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親父の遺産がダンジョンだった件  作者: 大石次郎


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74/122

74話

フェネクスの強烈な火の魔力を目指して深部を目指す!


だが白夜のオーブの効果が段々切れてきて通路の凍結が薄まり、火属性が多い相手の雑兵の力が増してきていた。


「ピロシ君、そろそろタンクシメジ達を積極的に使おう」


「わかった」


ヨミロートスの申し出を受け入れ、温存していた氷属性装備のタンクシメジ達をやはり前衛は避けて側面や後衛に回した。


後衛はシンプルに補完だが、側面は絵札兵達を圧の増した前衛にいくらか差し替えて配置し直す。


後衛より辺りの強い両側面にはレウケートレントとダークエント・マガリコダマを補強に付けた。ヨミロートスは引き続きもう1体いるはずの幹部個体に備えてもらう。


今回、カツカツだ······


「坊! この気配っ、最後の幹部は待ち構えているようである」


油断ないアバドンさんだが、ええと、そういう場合はっ、


「ヨミロートス、トラップ対策! ロックローズは、まだヘバってるか。エル・ジェリーマン、ガードできる個体群を出せるか?」


「いいよ」


「『ホワイトスライム』の群れを出しましょ〜」


ヨミロートスが床、壁、天井に侵食植物を這わせトラップの探知を行い、エル・ジェリーマンが100体余りの凍結種のスライムを放って最前列に配置した。


すぐに通路上の即死トラップが侵食植物に引っ掛けられてバンバン『空打ち』させられだした。毒ガスの類いは俺が遠隔でサクッと浄化する。迷宮の毒気と比べたらなんてことない。


さらに進むと、神殿内の通路にガッツリ魔法で強化された燃える石材の防壁があちこちに築かれ、狭間(さま)も空けられていた。


「前列防御! 後ろはカウンター備えてくれっ」


ホワイトスライムは『氷の盾』スキルを展開、キューブは『硬化の構え』スキル、札兵は大盾持ちが隊の前で構える。


これにレイブン兵達が狭間を利かせて一斉に火属性の溜め技を乗せた矢や火魔法を放ってくるっ。


ドドッッ。ホワイトスライムの2割、キューブの1割、札兵は大盾持ちだけが犠牲になった。耐えた方が?


次はこっちの番っ。


ネガジャバウォックのブレスを始め、一気に間接攻撃で反撃する! 俺も1割くらい、分断させてやろうと中央の防壁を鍵の杖で崩したやった。


相手は3割は削れたんじゃないか? 防壁は4割は減った。前衛が結構喰らいはしたが、優先なまま距離を詰めるっ!


という流れだったんだが、


「「「ヘルファイアっ!!」」」


『全員隠れ身のマントを装備していた』相手の後衛魔法使い隊がいきなり姿を現し、4〜5人一組で強めの火魔法を放ってきた。それも全員の黒玉仙達上位個体達の前の盾役個体群狙いっっ。


ヤバい! ヨミロートスが速攻で上位個体達の前に張ったが、


「『ヒートレイ』」


2重に着た隠れ身のマントを装備し天井に張り付いていた、『オウムの面』を付けた魔法使いが熱線魔法をいきなり放ち、細い腕しか再生できてなくて本調子じゃないヤコゼンの脳天を貫き、炎上即死させた!


同時に、相手の陣で鳥系モンスター群や砂漠系モンスター群の召喚が始まる。


「このっ」


「チッ」


俺が魔力杭をコメリナが矢を放ったが、隠れ身のマントを棄てたオウム面は、


「ピョピョピョッッ!!」


とけたたましく嗤いながら複雑な軌道で飛び回りながら避け、自軍の陣に収まった。


相手の雑兵達がこっちの前衛に殺到しだす。残りの防壁兵と後衛の魔法使いからの援護もキツいっ。


これが屋外なら一旦下がりたいくらいだが、そうもいかない。


「あれは最後の幹部、ヴクヴ・カキシュであるな。魔王軍時代はカチ合ったタイミングの勇者パーティが強過ぎて瞬殺されていたが、自力は厄介なヤツである」


「······」


本番でスベるが楽屋で爆笑王みたいなヤツだ。


「シンパシー湧くぜっ、前列無理に穴を塞がず残った列を固め直せ! 黒玉仙達は狙われてるっ、3体で集まれ。樹海組は周囲を再探知! ジャバウォックは後ろの魔法使い達を薙ぎ払ってくれっ」


ぐおおっ? これは立て直すまでにまた削られるぞっっ。


本気で殺る気になったフェネクス軍の強襲力、厄介過ぎる!


だが相手は防壁ありきで、本隊は遠距離攻撃主体。こっちの陣形が整い、防壁を全て崩し、『これ以上の種はない』と判断できるとあとは早かった。


前衛が一気に圧を掛け、チビでもパワーの塊のクリスタルリトーとネガジャバウォックが直接攻撃できる間合いになるとあっという間に総崩れになり、最後は、


「ちょこまかするなっ!」


コメリナが『影縫い矢』で動きを止め、


「ヒートレ」


「ほっ」


「っ?!」


俺が相手の魔法の発動を杖で掻き消し、


「でしゅ!」


黒玉仙が死の礫をヴクヴ・カキシュの面の眉間に撃ち込んで全身を結晶化させ封じ込めた。


将を失うと残兵は撤退! 辛勝だ。ホワイトスライム、キューブ、札兵はいずれも半減か······


「シュウゥッ、大将、どうする? 幹部は全員抑えた。こっから交渉の余地もあるとは思うが?」


意外と冷静なことを言うリュブリャナ。だが、わからないでもない。


取り止めて予見が不確実になっても、それは今回の予見に関してだ。


だが相手の不死性。環境悪化に伴う損耗の跡が見えず、むしろ魔力有り余ってる感。雑兵はすぐフル充填されるだろうし、白夜のオーブを追加で生成するのもちと時間掛かりそう。まず、フェネクス超好戦的そうなんだよなぁ。う〜ん。


被害にビビって下がる相手と交渉するタマかな??


「······コメリナ、ロックローズは起きそうか?」


「もう体力と魔力は回復しているはずだ。ちょっと待て。今、ダークエルフ秘伝の『拷問用馬の糞香水』を使ってみる」


どよめくピロシ軍っ、なんて無慈悲なアイテムを生成してるんだ······


マスクとゴーグルをしたコメリナは、飛行絨毯の上で寝苦しそうにしてるロックローズの鼻先に馬の糞香水の瓶を近付け、蓋を開けた。


「っ?! くっさぁ〜〜〜っっっ??!!!」


飛び起きて噎せ返り出した。


よし、取り敢えず結界張れる魔女は確保できたぜ。

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