89話
樹海組の4層旧拠点の浄化補修が済むと、ヨミロートスは『輝く苗』1つと多数のプラントジェム、ウォータージェム、ガイアジェムを取り出した。
「それは?」
「3層拠点の僕の本体の核を移した物だよ。現状の、あるべき所に還そう······」
念力で操られた輝く苗が多数のジェムと共にかなり離れた所に植えられると、閃光!! からの、
ドォオオッッッ。
爆音と共に、大樹が生い茂り津波のように根が繁茂した。
「派手だなっ」
「ふふふ、でもこれで4層はより安定する。より下層にも良い影響があるよ。3層の維持補助はもう必要ないしね」
「それも大局的判断ってこと?」
まだ引っ掛かる所がある様子のロックローズ。
「そうだよ、僕はいつも君達との共生を考えていたからね?」
「······」
「いい身分だなぁ? おーん??」
これはロックローズとクリスタルリトーだけでなく、リュブリャナやザトウマージも微妙なところだろう。
「なんにせよ! 丸く収まりそうだっ。配置はどうするつもりだ?」
間に入って話題を変えてみたが、敢えて言ってるよな?
「4層の詳細な拠点復興はダークエント・マガリコダマに任すよ。まだ矮小化が解けない幹部の回復もこれからは4層で行う。3層の生産作業と住人の移転はレウケートレントに任す。僕らの3層野営地の閉鎖譲渡もレウケートレントに任せた。ただ樹の砦だけは残しておこうかな?」
「1番いらないヤツだろうがっ?!」
「邪魔でしゅ!」
「目障りチャハー!」
「レウケートレント、マガリコダマ、大変だろうけど、頼んだね」
「はい」
「お任せを」
まぁ樹海組は一段落、かな?
_____
······作業着のリュブリャナが魔力と剛力を込めて鎚を振るうと火花が散るが、散った火花はすぐに濃密な魔力を秘めた水と化して鍛冶場を逆巻く!
強い魔力の水は鍛冶場に施された魔法式に従い、勢いが落ち着くと『ビッグヘッド製水及び氷のジェム生成器』に吸い込まれていった。
ずっと見てられるなこれ。
「凄んごいな、リュブリャナっ」
「ああ、歴代の俺の中には鍛冶に凝ったヤツが何人かいたようだ。詳しくは覚えちゃいないが、身体は覚えてるもんだなっ」
力強いだけでなく、作業が早い。装飾にはほぼ興味ないようだが、鎚を使った水属性武器鍛造の刃や鈍器部の最終工程をガンガン仕上げてゆく。
見学している俺とロックローズ、ゴールドスコップ、ザトウマージ、人型スキュラは感心しきりだ。
「5層は5層でまた属性相性悪い。こっから俺はさらに強い水か氷の装備作りに専念するぜ」
「そっかぁ······」
残念だが属性相性はどうしようもないな。
「2層と3層拠点なんかはどうしてくつもりだ?」
今いるのは3層の本来のリザードマン拠点。冷水浴場もできて非戦闘員の移住も増え、賑わっていた。
「2層は、拠点以外は段階踏んで畳んでく。交渉は『レッサープリースト個体』達でいいだろ?」
ハイプリースト個体が苦労して短期間で育てた下位の僧侶系個体群を新たに導入していた。
「3層の仕切りはプリーストに任す。俺は鍛冶スキルを高めさせたヤツらと装備生産に専念だ! 面倒な内政はパスっ! シュゥハッハッハッッ!!」
らしいっちゃらしいな、と。
「ゴールドスコップは?」
「地上に出られそうな個体が増えて来たんだよ。あたしはあんたの代の内は残るつもりだけど、生産管理には協力しながら1層は拠点を含めて徐々に畳んで、2層も野営地なんかは他に譲ってくつもりだよ。攻略は装備が整うなら5層の序盤くらいは付き合うよ?」
「······うーん、『出所してく』てパターンもあるワケだよな。けど、おめでとう!」
「ありがとよ。当代でうっかり冠に戻らないよう気を付けるよ」
ゴールドスコップは簡単に蘇生できるタイプじゃない。オークキングなんかと同じだ。
ここは慎重に対応しないとな。
「我らも2層の拠点以外は徐々に畳み、3層への移住を急ごう。リュブリャナが強い武具造りならば我らは装飾品や服系装備、ジェム等の持道具に専念する。それから改めて装備を整え、スキュラを派遣できるようにしよう。攻撃ばかりのベルゼジュニアだけではいかんともし難いであろう」
