80話
ネガジャバウォック拠点まで戻ってこれた。今は水の抜かれた冷水浴場と生きた樹木の館以外はほぼなんもないとこだけど、上空から天国に見えたぜ。
「酷い目に遭ったが! ザリチュの拠点までの地表の様子を一通りは見れたよ······あ、アリッサ問題なかった?」
「ウォータージェムを利かせて回復した方がいいのである」
「コメリナ、沐浴の支度もしてちょうだい」
「お前ら水に浸かるの好き過ぎだろ?」
「そうでもない、ヒィィィッッッ」
「ピョーーっっ!!」
「······」
クリスタルリトーがうんざりしつつ、取り敢えず俺達は回復に専念することになった。アリッサはケムシーノとゴールドスコップに守られて変わらずスヤスヤしてて問題なし。
_____
回復完了!
全員樹木の館のハイスラ椅子に座って、あるいは寝かされて、協議開始。
まず、ダーファン&テラツツキが、なぜかドヤ顔で、
「だから言ったろ?」
「言ってなかったけどっっ」
「「ギャハハハ!!」」
「「「······」」」
仮だが味方にしてからは概ね大人しくしてたが、中身は変わってないな、と。
特にクリスタルリトーとロックローズから険悪なオーラが出まくったが、ここでアストロロジーと人間体スキュラが咳払いをした。
「地表の詳細図がわかったので、外的要因抜きでの安全なルート取りくらいは相手の拠点まで予見を出せそうです。私がどこまで接近できるかは行ってみないことにはわかりませんが······」
「解放した野営地の渇き対策は結界の仕様を工夫しました。アクセサリーも改良できました! ね? ザトウマージ様」
「できることはできた。キューブのさらなる改良もビッグヘッドが上で良い試作型を造ってみせてくれた。が、水と氷のジェム等はほぼこれでしまいだ。再生産には時間が10日は掛かるな」
「10日か······」
完全に『関心を持たれた状態』にはなってる気がする。10日もあったら予測不能だな。しかもザリチュの勢力は『ザリチュ単体』で完結してる。
眷属の召喚もお手の物だろうし、広域への渇きの呪いが強力過ぎる! ちょっと接近するだけで制圧力を発揮っっ。反則だ。
「まず、フェネクスがどのくらいの猶予と見ているか不透明だしね。その辺り、どうなのかな?」
ヨミロートスがフェネクス軍幹部トリオに話を振った。
「お?」
「それなー」
「······ヴクヴ・カキシュはどうだい?」
ヨミロートスはスッとヴクヴ・カキシュだけに振り直した。
「期間より『手際』を見てるピョ。フェネクス様は厳格ピョ!」
「手際、だってさ。ピロシ君」
「う〜ん」
最悪さらにもう1回仕切り直しても、状況の進展が明白ならギリいけそうな感じもあるな。
幸い、予見の見通しと解放拠点の渇き対策、アクセサリー、キューブの性能は改善できる。
「大将」
思案していたらリュブリャナが口を開いた。
「俺は居残りになるから、ザトウマージ達とアリッサのお守りをする。手下もいくらか4層に下ろす。代わりにケムシーノは代わりに連れて行ってやってくれ。砂漠でも立ち回れるはずだ」
「「ケムんっ!」」
「なるほど······わかった。じゃあケム達はゴールドスコップと殿を頼む。あとは、絵札兵達は道中の時点で全員大盾持ちにしよう。キューブを増産して、その内側の初手の迎撃は黒帯サボテン達に任せる。『針の射撃』もできるだろ?」
「「サボっ!」」
サボテン達は最初の進行ではほぼ出番なかったから力が有り余ってる感じだ。
よっし、戦力構成や方針はだいぶ固まってきたかな?
「思うんだけど。なるべく近い所まで野営地を解放して、どの道、ザリチュのあの渇きの特性からすると少人数で対策固めてまたジャバウォックに乗って上空から行くのが一番だと思うわ。今回は特に『時間干渉』対策ができてなかったけど」
「俺様以外がな!」
「となると、ま〜た、ひたすら転送陣工事係ですか。効率悪いので、ヒーラー達は『時空属性』の『ゴールドハイスライム』ベースにエレメントチェンジしておきましょう。触媒のタイムジェムがあまり拾えないのですよねぇ」
ポロっと言ったが、ネガジャバウォックやダーファン達なんかは別として、大半の協議参加者がハッとして、彼? の方を凝視し、
「「「それだっ!!」」」
と声を揃えると、
「はい?」
戸惑うエル・ジェリーマンだった。
_____
こっから1層から4層外周であんま落ちてないタイムジェム探しが一斉に始まった!
1層ではゴールドスコップの拠点とヘルスパルトイの拠点、2層は魔力の強い地中全般と水棲種の水場の底、3層は首魁拠点3所と水底全般、4層はネガジャバウォック拠点と魔力吸収植物群生地で稀に拾えた。
どの層の魔王城の瓦礫の下でも拾えないでもない。
4層や3層への上がり口の警備は絵札兵とキューブに任せ、装備の拠点用素材加工の手が開いてる者は総出でタイムジェム採掘に勤しむことになった。
オークジェネラル達も主に2層に総動員だ。
手際、でいったらこれがダメならお手上げさ。割り切って採掘しまくった。ハイスラと転送陣だけでなく、ザリチュ戦でも必須! まず、交渉すらできないかんな。
俺も勿論参加。ただし、迷宮の『外』だ。
「······! そこか。ほっ、と」
杖で探知して念力で釣り上げる感じ。地上の、迷宮への入り口の洞窟だ。今は閉じてる扉の前の辺りなんかでやってる。ここ落ちてんだよ。
「ハパーン」
「クェっ」
助手にリーフウォーカー達とモンクペンギン達を数体連れてきている。
「その辺だ」
ざっと探知して知らせる。他に地上だと、アバドンさん家の各所と、モンスターシークレットガーデンでも拾えた。
アバドン家はアバドンさん。ガーデンはクピド達とケムシーノ達が担当。今日はアストロロジーとゴールドスコップはそれぞれ地下で自分の種族と動いてる。
アリッサはガーデンの樹の塔でシルバーワーグがお守り中。
「······」
ふと、迷宮の扉を見上げる。
タイムジェムなんて触ってたからか感傷的、というか懐古的な気分になっちまった。
最初はワケわかんなくて、アバドンさんに斧ブン投げられたり、頭身高かったアリッサがいきなり死にかけたり、この扉を開けて菓子パン持って迷宮に入っちまったりさ。
「改めて、妙なことになっちまったもんだな。へへっ」
「悪くもないだろ?」
「?!」
背後で聞き覚えがある? 青年の声がして振り返ると、一瞬俺のよりずっと立派な、シーカーローブを着た青年が微笑んでいたような気がしたが、誰もいなかった。
掌でタイムジェムが淡く光り鍵の杖と呼応していた。
光はすぐに収まった。
「だな」
俺なりにやってみるよ。それが許される今は僥倖。
たま〜にコロっと落ちてる、悠久の時と空間の秘石探しを再開した。




