75話
進行を続けることになった! が、そのままってワケにもいかない。
残存の氷属性のエッジキューブは攻撃能力を失くして、小さな氷属性結界を張る能力に特化してもらった。
ホワイトスライムは数体で合体させ『ラージホワイトスライム』に進化。数が減る分、黒玉仙達前衛幹部3体の護衛に専念させる。
札兵は全個体『大盾兵』に差し替え、前衛最後列で構えさせることにした。
超防御的な編成! これはいよいよ深部で、もう幹部がおらず、フェネクスからの直接攻撃がある間合いに入るからだ。
まぁ神殿の外でも普通に狙撃してきたけどっ、あれはちょいちょい砂丘に隠れても半日同じとこに居続けた結果だ。こっからは『通常攻撃』がくる!
「ロックローズ、いけるか?」
「任せて。馬糞香水の借りは完璧に返すわっ」
光属性の『ライトジェム』を両手でジャラジャラ言わせながら苦味走った顔をしてみせるロックローズ。
馬糞香水に関しては首謀者も実行犯もコメリナだがな······
「進行再開だ!」
俺達は再出発した。
_____
だったんだが、
「あっちっっ」
深部まで来ると、完全に白夜のオーブの効果が無効化! 通路は灼熱化した。
「これではレイブン兵も投入できんが、下手に雑兵を投入するより環境を灼熱化する方が効果的と見られたようであるな」
こりゃ参ったな。高熱対策してるから進めないではないが、レイブン抜きでも不利過ぎるっ。
「ここで脱落となりますが、私とマガリコダマで道を造りましょう」
「トラップ対策も済ましてやるっ」
レウケートレントとマガリコダマが進み出てきた。大量のアイスジェム、ウォータージェム、ガイアジェム、プラントジェムを念力で浮遊させてもいた。
他に、ないか。
「わかった。頼む」
「では」
「ヨミロートス様! お先に下がらせて頂きますっ」
「うん、お疲れ」
2体は4種のジェムを対価に『凍結植物侵食』を放った。
ビシィィッッ!! 凍て付く植物が通路に走り、遥か先まで高熱を封じ、トラップを解除してゆくっ!
レウケートレントとマガリコダマは力を使い果たし、小さく頭身の下がった矮小体になると、アバドンさんの背負うアリッサの籠の中に入っていった。
あの籠、可愛いが渋滞してんな。
「道は開けた! 行こうっ」
俺達はデコボコにはなったが、ひんやりするくらいの深部通路を進みだした。
_____
今の進行速度、フェネクスの火の魔力の気配、鍵の杖越しの構造物の間隔的に距離はなんとなくわかる。
それこそ、『5分』掛からないくらいだ。
だが、ドォッ!
近接熱線の第1波が来たっ。相変わらず壁なんかがあっても無視して貫通させてくる!
ギリギリだがっ、7割の改造キューブが相殺してくれた。
「クリスタルリトー、中央にキューブを集めてくれ! 陣形も狭めるっ」
とにかく距離を稼がないと。
が、大して間を置かず続く第2波っ。
ドォッ! 改造キューブ全滅っっ。
黒玉仙達は9割のラージホワイトスライムを犠牲に護られ無事だった。
「チャハっ、熱線耐性は一番あるよ!」
エビルカーバンクルは自分の残りのラージホワイトスライムを黒玉仙達に渡し、最前で棘だらけの回転体当たりの体勢で進みだした。
うう、どうしようもないが、距離は残り半分!
······第3波が来た。ドォッ! エビルカーバンクルが1体で相殺!!
