83話
解放した途中の野営地で休息しつつ、段々激しくなるザリチュ軍の襲撃を退け、俺達はルートを浄化しながら予定していた最後の野営地を目前としていた。
その野営地前を最大規模のザリチュ軍が固めている!
予見ではこの軍勢は3手に分かれてここに着く前に立て続けに奇襲してくるはずだったが、俺達が予見で奇襲を潰し続けた結果、戦力を合わせた方が効果的と相手が判断する未来に変わったようだ。
どっちがキツかったかは微妙はところだが、やることは変わらないっ!
「樹海組は索敵専念! 遠距離攻撃後、問題なければ絵札兵を前面に出し、キューブは温存するっ。生け捕りは余裕があればだ」
エッジキューブは飛べるからザリチュ戦に連れてけるかんな。
予見とこれまでの撃破数の整合性からすると、ザリチュの眷属はこれでほぼ打ち止めのはず。
こっちのキューブはだいぶ減らされたし、サボテンも4割リタイアして治癒特性を持たせた琥珀のオーブ送りになったし、なにより水属性と氷属性の物資をガッツリ削らされた。
道中の戦いは『決戦時の総戦力の減退』狙いと、状況の択を減らす為の物だな。
······激しい遠距離攻撃の撃ち合いが始まった。
「ピロシ君。伏兵は見当たらないよ!」
「よっしっ、前面集中! クリスタルリトーとダーファン、テラツツキは話せそうなヤツ以外は処してよしっ!!」
「面倒だから砂海鯨アンコウは俺様が殺る!」
「えー? 話せるって、どれだよ? 似たようなもんだろ??」
「だよねーっ!」
なんだかんだで3体は突貫して、相手の防衛線を崩してくれた。
我らがピロシ軍は今回は絵札兵を最前列に、一気に間合いを詰めだしてった。
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最後のザリチュ眷属軍撃破後、解放した野営地跡にクリスタルリトーがウォータージェムとアイスジェムなんかを利かせて魔除けの城壁を造ったが、
「ああ、こりゃダメだ1日保つかどうかだな。砂に変えられちまう」
やっぱザリチュの祠が近過ぎる。
「野営地の周囲も野良モンスターも棘植物も一切存在しない有り様だったかんなぁ」
「とはいいつつ、撤退に備え、転送陣は作らなくてはですねぇ」
あ、それに関して、ちょっと修整だ。
「エル・ジェリーマン。ザリチュ戦でゴールド種のハイスラヒーラーの力を借りるからここの転送陣設置は1人でやって、ここに残ってくれないか? 誰か首魁がいた方がいいと思うんだ」
エル・ジェリーマンは応用利くしな。
「そうですかぁ? しかしヒーラー個体達への『首魁呼応強化』はほしいところですね〜。では、主殿には『私の心臓』を預けておきましょう」
「え?」
いきなり自分の胸に片手を突っ込んで『脈打つゼリー状の心臓』を取り出して渡してくるエル・ジェリーマン。
「ええ〜っ?!」
わりとひんやりしているっっ。
「あんた、心臓なんてあったの?」
困惑するロックローズ。
「核ですよ。わかりやすいように『人の心臓風』に仕上げてみました。むふっ」
「······了解した。こりゃ、間違いなさそうだ」
俺は慎重に収納の腕輪にエル・ジェリーマンの心臓をしまった。これで首魁本体がいなくても強化バフはヒーラー個体に乗るはずだ。
「酷い環境だが、居残り組で転送陣は守る! 任せておけ」
「おう」
あとはコメリナ達で問題ないな。さらに2割リタイアしたが、黒帯サボテンも結構残ったし、絵札兵も約40体程度は残り待機組全員の護衛くらいはできる。
「のんびりはしてられん。とっとと突入用に物資を集めてアクセサリー等を強化するのである。大雑把で構わん、どの道一戦使い切りである」
俺達は最後の作業と休憩を済ませることにした。
ザリチュか······あんま再戦したくないなぁ、本気で魔物過ぎんだよ!
