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親父の遺産がダンジョンだった件  作者: 大石次郎


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95話

熱を動力に変えてるからか意外と涼しいが煙いやら油臭い『迷路化した時計塔の中』のような機怪城内に入ると、


「強化して喚び出せ」


「チャハ! かしこまりっ」


クリスタルリトーに従い、エビルカーバンクルが矮小体化と引き換えにこれまたビッグヘッド開発の『最終凍結型エッジキューブ』を80体余りかなり強く魔力を付与して召喚し陣形の前後左右の盾役として配置した。


矮小体化するとそのままクリスタルリトーの肩の後ろ辺りに隠れるエビルカーバンクル。今からはさすがに回復が間に合わない。


「私はトラップ対策に専念するでしゅ」


「おう」


辺りは金属だらけだ、地属性魔法使いタイプの黒玉仙にうってつけの仕事だ。というか中に入ってしまうとクリスタルリトー軍団だけでこの城落とせそう。


ま、それはそれとして、


「手早く慎重に!」


進行する。機怪人や機械の獣なんかがワラワラ出てきたが、鉄壁の凍結キューブが氷の魔力障壁で防ぎ、後ろからの俺達の間接攻撃で撃退。


トラップもバシバシ黒玉仙が遠隔で解除というか暴発させてく。


「相手は特に隠れる気はないみたいだから、このまま気配を追えば完璧にたどり着けるわ! 城自体の動力と間違えないでね?」


「『城に動力』必要か?」


「ボルケーノは『機械と同化する能力』がある。さっさと内部潜入するは最善であった」


城ごとボルケーノになる可能性あったってこと??


「アバドンさん、それ先に言ってほしいんだけど!」


「どの道突入予定。ヴァーリン達も特には言わないなら、変に慌てるよりよいと判断したものである」


「······ッスか」


「完璧に攻略すれば問題ないわ」


綱渡りはいつものことだが、知らぬ間に綱渡ってるパターンもしばしばあるダンジョン界隈だよ。


というか、他の連中も心配だな。今回、待機組も含め結構交戦状況が分散する形になった。


中途の隊分けや早々待機してられないってのも考慮しないとだ。


_____



鋼鉄の屋根を踏み割りそうな程に巨大化したゲルリッヒゴーストは、屋根も外壁も設置砲も自軍兵の被害もお構いなしに全身の砲門からの猛烈な砲火をヴァーリンに放った。


特に巨大化した頭部の主砲からの貫通弾の精密射撃はもはや防御不可であった。


「ダハハ、こりゃヒデェな」


中近距離のこの猛烈な砲撃に晒されるのはたまったものではなかったが、かといって『火砲の化身』であるこの魔物相手に距離を取っても有利になる要素はなかった。


「下等生物! 下等生物ッ! 偽リノ神ノ裁キ等無効ナリ!!」


荒ぶるゲルリッヒゴースト。


「······」


ネガジャバウォックと三滅槍は撤退的に抑え込まれており、自身の眷属兵達を盾に戦う発想はヴァーリンにはなかった。


「合流するって言った手前、こっちも温存したかったんだけどな。まぁっ」


主砲の狙撃で片頬と片耳を裂かれながら、ヴァーリンはガイアジェムを数十個伸縮する長棍に沿わすように展開しその力を吸収させた。


長棍は瞬く間に『巨人の得物』のようさ大きさになり、ヴァーリンはそれを旋回させてゲルリッヒゴーストを一撃殴って押し退け、大きく構えた。踏み締めた鋼鉄の屋根がひしゃげる。