「俺様以外のイキりは気に入らない。あの鳥は倍殴ってやるっ」
傲慢だが、今は頼りになるクリスタルリトー。
「ロックローズは応用が利く! 温存するでしゅっ」
「ゲッコ〜! 三滅槍、最後の一槍っ、御覧あれぇいっっ」
2体とも心強いが、『遠距離が強い相手』と、『造り込まれた大型拠点内部』を攻める厄介さ、次はもっと対策しよう······
第4波が来た! ドォッ!! ラージホワイトスライムを全て失い損耗しながらも、黒玉仙達は耐えきった。
「回復をっ」
エル・ジェリーマンにヒーラー個体達を使わせ、さらに進行するっ。前方にはっきり見えた! 首魁の部屋っ。扉を凍て付く植物侵食で抉じ開けられた後、熱線で扉のある壁面のほぼ全て焼き切られ溶解してしまっている。
ヤツ本体も見える。巨大な、光る尾羽根を持つ、2つの瞳だけの黒い炎その物が燃え盛っていた。
憤怒の視線だ。凄まじい圧っ、なまじ自我があるからタンクシメジ達が気を当てられて次々と腰砕けになって脱落しちまう。
「もういい、『焼き茸』にされるだけだね。下がっていなさい」
ヨミロートスは残りのタンクシメジ達に待機を命じた。ここまで雑兵戦では十分役立ってくれた。
でもって結果的に陣をコンパクトに纏められるようにはなった。ところへ、
ドォッ!! 第5波っ。
「でしゅ〜っ?!」
「ゲコぉ〜っ?!」
2体で、相殺はしてくれた。多少回復してもラージホワイトスライムを失い距離も縮まりいかんともし難かった。
「······」
「ゾォアッッ」
クリスタルリトーもネガジャバウォックも目が据わってる。一応、交渉自体はするつもりなんだが、かなり厳しそうだ。
抉じ開けられ扉までもう一息! という所まで来た。
近いっ、一方的に撃たれるのは最後だがっっ、
「居ね」
この距離で第6波が放たれた!
「完璧ぃ!!」
ロックローズは多数のライトジェムを活用した光属性の『変幻する三角錐型』結界を構成! 熱線をそのまま受けず、頂点をやや低くして受け流しに俺達の左右や天井を散った熱線で焼き払う形少ない負荷で処理して見せた。
「2度も一撃ダウンしないからっ!」
豪語するロックローズ。しゃっ、念の為にネガジャバウォックにブレスはしばし待つよう合図しつつ、俺達は素早く首魁の間に駆け込んだ。
「······どの面とはお前のこと」
憤怒の黒炎のフェネクス。これまでの過程がなかったら卒倒してる自信がある。
「フェネクス! 俺はピロシ・シープランドっ。新しいグランドマスターキーの持ち主。このメジハの牢獄のダンジョンマスターだ。今、3階と4階外周の浄化補修済ませた。先代がその、バックレたことは率直に謝罪する。悪かったっ!」
きっちり頭を下げる。最初は俺に言われても、と思ってたが、俺個人どころか俺の家系の問題でもなく、『人類とコイツらの契約』、みたいなもんだろう。
「できればこれ以上事を構えず、あんた達の勢力にも協力してほしい。それが無理ならせめて突っ掛かってくるのは勘弁してくれ。その場合、預かった幹部は······取り敢えず」
チラっと仲間達を振り返る。
アバドンさん、『まさかのここで知らん顔』。リュブリャナは『指1本』立ててきた。。ヘルスパルトイ『指2本』。ツルベ火クィーン『炎の2のマークを表示』。ゴールドスコップ『指3本』。エル・ジェリーマン『指3本』。ヨミロートス『指4本』。クリスタルリトー『親指で首を掻くジェスチャー』。ネガジャバウォック『? て顔をされた』。ロックローズ『指3本』。
ん〜〜〜っっっ。この件、予見になかったな? どこで予見が変わる基点があった?
あ、『俺が予見を知って改善行動を取ってる』てのがあるか。ぬぅ〜っ。
「······3人は、返す。1人はこちらで慎重に預かる。誰を返すかはそちらで選んで構わない」
「ほう」
黒炎が突然集束し、1つの人影を成した。
身なりは古風な祭祀だが、腰回りの後ろの七色の尾羽根飾りを持ち、長い髭と髪と眉は黒い炎でできた、リュブリャナ並の大男になった。
目付きは鋭いが、いくらか怒りは鎮まったようではある。
「ではあの忌まわしい渇きの魔女、ザリチュを討ち取ってみよ。捕らえし我の幹部3体を選び使うといい。これは試しである。見事果たせば、貴様の父の愚行を見逃し、貴様の軍にも加わってやろう」
「ええ?!」
ちょっ待ってくれっ、そりゃ交渉できないならザリチュて人とも一戦交えるかな? とは思ってたけど、そう来たかぁ〜······えー??




