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親父の遺産がダンジョンだった件  作者: 大石次郎


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6話

案内のゴブリン達が執り成して俺達はゴブリン族の拠点の城門を潜れた。


「ほぉ〜」


思わず声が出る。中には簡素なテントがわりとギュウギュウに並んでいた。石造りは物見台付きの城壁だけだ。建材が足りないんだろな。


外の世界のゴブリン族は屋根だけの粗末の住居で不衛生なイメージもあるが、ここは住人の装束を含めて『ずっと夜の遊牧民野営地』て感じだ。人、多過ぎだが。


ゴブリン族達は俺達を遠巻きにしている。


「毒気と、設備不良と、2層の住人やそれより下の意思疎通難しい連中がここまで上がってきてて、住めるエリアが減ってるんです」


案内のゴブリンウォリア達はマスクを外していた。たぶん、結構若い。凶悪な外のゴブリンとは随分人相が違う。


「食用の苔、野草、キノコ、あとは鼠とスライムを確保できてるんですが、塩と水が不足してます」


やっぱ結構詰んでるな······


「塩と水、元はどうしてたんだ?」


「『俺ら世代』はそうだった、としか知らないんですけど、塩は1層の範囲でも岩塩の生成する場所がいくつかあって、普段使いの塩はそこで取ってたそうです。水場は点在してます。足りないんですよ」


「他のグループに抑えられちゃって、岩塩スポットは全滅です! 特に2層から来た『オーク族』のヤツらの嫌がらせですよっ」


「オーク族も来てんのかよ」


豚型の獣人なんだがありえん程凶暴で、人類に敵対的。でもって目を付けられてんのか······


「オークの首魁とゴブリンの首魁は勇者との戦い当時から不仲なんですよ。何度生まれ変わっても、ヘイスケの時代も隙あらば1層のゴブリン族にちょっかい掛けてましたよ?」


「つまらん争いであるわ」


「不毛だな〜。他に塩の入手方法はないのか?」


「2層や独占していても交渉可能なグループとの交易で手に入ります。ただ2層との交易は段々減ってます。独占グループはぼったくりですし······」


オークは手強いのと拗れてる様子だ。


「んー。いきなり、オーク族に当たるのは賢くないかもな。先に1層の環境改善をやり切るか?」


「それはリスキーですね。話の通らないのもいますし、ある種の利権構造も発生しています。まずは味方を増やして動き易くした方がよいでしょう。『賢明美貌軍師』アリッサからの助言です」


言ってることは悪くないが、腹立つぅ〜っ。


「ピロシ坊。忘れているようだが、お前は斥候何人かに話を通しただけでゴブリンの首魁とはなんの交渉もできていないぞ?」


「うっ」


それな。とっとと首魁に会おう。


_____



首魁はテントは一際大きかった。でもって首魁は、


「ぉぅっ?」


頭が、デカい! 額から上と後頭部だけ異様に大きい。胡桃の殻のようだっっ。香草みたいなニオイの煙草を煙管で吸い、敷物の上の古風な座椅子に座って俺達を鋭く見上げている。


