96話
巨人の得物のごとく巨大化しても、伸びる長棍としての特性は失われない。
「意外だろうけどよ!」
激しい砲火を避けながら、受け流しなが、嵐を振り回すように巨大長棍を自在に伸縮させて振り回しゲルリッヒゴーストを打ちのめしてゆくヴァーリン。
「ギギギッッッ?!!」
「弾は真っ直ぐ飛ぶもんだが、棒切れは振れるんだよっ」
頭部の主砲の頭身を叩き折り、旋回する勢いの追い打ちでゲルリッヒゴーストの鋼鉄の下半身を吹き飛ばすヴァーリン。
「ギィーーーッッ!!!」
腹部から下を切り離し、胸部下の切り口を変形させて噴射口を造り火を吹いて急上昇してゆくゲルリッヒゴースト。
「ダハ。お前、身体どーなってんの?」
遁走ではなかった。全身の細かな砲門を対価に頭部の砲身を急回復させている。
狙撃の成立に必要な距離を取ろうとしていた。
ヴァーリンはヒュッと口笛を鳴らし、散り散りに霧散しつ飛行する雲を集め直して再構成し巨大長棍を肩に担いだままどうにか飛び乗った。
「重っ、おっと」
先んじて主砲を再生させたゲルリッヒゴーストが迷宮の天井近くからの早速の狙撃を、上昇しだしながら長棍と回避でいなすヴァーリン。
「ここは狭いっ、射てる回数考えた方がいいぜ!」
「猿メッ!!」
「ダハハハハハ!!!」
2撃目、3撃目。迷宮の天井近くで間近に迫った4撃目をいなしたヴァーリン。
風を唸らせ巨大長棍を一回転させ、天竺閃スキルを再び放つヴァーリン。
「ギ······」
頭部と上半身を全て吹き飛ばされ、ゲルリッヒゴーストは砕け散っていった。
伸びる長棍を縮小させ、雲に胡座をかいて一息つくヴァーリン。汗だくであった。
「ふーっ。何年もぐーたらしてたからさすがにくるな」
下方を見ると、早々にバテたヤコゼンは矮小化して魔の形相で暴れるネガジャバウォックの首にしがみついていたが、戦況は悪くない、というより決定打もなくこの程度の戦力で異常に打たれ強いネガジャバウォックを倒すことは不可能であった。
自分のワーマシラ兵達は『その他の雑兵扱い』もあってさほどの被害は出ていない。
ヴァーリンはこめかみに指を当て、思念を送った。
(俺は内部に入る。お前らは隊を組み直し、増援に備えろ。眷属でもないのにあんまジャバウォックに近付くなよ? 本気になってっから喰われちまうぞ? ダハハ)
さらにヤクシャと拠点のビショップにも思念を送り、
「はぁ、俺の予感だと遅れて入ってもなんとなく間に合っちまいそうなんだよな〜」
らちもないことをボヤき、より上等な霊薬『ハイエリクサー』とまだ持っていたピロシの通信魔力杭を収納の魔法陣から取り出しながら、ヴァーリンは雲を機怪城へと降下させていった。
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色んな意味でヤバそうなバリスタイトゴーストはフェネクスに任せ、俺達は城内を爆進していた。
ジェムは残り少ないが黒玉仙はギリ持ちそうだな。むしろヴクヴ・カキシュがバテバテで段々矮小体サイズに縮んできてる。経緯が経緯だからもう無理に回復もできないや。
ボルケーノらしい気配は近い。すんごい火と金属。それからヴァーリンの通信によるとヤツらが司るザラついた『機械の属性』と禍々しくも不毛な気配の『争いの属性』も感じる。
他の魔族とはまた異質な魔の気配だ。
「······」
キューブは残り2割。さすがに抜けてこられるようになり、機怪人や機械の獣達と中近距離戦も発生していた。
だが、十分首魁達や俺は力を温存できてる。時間掛けると兵が殺到しそうだが、一気に進行する分には問題ない。
と、ズズッ。後にした方からまた重い爆発音が響いた。フェネクスだな。
爆炎は無効だろうが、バリスタイトゴーストの『大爆発』てのがどの程度か? て問題はある。
上手くやってくれたらいいが······
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バリスタイトゴースト。爆薬の化身。同族、ないし類する物。ないし触れた非生物。ないし『爆滅を許諾した者』ないし『己自身』を炸裂させる魔物。
「暴爆ゥゥーーーッッッ」
無論、爆発その物も自在に操る。
ボボボボッッ!!
