92話
古風で東洋趣味な都市国家その物な猿王ヴァーリンの拠点を念入りに補修! 地下や貧民エリアにはあった毒気汚染箇所も浄化! あとは転送陣をエル・ジェリーマンに、農園をゴールドスコップに、水周りの調整をスキュラに任せ、交易調整はヴクヴ・カキシュとコメリナに任すことになった。
残りの俺達は内政をビショップ個体に任せたヴァーリンとその手勢と整備エリアの野良狩り浄化、放棄拠点の取り敢えずの解放を進めていった。
「ゾォアアァッッ!!!」
(散れ)
初手の上空からのネガジャバウォックとフェネクスのブレスと熱線がまず強っ。
加えて俺達だけでなくヴァーリン軍は全員『飛行する雲』を扱い機動性が高い。また補修浄化はともかく普段から西部域の目立つ野良狩りは済ませていたのと、行軍用にそこそこ野営地が維持されていたから3日で西部域全体の大まかな整備が済んだ。
「3層や4層よりスムーズだった、ヴァーリン」
「お〜ギリギリだったが、領地管理の体裁は保ててたからな」
一旦ヴァーリン拠点に戻る途中『互い持てば通話できる魔力杭』を1つ渡して話していた。
結構色々できるようになってんだ。
「俺は一旦地上に戻って魔力を落ち着かせてくる。各所の細かい改良はエル・ジェリーマン達とクリスタルリトー達辺りに任しとく」
「私、仕事多くないですかぁ?」
「俺様もかよ」
「転送陣はエル・ジェリーマン達以外は作業負担大きいし、城壁とか魔除けの街道なんかはクリスタルリトー達なら広域を一発でできっからさ。頼むよ。ジェムたっぷり使っていいから」
と言いつつエル・ジェリーマンは確かに急がしいな。次の攻略からは一旦外れてもらうかな? 等と考えていると、
「地上か。スキュラよ、地上に出てよいのである」
アバドンさんが不意に言い出した。
「ええ?」
「ヘルスパルトイとツルベ火クィーンも矮小体なら地上に出てよいのである」
「ヒホっ?」
「ヒィィィッッッ??」
おお? 出所ラッシュが来た感じだな。
「俺も出してくれよ? 砂漠は飽き飽きだぜ? まず『王の真似事』とか別にやりたくねーんだよ」
ぶっちゃけ過ぎだろヴァーリン。
「お前はのらくらしているからまだ迷宮の『裁きの結界』を、越えられないのである」
「盗みに入ったの大昔だぜ? 何回も代替わりしてるしよ。つーかもう覚えてねーし。フェネクスからも言ってやってくれ」
(知らん)
「酷ぇ」
ふふ、ヴァーリン達は掛かりそうだが、3人も一気に出所! これまた景気良し、だ。
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というワケで人間体スキュラと最初の時のような矮小体姿のヘルスパルトイとツルベ火クィーンを連れ、地上に出てきた。
「ヒホっ?! 日光っっ!!!」
「ヒィィィッッッ」
昼間だから普通に日差しにダメージを受ける2人だったが、アンデッド首魁で『そこそこ清い状態』だからすぐ滅びるって感じでもなく、
「ヒホーっ、消えちゃいますぞ〜っっ?」
「思い出をありが······ヒィ〜っっ」
といった調子で小屋の庇の日陰と日向を二人で行ったり来たりしてわちゃわちゃと久し振りの『太陽』を楽しんでいる様子だった。
「いいのか? アレ。結構ダメージ入ってるぜ?」
「ほっておけ。2体とも『守護聖霊』の類いに近付いておる。よい訓練である」
「マジか」
なんか出世しそうなんだな。
「······あ、井戸」
困惑していたスキュラはアバドンハウスの古びた井戸を注目した。
「特に魔法は使っていない。地上の『ただの水』に触れてみるといい」
「はい」
「私も見ましょう」
アストロロジーも付き合い、スキュラはおっかなびっくりに井戸に近付くと覗き込んだ。
「水が入っていますね」
「汲んでみましょう」
アストロロジーとスキュラは水を汲み上げた。ロックローズが念力で柄杓を操って渡してやると、スキュラはその水を飲んだ。
「ふう、普通の、美味しい水ですね」
「でしょう?」
2人は笑い合っていた。
「······スキュラがそのまま出られるのに私とロックローズ様はピクシー扱いなのは納得できないところだな」
「あんた達は態度とポンコツさがあるからね」
「それな」
「どういう意味だっ?」
「完璧に納得できない評だわ!」
俺とゴールドスコップがピクシーのロックローズとコメリナに詰められたりしたが、増えた地上組はこのあとモンスターシークレットガーデンにも向かい、クピド達にやや多過ぎの茶菓子で歓待されたりした。
俺の代で全員は無理だろうが、なるべく外に出してやりたいとこだな。
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休息を終え、1層のビッグヘッドとオークジェネラルと少し話し、3層でリュブリャナとザトウマージとも話してから5層のヴァーリン拠点に戻った。
ここには椅子もテーブルもいいのがあったが、敢えてスライム椅子に全員座った。
「ダハっ、いいなコレ。エル・ジェリーマン、あんた毎度俺よりのらくらしてたのに、今回ヤケに働くな?」
「結果的にですね〜」
便利遣いしてるのは申し訳ないところだ。
「んじゃ、中部探索、攻略の協議を始めよう。ヴァーリン、現状について頼む」
「おう。中部は6層『赫灼倉』の環境を大まかに再現した焼け付く領域だ。今、あそこを牛耳ってるのは機械の魔人『ボルケーノ』と竈の魔女『アペフチ』だ。ボルケーノの野郎は手前側、アペフチ婆さんは奥に拠点を構えてる」
ボルケーノはより古い時代に滅びた魔王『機神』の眷属で、魔王軍時代は魔王の支配域の国境警備を担っていた。
勇者に味方した巨人族の軍勢に甚大を被害を与え、巨人の王に討ち取れたそうだ。
現在言い伝えは勇者に味方した巨人族以外にはあまり伝わっていない、マイナーな魔王軍幹部でもあった。
対してアペフチは魔王の支配域で勇者パーティと交戦しているから結構有名。『悪辣だった説』と『理知的だった説』が混在して伝わっている。
「婆さんの方は話せるが、ガラクタの方はダメだな。好戦的過ぎる。中部に引き篭もってるのも数年前に追い払ってやったのと、アペフチと対立してるからだ。あとはあの環境でファイアジェムを獲得して動力にもしてるな」
「う〜ん」
バトル不可避パターンか。
「当代主よ、我の眷属達にボルケーノの支配域の偵察をさせたが、旧野営地跡や2次拠点跡は全てヤツの眷属に掌握され、中小の砦と化していた。道々にそれらを解放して状況を整える定石はここでは消耗戦にしかならん。最初に頭を叩くより他ない」
「······機械だから毒気や多少の悪環境は関係ないか。支配域がガチで支配されてるのは初めてだな」
たぶんクリスタルリトーにもその気があれば取れた防衛体制だろう。
「また事前交渉が行方不明だが、奇襲前提で策を練ろう。相手の戦力が万全っぽいなら陽動もほしいな。あと、交渉でそうな方の首魁と先に接触できないかも確認したい」
俺達は協議を進めた。まず環境がこれまでで1番終わってる。油断すると被害がガンガン増えちまいそうだ。慎重に行こう。




