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親父の遺産がダンジョンだった件  作者: 大石次郎


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7話

一先ず、ビッグヘッド達に食事をごちそうになることになった。


敷物の上での座食が基本らしい、俺、アリッサ、アバドンさん、あとはビッグヘッドとお付きのシャーマン個体とコマンド個体、それから試しに付き合わす形になったウォリア個体の連中も端に固めて座る形に参加させてもらっていた。


「これが、ゴブリン族のフルコース······」


野草のサラダ。干しスライムのパスタ、苔のスープ、鼠の炙り焼き、野苺の酒、ハーブ茶等々。


どれも素朴な味付け。塩気は控えめ、糖蜜はないようだった。


まぁ都会にも『こういうコンセプトの意識高い店』はちょいちょいあったりはしたな、と。


「外のゴブリン達は火を通すか通さないか、ぐらいのイメージだが、ちゃんとしてる感じだ」


「我々も知識でしか知りませんが、まぁそうでしょう。まず知性を保つのが難しいはず。『歴代の私の日記』によれば、我々も末端に至るまで人類並の知性が安定したのは7〜8代は代を重ねる必要があったようです。理性的な指導者のいない野生の環境ではそれも難しいでしょう」


淡々と話すビッグヘッド。見慣れてくるとデカ過ぎの頭もそんなもんか、て気になってくるもんだ。


「『牢獄ゴブリン』の野苺酒だけは評価するものである」


基本、甘党なアバドンさん。


「それよりこれからどうしますの? まだるっこしいですし、戦力も揃いましたし、オーク達にカチコミしときます? うふふっ」


「アリッサ、雑になってるぞ? 軍師どうした? もう少し条件整えるからな」


「私も賛成ですな。マスター殿、食事が終わりましたら拠点内の不具合個所の補修と浄化をお願いできますか? 魔力結晶の備蓄は十分にあります。まずは拠点の住人達にわかりやすく恩を売っておく必要があるでしょう」


「言い方! ま、得意分野だ。片付けよう」


「また修理と浄化〜、わたくし『その件』もう飽きてきましたわ」


「蝙蝠よ、その件もなにも本来業務である」


「だる〜〜」


アリッサは飽き飽きでも、やるさ。


_____



道すがらに人気のないダンジョンを直して回るのと違い、ゴブリンとはいえ生活感のある拠点内での補修作業は張り合いがあるな。


俺はビッグヘッド達に望まれるまま、城壁の内側にある水場や、造り付けをそのまま利用してる魔力灯や水路、封鎖されてた毒気噴出ポイントの浄化なんかの補修や浄化をして回った。


外ではわりと高級品の日光灯(にっこうとう)も食糧生産用に重宝されてたな。


······が! 元々ここの内側は管理されてるから思ったよりスッと終わっちまったよ。


「完了、と」


「私もヘイスケ氏の時代から一度生まれ変わっているので朧気なところはありますが、グランドマスターキーは便利な物ですな」


「助かります!」


「ありがたや〜」


「でもマスター様のお父上がサボったからこうなっただけのような···」


ゴブリンウォリア達が痛い所を突きだしたので俺は素早く咳払いをした。


「さて! 次はどうしたもんだ? 魔力結晶のストックさえあれば俺的にはどんどんいけそうだぜ?」


朝からずっと未知の活動をしているが、むしろ力が湧いてくる。杖を介して俺自身にも魔力が巡ってるのを感じていた。


「······ピロシ坊、今日はもう一旦地上に帰れ」


「え?」


急にアバドンさんに言われ俺は戸惑った。


「ヘイスケも長く潜り過ぎた時や杖を使い過ぎた時は帰還していた。メジハ村の者達からすれば神隠しのようになり、なによりグランドマスターキーの強い接続は適宜切り離す時間を取った方がいい。でなければ徐々にお前は『鍵の魔人』となり、人には戻れなくなってしまうだろう」


「えーっ??」


聞いてないぞっっ。つーか確か、シレっとした顔で毎度帰って来てた父方の爺さん、信じられんな!


「なんですか〜? もう帰っちゃうんですか〜? つまんないですねー」


魔人云々に関心なさげなアリッサ。お前はそんなもんよな······


「『帰還の転送陣(てんそうじん)』でしたらこの拠点に維持されています。私の代では未使用ですが」


どうしたもんかとも思ったが、わりと『考えるまでもない』との即決で俺は一旦帰ることにした。


外じゃ近距離でも使用料がそこそこの転送陣なんて早々使わないからちょっと緊張しちまう。


「んじゃ、また明日? くらいに」


「お早いお越しを」


「「「マスター様! ありがとうございました!!」」」


というワケで俺達は転送陣でヴゥンッて具合に酔いそうな感覚で転送されていった。


······言われるままに乗ったが気付いたら『石の中』とか、ないよな?


_____



「うぉっ?!」


石造りの部屋の中の転送陣に飛ばされていた。陣以外には古びた扉と、犀の装飾の魔力灯が灯ってるだけの殺風景な部屋。


「いやダンジョンからダンジョンに飛んだだけじゃないよな?」


「安心しろ坊、俺の小屋の地下室だ。杖の接続も切れているだろう」


「お?」


確認してみると確かに、『俺と魔力が繋がっていない』感覚だ。だが最初と違い杖自体には魔力がしっかり溜まってはいた。


「これで1層のゴブリンの野営地の陣には飛べるようになった。これから徐々に転送ルートを再開拓してゆくのだ」


「そういう感じか」


「まだ1層の1箇所だけ。気に長い話ですわね。さっさと上に上がりましょう。わたくし、石壁の空間にはうんざりですわ」


「まぁな〜······」


て、アリッサ!


「お前も付いてきてんのかよっ!」


頭の上にいないし、気配がない、と思っていたら『背のリュックにしがみ付いてきてた』わ!


「おいっ、アバドンさん、アリッサ出していいのかよ?」


「一度扉から出て死のペナルティを越えている。どうせ悪さはできん縛りがある、放っておくといい」


「イヒヒ〜」


なんだかなぁ。厳しいんだか緩いんだか。


「そういや、ダンジョンの入口開けっぱなしじゃないか?」


「いや、あれはすぐ閉じるのだ。いちいちあそこから出入りする必要は当面もうない」


「へぇ?」


「小腹が空きましたね、森の新鮮な鹿の生命力等を頂きましょうか? うふ」


「なんか企んでるぞ?」


「『人の営みの範囲に類する』のであれば罪無し」


「意外と柔軟〜」


雑談しつつ、俺達は古びた扉を出て階段を上がっていった。

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