誰が討つかが問題だ。アストロロジー、ヤツはどれ程損耗している? あの強化状態の持続時間も割り出せるか?」


「3割は損耗しています。相手は生存を考えていません。強化状態はあと小一時間、自身の命を燃やし尽くすまで持続するでしょう」


「チッ、面倒なヤツ」


忌々しげなコメリナ。上層に幹部個体や首魁を幾人も置いてきていることも口惜しかった。


「正面から単独で戦って打ち勝てるのは私達の中でエル・ジェリーマン様だけす。しかし、お疲れでもあり相性もよくないので大きく損耗することになるでしょう。ヒーラー個体も連れてしまうと利用されてしまいます。他の残存眷属群の撃退にも絵札兵の活用が叶わなければ損害は大きく増えます」


予見を交えてアストロロジーが続けると、居並ぶ全員渋い顔となった。


「消耗戦になりますねぇ······」


そこへ、


「待たせたな! 俺だぜっっ」


同族兵を100体ばかり引き連れてオークジェネラルが現れた。


「「「······」」」


「おいっ、なんだよ! 2層から駆け付けたんだぞ?! 遠いと転送酔いがドゥンっと腹の底に」


「あ〜、そうですな。皆さんは城壁の氷属性のバリスタの運用をお願いできますか?」


「そんなん絵札兵でもできるだろ?! おいっ、上層幹部チョロいと思ってんなっ?」


ビショップ個体に詰め寄り「まぁまぁ」とヤクシャ個体に間に入られるオークジェネラルであったが、


「やめんか、オークジェネラル」


「私達も援護します」


「連絡が遅いっ! シュウゥッ」


「はぁ、拠点内でも砂漠は具合が悪いのぉ」


ビッグヘッド、レウケートレント、リュブリャナ、ザトウマージが本陣に現れた。


「皆さん、オークジェネラルさん以外は私の予見よりずっと早かったです」


微笑むアストロロジー。


「俺を勘定にいれろっ、チビ助!!」


オークジェネラルが喚きつつ、今にも敵軍が迫り結界の破られそうなヴァーリン拠点の戦力はどうにか整ったのだった。


_____



······しんどっ。迷宮内に迷宮造んなよ! フェネクスの神殿もどうかと思ったが比じゃない。


俺達本隊はようやくボルケーノのいるらしき広間の前までたどり着いていた。


門番に超デカい『ギガントマシンゴーレム』が2体いたが、クリスタルリトーの巨大化腕パンチとヨミロートスの植物触手侵入による核握り潰しで速攻、撃破された。


最終エッジキューブは全滅。黒玉仙とヴクヴ・カキシュは消耗して矮小体になり、黒玉仙はエビルカーバンクルと共にクリスタルの背に隠れた。


ヴクヴ・カキシュは首魁がいないので概ね同じ属性で『テラツツキよりマシ』と判断されたダーファンの背にしがみ付いて迷惑顔されていた。


「さて、開けるか」


俺は鍵の杖で結構ややこしそうな歯車だらけのボルケーノの広間の扉の鍵を開けに掛かった


「中には単体の気配のみ。私はヒホっと前衛に回りますぞ?」


「あたしとツルベ火クィーンはピロシの守りを固めるよ」


「完璧、ヒィッ」


「それ私のよ」


「ヒィっヒィ〜」


「······」


珍しくツルベ火クィーンにチョケられるロックローズを横目で見ながら、俺は扉の鍵を開けた。


めちゃくちゃ、てわりにはフェネクスみたいに自分の部屋から先制攻撃しまくる感じでもなかったな?


全員準備はできてる。俺は歯車だらけの巨大金庫のような扉自体を開けた。


いきなりくるか? と身構えたが、以外と静か。『機械灯(きかいとう)』の平坦な明かりも見えた。


「行こう」


俺達は広間へと入っていった。


_____



歪な機械の玉座に6層首魁ボルケーノは座っていた。


機械人ではあるが、比較的人類に近い姿をしている。工学がテーマの抽象的な演劇の主演俳優と言われたら納得しそうな格好だ。すんごい尖った帽子みたいな煙を噴く機械を被ってる。


なんて軽く圧倒されてると、ボルケーノは頬杖ついて言った。


「どんなネジになりたい?」


「『機械侵食耐性』の祝福を与える!!」


アバドンさんは即応して全員に強力な耐性を与える光の輪を付与した。


その直後に床面から機械の触手が溢れ出し俺達全員を絡め取りに掛かったっっ。


触手は光の輪の祝福によって祓われはするが、激怒した蛸の大群のように続けて押し寄せる!


「完璧ぃ!!」


取り敢えず床面の触手はロックローズが結界を押し付けて引き離した。


これを合図に前衛のクリスタルリトーとフェネクス組、ヘルスパルトイがボルケーノに打ち掛かり、ヨミロートスが床と壁と天井に緑壁を張って直に攻撃される状況を改めたっ。


ボルケーノは玉座に座ったまま巨大な多関節工作作業腕? のような物を多数やはり床から出して前衛組に応戦する。


「······」


無表情で座ったままのボルケーノとめ〜〜ちゃ目が合ってる。


俺は杖で多数のアイスジェムと魔力結晶を展開しながら、名乗ることにした。


「ボルケーノ、俺はピロシ・シープラ」


ドゴォッッ!!


まだ途中だがっ、緑壁の天井を突き破って巨大旋回錐が俺の真上から迫ってきた。べらぼうな魔力が込められてる!


「「「どぉーーっ??!!!」」」


「ヒィィィッッッ??」


アバドンさんは翼を出してケムシーノ達を抱えてヒョイと避けたが、俺と近くにいたロックローズ、ヨミロートス、ゴールドスコップ、ツルベ火クィーンは慌てて飛び退いた。


どうにかジェム類の展開は維持! 旋回錐は床面を抉った後、鎌首をもたげるように俺達に向かって構えた。錐と天井は極太の機械の触手で繋がっている。


内部でも城との一体化は普通に始末に負えないな。


「ネジは自己主張せずともよし。そして」


一瞬でっ、玉座から加速し交錯様に両腕でカイムとテラツツキの喉を殴り付けて緑壁の床に腰までめり込ませ昏倒させた! おおっ?


「三下のネジもチラホラ紛れ込んでいる。余は不愉快」


魔力と殺気を高めるボルケーノっ! クリスタルリトー達は近間に現れた相手に一斉攻撃の構えをみせたが、


「我慢の限界だぁああーーーっっっ!!!!」


唐突に全身から砲門を出して全方位に砲撃しだすボルケーノ!


俺はどうにか完封陣を球状に放っていくらか勢いは殺せたが、周囲はブッ飛ばされ、前衛組は壁に叩き付けられ、結界を張って俺とゴールドスコップとツルベ火クィーンとヨミロートスとアバドンさん達を守ったロックローズはこれ一発の負荷で軽く鼻血が出ちまっていた。


「特に我慢してなかったよなっ?!」


ツッコまずにはいられなかったがっ、想定より好戦的かつ話、通じねぇ。

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