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嫌でもどうにもならないので、本来のサイズに戻ったネガジャバウォックに乗って上空を進む。
今回は80体余りのエッジキューブ達の飛行速度が遅いからそれに合わせて高速飛行じゃない。
ゴールド種ハイスラヒーラー個体達30体余りも飛行魔法を使い、ついてこれてる。
他の首魁やアバドンさんは自分で飛ぶか強化した飛行絨毯に乗ってる。
ザリチュは『砂』に干渉するらしく、地表への接触は基本避けることになった。
ネガジャバウォックの背に乗っているのは俺、アバドンさん、ロックローズ、ヘルスパルトイ、ツルベ火クィーン、ベルゼジュニアだけだ。
「緊張するブン」
蠅人間だからちょっと表情がわかり難いベルゼジュニア。彼が、問題の『初手』担当だ。今回参戦してるメンバーは唯一の『氷属性』持ち。
「最初にブッパなすだけさ。ドカンとやりゃいい。演芸でいったら『空気を変える係』だ。極端な話、ウケなくてもお客を『笑う態勢』に変えてくれりゃいい。インパクトは残るし、美味しいポジションさ」
「例えがよくわからないブン」
「······それな。とにかくタイミング出すから」
出せんのか? 俺。て問題はそこそこあったりする。
「ピロシ、今度の今度こそ矢文も生け捕りも無理だからねっ」
「あいよ」
「ピロシ殿っ、今回は時空耐性装備で固めておりますぞ? 抜かりなくヒホっと護衛します!」
「私も、ヒィィィッッッ」
「頼んだ」
いきなり近接で詰められるリスクは避けられそうだ。
「気取られはするが、今更であるな。広域能力者に後手は致死的、先んじて渇き対策をしておくのである! 光よっ」
アバドンさんは全員に渇き耐性の光の輪の祝福を与えた。
よーし、結界の気配は覚えてる。もう、そこだなっ。
「開けるぞ!」
俺はウォータージェムを利かせた完封陣でザリチュを結界を再び破った。
「っ?!」
祠があった場所で、本来のネガジャバウォックの数倍の大きさの1つ目の『白骨の大蛇龍』が鎌首をもたげていた。
既に大口を開け、『焼け付く砂のブレス』を吐く構えを取っている!! 凄まじい魔力っっっ。結界で隠していたっ!
初手って、そっち切っ掛けのことだったのかよ!!!
「ベルゼジュニア!!」
「ブンっ?!『アイスストーム』っ!!!!」
ベルゼジュニアは慌てて飛び上がり、数十個のアイスジェムとウォータージェムを対価にフルパワーの吹雪魔法を放った。相手も、
ズゥウウッッッ!!!!
デタラメな規模の焼け付く砂のブレスを放ってきた。
ベルゼジュニアの吹雪で6割は削れたっ。さらに全てのエッジキューブを犠牲に3割削り、残り1割の焼け付く砂の波動は、
「完璧っっ!!!」
ロックローズがアイスジェムとウォータージェムを利かせた結界で打ち消してくれた。
ベルゼジュニアは矮小化してぬいぐるみのようになり、取り敢えず俺の肩の辺りに張り付いて退避。
(そういえば、勇者と戦えなくてつまらなかったわ。なんのつもりか知らないけど怒るばかりの鳥はもうたくさん。ねぇ、君。頭と心臓を切り取る前に、遊んでちょうだいね? うふふふふふふふ)
ザリチュの思念が誰構わず伝わってくる感じっ。
「俺、勇者じゃないが、散開! 正面撃ち合いだと普通に撃ち負けるっっ」
機動性はこっちが上。俺達は散って展開し、この退屈らしい渇きの巨龍と再対峙した。
準備はした。こっからいいネタ見せられるかは、出たとこ勝負だ!!