「デカブツ殴るのは得意ではあるぜ? ダハ!」


「ギギィッ、下等生物ゥゥッッ!!!」


ゲルリッヒゴーストは全身から機械の触手のような器官を発生させ、より異様な姿となって激昂した。


_____



数百の飛行種の機怪人とその3倍はいる使役された飛行種の機械の獣達が断続的に砲撃してくるが、素早く雲を操るヤクシャの軍勢に取ってそれはさほど問題ではなかった。


西部の砂漠まで引き寄せるまでにサンドゴーレムも使い切っていたが、それもさしたる問題ではない。


問題は、


「猿ガYOッ! YOッ! 俺トオ前ノ追跡劇! トンダ臆病MONKEY。いかサナイ方ノFUNKY。YO、YO、め~ん!!」


なにやら韻を踏みながら歌いなが、連射砲撃する履帯機構持つ鋼鉄車両の砲身の化身の魔物コッカリルゴーストの攻撃であった。


やみくもに撃っているようでその砲撃は自身の砲撃を陽動に相手の回避行動を操り追い詰め、やがては射線上に自ら飛び込ませる嫌らしさがあった。


「っ!」


ヤクシャ個体は風属性の扇を操って風の刃を放って追い込まれた者への砲撃を撃ち落としたが、コッカリルゴーストの弾は榴弾であり激しく炸裂し狙われた者や周囲の者は無傷ではすまなかった。


「YO、YO、YO······ばらばらニ撃ツノハ止メダ。弱ッテル猿カラ狙エ、数減ラスゾ〜? めーん!」


雑兵達にダメージがある程度行き渡ったとみたコッカリルゴーストは自軍兵達にトドメを命じた。


しかしほぼ同時に、砂漠の地表に巨大に密かに構築されていた隠蔽の魔法陣が一瞬姿を現し、解除された。


解除と共に無数の砂漠の眷属モンスター達が溢れ、大半の飛行種は真下から機怪人兵団と機械の獣達を強襲し、残りの地表のモンスター達は一斉にコッカリルゴーストただ1体に襲い掛かった。


「め〜ん?!」


「コッカリルゴースト! お前のしつこい『ダジャレ悪口歌』のお返しだ。砂漠のもてなし、十分受けてゆけ!!」


ヤクシャ個体は言い捨て、損耗したワーマシラ兵達を引き連れ西のヴァーリンの都へと飛び去っていった。


_____



感覚的には半分ちょいくらいは近付けたな。キューブの消耗は2割程度か? むしろ黒玉仙が消耗が激しく段々小さく矮小化しつつある。


「でしゅー······」


俺は杖で操って黒玉仙にガイアジェムを30個パスし、キューブ群もウォータージェムとアイスジェムで回復させた。


「どうもでしゅ」


「ああ、引き続き頼む」


「······坊、城内にももう1体は幹部個体がいるはずである。注意するのである」


だろうけど、気配はないな?


「ボルケーノって首魁は幹部と共闘しない感じ?」


「この状況ではないであろう。アレはめちゃくちゃであるから」


人物評が『めちゃくちゃ』てどんな人格だよ······


なんて考えていたらっ!


ドドドッッ!!


唐突に周囲の機怪人兵や機械の獣達、設置砲、解除済みのトラップまでが炸裂しだしたっ。


「完璧!!」


ロックローズが慌てて結界を張ったが、キューブがさらに2割は減らされたな。


「暴爆! 暴爆ッ!! デスヨ!!!」


機械の通路の床面が炸裂し、全身に火の点いた導火線を生やした大型の機怪人が出現!


「『バリスタイトゴースト』。拠点内に配置するのはどうなのかな?」


「チッ、殴り辛ぇヤツか」


呆れるヨミロートスと面倒がるクリスタルリトー。


バリスタイトゴースト。爆薬の化身か。


「つーか、ほっといても爆発しそうだな」


「的確な洞察だ。ヤツは『殴ってもほっておいても大爆発する魔物』である」


え? どうしろと??


「鍵の主、眷属どもは連れてゆけ。コレは我が引き受ける」


サイズは調整しているが黒炎の怪鳥の姿に戻りながら、フェネクスが言った。


「暴爆ゥーーーッッッ!!!!」


(うるさい。落ち着きがない)


「······」


ピシャリと思念で言われ、思わず黙るバリスタイトゴースト。


対話は一応成立するのな。

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