「それほんと助かる。スキュラも頼むよ」
「はい。人型にも慣れてきましたし、頑張ります」
4層もフェネクスの支配域に残作業ありだしな。自在な水使いは是非ほしいところだった。
「みんな柔軟に対応変えてくんだね。感心するわ」
「ロックローズ! ダークエルフの旧4層拠点の復活まだだかんな?」
そう、手付かずなんだよ。
「うっ、でも半分フェネクスの支配域に被ってるし······3層作業も終わってないからまだよくない?」
「だーめーだ! 野営地や2次的な拠点なら外周でもいけるだろ? そもそも3層の拠点や野営地は借り物だぞ?」
「う〜」
ぶちゃむくれても勘弁はしない。1種族だけ、それも別の層に『侵攻した』種族の対応が遅れるとトラブルになりかねない。
種族や幹部眷属には話が通ってもその他の無数の眷属達は全然納得してなかったりもすっから。
危ないんだぜ? 完璧魔女さん。
「それから主殿」
「ん?」
ザトウマージ関連で他になんかあったっけな? 増えてるアクアリーフウォーカーとか、活動範囲が広いモンクペンギン達とか?
「これは今に限ったことではないが、ネガジャバウォックは『放っておくとまったく眷属も支配域も統治できない』首魁だ。面倒になる前に対処を」
「······了解」
確かに大丈夫かな? とは思ってたが、大丈ばないか。
確か本来は樹海組とダークエルフ達は総出で世話してた感じだったよな?
今のロックローズにこれ以上あれこれやらせても容量越えそうだし、ここはヨミロートスに相談が固い。
ただ自治も最低限やった方がいいはず。今は同じ層にフェネクスもいるし、フェネクス軍幹部は総じて当たり強いし、あんまりヌルいとよくない。
取り敢えず、三滅槍に仕事させよう。俺が見た感じ『ヤツらはわりと普通』だっ。
普通なら、働けるはずだ!!
_____
と、思ったんだが、
「『剛力スキル』『重量化スキル』『組打ち強化スキル』発動!! 我らが王!『相撲レスリング』ならばっ、今度こそ負けないゲコーーっっ!!!」
ばちこ〜んっ、と小型化してるネガジャバウォックに組み付いてゆくコンゴウガマ。
前来た時からほぼ全く変わっていないネガジャバウォック拠点に唐突に造られていた『土俵ステージ』の上で相撲レスリングに興じている。
これで『734番目』らしい······
「氷の上は〜、すぅーいすいっ、ブ〜ンブンっ」
いつかの大冷水浴場を凍らせてスケートに興じているベルゼジュニア。
『5層進出に備え各自準備、となってからずっとやってるらしい』
「思ったより物流経済が戻っていたのはまずはよし! 5層でしか採取できない『ヤバい茸』を上の層のアホなオークやゴブリン達に売りまくれば······コーンコココっっ」
怪しげな茸を集めまくってるヤコゼン。
「······全然ダメじゃんっっっ」
と、俺が衝撃を受けてると、
「ゾォアアァッッ!!!!」
負けそうになったネガジャバウォックが覚醒し、抱え上げて跳んで錐揉み回転で叩き落とす『天地投げ』をコンゴウガマに掛け、氷付いた冷水浴場に叩き落として昏倒させ、砕かれた冷水浴場の氷の共にベルゼジュニアをちゃんと管理しないから城壁内にまで生えてきた棘植物の茂みにブチ込み、
「オレ、腹減った!」
コンゴウガマが溜め込んだ怪しい茸を全て吸い込んでムシャムシャ食べ尽くした。
「コーン??!!!」
「ん! ピリっとしてるぞ?」
す、すげぇ圧倒的なツッコミ力。もはやツッコもうと思考すらしてない······
「彼は彼らの『揺るぎなき王』だからね? はい、ネガジャバウォック。取り敢えず、拠点内に棘植物が生えて来ないようにちゃんと処理しよっか? その後で御飯ね?」
「御飯!! オレ、頑張るっっ」
ヨミロートスは手慣れた様子でネガジャバウォックに処理作業へと誘導させた。
これが、これが4層首魁達の『力の循環』かっ。
迷宮は深まるばかりだぜ······




