76話
ムチャ振りされた後、無事にフェネクスの神殿から出られた俺達。
拠点内の塔からこちらを窺う眷属達に無言の圧を掛けられつつ、城壁外にも出た。
「殿はヒホっと努めておりますぞ?」
「ヒィィィッッッ」
「『岩盤を避けた先の穴にも岩盤』ってねぇ」
ゴールドスコップ達はしっかり守ってくれてるが、正直後ろから熱線撃たれたら目も当てられない。
「話はついたし、なるはやで砂丘越えんぞ?」
「ヌルいぞ、ピロシ! あんな鳥公とっとと締めちまえばいいんだよっ、偉ぶりやがって〜!」
「あとのことも考えるとさ」
「ケッ!」
殺る気満々だったから消化不良気味のクリスタルリトーだった。
ネガジャバウォックの方はもう『とっとと死んだ眷属幹部を復活させる』方に切り替えたらしく、歩きながらビッグヘッド特製のサイズが変幻する収納の腕輪からストックの『炙りニクダケ』なんかを次々取り出してもりもり食べて、周囲のタンクシメジ達をドン引きさせていた。まぁな······
とにかくやるだけやって、これが最善手だったとは思う。別に『殺し屋軍団』ってワケでもないし。
問題があるとすればザリチュて首魁と協議の余地がほぼなくなっちまったことだな。
うーん、あっちを立てればこっちは立たず、だ。
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ザリチュ側が察して早々に手を打ってくる可能性もあるので手近な野営地まで戻った俺達は、転送陣を使って砂漠エリア自体から素早く撤退。
4層では一番マシなネガジャバウォックの拠点まで戻った。
「人手が足りないかな? クリスタルリトーとネガジャバウォックだけだと雑だから」
「あ?」
「ゾォア?」
「矮小化してしまった者達は後回しね。エル・ジェリーマンとツルベ火クィーン、手伝ってよ」
蘇生担当、ヨミロートスとロックローズだけというワケにもゆかないか。
「蘇生、ヒィィィッッッ」
「ヒーラー個体達はもうヘバっておりますが、私だけでもやりましょ〜。ムフフ」
「ツルベ火クィーンはアンデッドで危ないから、魔力供給と錬成補助だけだよ」
「ピロシも手伝ってみる?」
俺? 座って、頭や肩にケムシーノ達に乗られながら寝っぱなしで砂まみれだったぬいぐるみアリッサにブラシを掛けていた俺は虚を突かれた。
「蘇生って、どーすんだ??」
「設備補修の応用である。治癒術の前に蘇生術を試すのは一段飛びであるが、補助だけなら問題ないのである。ヨミロートスの式は癖が強い、ロックローズに合わせるといい」
コメリナやゴールドスコップと焚き出しの準備をしながら言ってくるアバドンさん。
リュブリャナは気配がないと思ったら氷嚢を頭に乗せてゴロ寝中。砂漠の環境、堪えたんだろな。
「やってはみるけど······」
「完璧に合わすのよ?」
見様見真似で、完璧かどうかは知らないが、黒玉仙とエビルカーバンクルは3層から持ち込んだクリスタルリトー拠点の結晶塊の欠片を利かせて。
三滅槍はネガジャバウォックの尻尾を利かせて、他の素材と合わせ蘇生の陣を発動させる!
今回は血や記憶のストックもあるっ。
杖を強く発動!!
「っ!」
アバドンさん達がたまに言う囚人の文字列が見えた。ここに記され囚われてるんだな。
「まだ刑期の途中だぜ? 無冠でもまた現れろっ、黒玉仙! エビルカーバンクル! コンゴウガマ! ヤコゼン! ベルゼジュニア!」
陣は激しく光を放ち、5体の上級眷属達は復活した。
「おぉ? 復活! フェネクス戦は済んだでしゅか?」
「チャハっ、なんだか最初から調子がいいな??」
「記憶もばっちりゲコ」
「血を預けた時より調子がいいコーン?」
「ブンブ〜ン??」
魔力の強さもだがやっぱこの迷宮に属しているからか? 鍵の杖を介すると蘇生直後でも調子よさげだった。よっし。
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この状況で長居は無用! 俺達はネガジャバウォック拠点には思い切って札兵だけ残し、3層のダークエルフ拠点に直行した。
わりと上手くいったはずなんだが、ずっと撤退戦してるみたいになってんな······
「完璧に帰還よっ!」
「やはり落ち着きますね。砂漠や棘植物には辟易ですよ」
ロックローズとコメリナはすっかり安堵した気配だ。
「ロックローズ様っ!!」
「コメリナ様!」
2人とも住人に慕われてるしな。俺は未だに『あ、アイツ来た』『杖の』『天使の子分』くらいの感じだが······
「お帰りなさい。予見は役立ちましたか?」
「無事でなにより。上層よりオークジェネラル達から必要物資は運び入れさせておる。ビッグヘッドの生成物も慣れた手際。ヤツは歴代でも小器用に育っておるようだ」
アストロロジーが護衛の近接型のハイスラ達と、合流していたザトウマージは3層に降りてる水棲種の中でも目立つ個体達と出迎えてくれた。
「予見は助かった! 物資も助かる。もうスカスカなんだよ、キューブも足りないし」
「途中拾ったもんも加工したいとこだ、火属性が多過ぎてすぐには使えそうにないがなっ。シュゥッ」
それな。
「色々あるがまずは休もう。相手もここまで上がるのはしんどいだろ?」
「ザリチュは凶悪な首魁。されど、腰は重く砂漠以外の環境に早々現れず、まして3層の『際限もない水』はヤツには致死的。ここまでは手は出せん。魔王軍時代も我ら水棲軍のことを毛嫌いして遠ざけておったわ」
ん〜、互いに弱点なんだろうけど、あっちに水棲軍自体を持ってくのは無理でもある。
「ザリチュか。一方的に討伐する感じになるのもな。話せる状態だとしたらクリスタルリトーと同じくらいのやり取りは最低でもしたいんだが?」
「言い訳できたらぶっ殺してよし、みたいなイカれた思考だな、オイ」
言ってる途中でこれは突っ掛かってくるな、とは思ったクリスタルリトー。
「······いや、別に」
なにはともわれ休息だ! 捕らえたフェネクス幹部の3人選抜は一旦置くとしても、ちょい整理がついてないから俺も1泊はダークエルフ郷に泊まってくかな?