ゴブリン・ビッグヘッド。ゴブリン族の中からかなり稀に発生するレアモンスターだ。


「『私の代で』この牢獄の終わりを見ることになると腹を括っていたが、当代のマスターが現れるとはな······マスター殿、こちらへ」


煙草を始末し、小柄ではあるゴブリン・ビッグヘッドは立ち上がった。


ゴブリン・ビッグヘッドはお付きに魔法使い個体『ゴブリンシャーマン』とウォリアより上位の戦士個体『ゴブリンコマンド』を連れてる。


ビッグヘッドはなぜか外で待たせていた案内のウォリア個体達も同伴するように指示を出していた。


大きなテントの裏の居住テントのないエリアだ。今のこの生活条件なら貴重なスペースだな。魔力灯は不足気味だが、訓練場らしき場所が見えた。


「迷宮の補修は任せてくれ。1層に関しちゃオーク対応は後回しにした方がいいんじゃないか? あんたらのグループも協力してほしいんだよ」


剣呑で色々言ってくる、試される、と言われていたがめちゃ無口だな? ビッグヘッド。アバドンさんもアリッサも黙ってるから俺だけ喋ってるぜ。


「協力ですか······よし、ここがよいでしょう」


ビッグヘッドは無人の訓練場が見渡せる所で立ち止まった。俺達も立ち止まる。


「マスター殿、改めてご挨拶を」


今? 習慣がわからないな。


「そりゃ、ご(てい)ね」


コッ。ビッグヘッドは持っていた杖で石の地面を突いた。途端っ、俺達の左手の石の地面の蓋が跳ね上がり、飛び出した槍衾が俺達を襲ったっ。


「「「?!」」」


俺と頭の上のアリッサとゴブリンウォリア達は咄嗟に杖の魔力の盾で防いだが勢いで訓練場まで吹っ飛ばされた。


余裕がなくて、ほぼ無意識で後回しにしてしまった頑丈そうなアバドンさんは素で当たった槍衾の方が粉砕して無傷! 頭の上の一緒に吹っ飛ばされたぬいぐるみのアリッサはなんか、反応薄くないか??


「なにすんだよっ?! これが試しか??」


「「「お頭ぁ〜っ」」」


「いえ、試しはここからで」


ズズッ、ビッグヘッドの言葉に呼応するように俺達の前後の地面から石の巨人、『ストーンゴーレム』が合わせて2体現れた!


「手下を巻き込む辺りがいかにもらしいですわね」


「坊、ここが分水嶺よ」


「くっっ」


場末の月契約宿の管理人と同じにはいかないかっ。頭の上のアリッサも、アバドンさんも協力してくれる気配はないな。上等!


「お前達、そっちのゴーレムに陽動掛けてくれっ。なるべく自力で頼む! 切り抜けるぞ?!」


「「「りょ、了解〜」」」


ゴブリンウォリア達は半泣きでマスクを付け直し、得物を構えて1体の牽制を始めてくれた。


もう一体の小屋を一撃で粉砕しそうな拳打は念力で自分を操作して躱した。


「あっぶねっ」


「わたくしに当たらないように注意ですよ?」


「気を付けまーすっ!」


仕事多いなっ。まず杖の魔力の残量を考えるか。俺の守り、ゴブリンウォリア達の守り込みだと衝撃波は7発撃つのが限度っ。関節弱そうだが、それだけだと2体目で魔力切れで詰みそうだ。


ゴーレム、親父の周辺モンスター資料にはなかったがわりと一般的な魔法傀儡。


魔法傀儡は魔力(かく)を持ってる。そこを壊せば止まる。問題は位置だな。『杖の探知』は教わってない。知ってる材料でいく! ええっと、防御、操作、打撃、浄化、再生······吸収か。


「そりゃっ」


魔力結晶じゃないがゴーレムに鍵の杖による魔力吸収を掛けるっ。半端にしか吸えなかったが、『最も魔力の強い個所』は感じ取れた! 胸装甲の下だ。


残弾は今の失敗吸収込みで6,5発。1体3発か。装甲の継ぎ目を無理押しで割るには5発は必要じゃないか? 普通に衝撃波は撃っても足りなくなる。


魔力を······集約、するとか? 杭みたいに。だな、防御の盾も圧縮固定した物だ。『細長い礫』にすることだってできるだろ?


しゃっ、やってやる。知性は低そうだが、ビッグヘッドが直接操ってる可能性もある。バレたら対応されるか。1体ずつやってる体で、纏めてやる!


まず、殴られそうなゴブリンウォリア2体を盾で守って、俺自身も念力で持ち上げて位置修正。あとは感覚。ナイフ投げは『置いてくる』イメージだ。


「ふーっ、よっと!!」


魔力の圧縮杭を3発ずつ! 2体のストーンゴーレムの胸部の装甲の継ぎ目に撃ち込んだっ。


ガスッ! ガスッ! ストーンゴーレムの魔力反応が消え、石の身体は崩壊してゆく。


「「「おおっ?! やったぁ!」」」


喜ぶゴブリンウォリア達。


「軍師の導きなしで勝ってしまいましたね」


「中等学校卒業資格持ちの高学歴っ! さて」


俺はゴブリン・ビッグヘッドに杖を掲げて見せた。


「······フッ、いいでしょう。我ら旧魔王軍ゴブリン兵団、あなたに与しましょう。マスター殿」


「まぁまぁであった」


というワケで、俺はビッグヘッド達を仲間にすることに成功した。ふふん。幸先よくないか?

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