デタラメに周囲を炸裂させてゆく。兵や獣達も集まってきたが、全てただの爆薬として消費されてゆく。
(バカバカしいヤツめっ)
思念で悪態を吐きながら、フェネクスは状況を見ていた。
爆発の熱や炎はフェネクスには無効であり、物理的な爆破の衝撃も吹き飛ばし効果がある為に億劫ではあったがほぼ損耗はなかった。
しかし、炸裂する魔力その物は多少なりとも攻撃としてフェネクスにも通っていた。加えて手数も圧倒的。
その存在の性質上、攻撃しかしない魔物であった。
一先ず他の者達をゆかせて障りはなくなったとは考えていた。
単に滅してその残骸を程々に誘爆させる手もあった。この世の摂理に反するジェムを多数隠し持っている気配は察していたが、この種族の始末の悪さは心得ているフェネクス。
(バリスタイトゴーストよ、お前はお前自身を爆ぜさせる魔物。我が上層に上がる前にも4〜5回は散華していたな。ボルケーノの蘇生は雑な代物だ。お前はお前の死をどう理解している?)
「死? 私ハ爆ゼル者デスネ! ユエニ生ノ最大発露ハBOMッ!! 暴爆ナノデスッ!!!」
マシンジェム、ウォージェムを全て使い、肥大し最大の爆滅に備えだすバリスタイトゴースト。後先のある様子ではなかった。
(······そうか。お前はお前の力が面白くそれに惑うばかりなのだな。であるならば)
黒炎鳥の姿が『白銀の羽毛を持つ巨鳥』の姿に切り替わった。
スキル『末世鳥変化』を行使するフェネクス
途端に周囲から全ての『熱』と『生命力』が失われ、凍え、バリスタイトゴーストの全身の導火線の火も消え、身体は萎み、軋み、ヒビ割れだした。
「爆ゥゥッッッ????」
白銀のフェネクスが七色を尾羽根を揺らめかせながら機械の地表に降り立つとその地点から氷結が拡がり、バリスタイトゴーストも氷に覆われた。
(輪廻終わりはただ消え去るのみ。いずこかにたどり着ける者等数少ない。摂理は酷薄なのだ)
「暴、バ······」
氷と共にバリスタイトゴーストは砕け散り滅び去った。
(まずは死の侘びしさを知れ、バリスタイトゴーストよ)
呟き、スキルを解除して黒炎鳥の姿に戻り、さらに大男の姿に変化するフェネクス。
「追えんでもないが、少ない戦力でアレに打ち勝てんようでは先はないな······ヴァーリンの気配もある。猿に仕事をさせるか」
祭祀服の大男の姿から黒炎に宿る瞳の姿に変化し、さらに小さな瞳を宿す黒い灯火に変わり、その上で近くに転がっていた砕け焼け付いて死んだ上に氷漬けになっていた機怪人の1人に宿り身体だけを黒炎で復活させて氷を砕き溶かすフェネクス。
不慣れそうに身を起こすと、
「ばりすたいと様!」
「コノ身ヲ一撃必勝ノ礫トッ」
増援の機怪人兵達が現れた。
「「「???」」」
氷漬けの辺りの有り様に困惑する機怪人兵達。
「ばりすたいと様ハ破レ、負傷シタ敵ハ進入路方面ニ逃レマシタ。自分ハめいんばってりーヲヤラレタノデ即時交換シテキマス」
報告し、駆け付けた他の機怪人兵達に敬礼し、そのままどこかに「エッホ、エッホ」と芝居掛かった掛け声で機怪人の身体に宿ったフェネクスは駆けて退散していった。




