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親父の遺産がダンジョンだった件  作者: 大石次郎


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5話

グランドマスターキーのワンドの光で1層『石室回廊(せきしつかいろう)』に立ち込めた毒気が消えてゆく。


といっても俺の通る周囲だけだ。通路の破損や壊れたりただ消えたりしてる造り付けの魔力灯、たまにあるこれも壊れた側溝や通気口もどんどん直る。


同時に杖に蓄えた魔力も消費されるが、減った魔力はあちこちに噴出してる魔力結晶を吸収して回復。この繰り返し。


「ほぉわぁ! 全域でマスクいらなくなるんじゃないかっ??」


「お見事!!」


「俺達の『お(かしら)』も喜びますよっ」


案内はマスク付けてるゴブリンウォリア達がやってくれてる。普通にゴブリンの言葉わかるな。まずこんな意思疎通可能な様子の個体、外では見ないが。


「おお、お頭な」


俺達はまずは1層の有力者でゴブリン達の首魁を訪ねることになっていた。そう深い理由はない。アリッサ以外だと最初に出くわした『第一迷宮住人』がゴブリンだったからそのまま案内してもらってるだけだ。


と、頭の上のぬいぐるみアリッサとアバドンさんが目配せした気配。ん?


「······まずゴブリンの首魁を訪ねるのはいいですが、マスター君。少し『訓練』しましょうか?」


「ふむ、ピロシ坊。蝙蝠の言う通りにするといい」


「訓練?」


なんの? 杖か?


「さぁゆきましょうっ!」


「わっ?! 危ないってっっ」


頭の上からぬいぐるみアリッサから尻尾で鼻の上辺りからグルグル巻きにされて引っ張られるっ。


強引だな〜。俺はゴブリンウォリア達もぞろぞろ引き連れて無機質な回廊のやや広さのある通路脇、というか通路に貫通された部屋に誘導された。


来てすぐ毒気は祓い、近くの魔力灯は直し、結晶は回収。だが、大きめの装飾のある瓦礫は杖に反応しなかった。


「あれ? あの瓦礫直らないな」


「あれは壊れたのではなく、『旧魔王城の欠片』だ。迷宮全体に散らばして封じてある。徐々に風化していってるが杖の対象外である」


気に入らない様子のアバドンさん。


「へぇ?」


この杖、魔力切れもだが無制限ってワケでもないんだな。ま、それはそれとして、


「訓練って?」


「もちろん、その鍵の杖の訓練です。ゴブリン達も付き合いなさい」


「「「っ?!」」」


ゴブリン達、げって顔だ。やっぱ杖か〜。


「基本的に、首魁級の囚人に遭遇すると試されますわ。ゴブリンの首魁『ゴブリン・ビッグヘッド』はあれこれ言っくるでしょうし剣呑なヤツ。最低限度、鍵の杖の扱いを覚えておくといいでしょう」


扱いか、修理と浄化だけじゃダメか。つーか、


「マジで? アリッサとアバドンさんはそんなんなかったぜ?」


「俺は囚人ではないぞ、ピロシ坊。それから、俺は未だ坊が当代とはそこまで認めていない」


ぐっ。劇場で、絶対笑わないのに最前列に座ってるくる常連客ムーヴっっ。


「わたくしを復活させた功績を『評価』しました。死にかけたのも『敢えて』です」


「敢えてとか、絶対嘘だろ?」


ぴゅぴゅ〜と口笛を吹いてとぼける、ぬいぐるみアリッサ。


「とにかく! 鍵の杖の『吸収』『付与』『浄化』『再生』以外の使い方を最低限覚えましょうっ」


なんだかな。そのまま立ち位置の移動をする流れになった。


「まずは『防御』だ。これができれば『操作』と『打撃』は力加減を変えて使うだけだ」


「そゆことです」


「「「······」」」


魔王城の小振りな瓦礫を念力でいくつも持ち上げるアリッサと、そこから1つ瓦礫を掴んで構えるアバドンさん。


対峙してる俺とゴブリン達っっ。


「あのさ、防御ってどう」


「ぬん!」


猛烈な勢いで瓦礫片を俺に投げ付けてくるアバドンさん。ドカッ! 瓦礫は俺の前で発光した杖が作った魔力の盾で防いだ。


「おおおっ??」


「魔力が尽きない限りマスター君本体は自動で護られますが、『それ以外』は任意ですから」


「坊っ、次はゴブリンどもを狙うぞ!」


「ちょっ?」


「「「ひぃーっ?!」」」


アバドンさん2投目っ! ドカッ! なんとかさっきの『盾』で防げたっっ。危な。俺が大道芸のナイフ投げ経験者じゃなかったらいけなかったぞ?!


ゴブリンウォリア達は絶望の表情っ!!


「そのグランドマスターキーは育っていない! 魔力は有限っ。的確に運用し、防ぎきってみよっっ」


「は〜い、がんばってぇ、うふ」


「いや責任取れないって! 壁に的描けばいいじゃんかよっ?」


「ヌルいわ! ゆくぞっ、坊!!」


ドカッ! ドカッ! ドカァッ!!


浮かせた瓦礫片が尽きるまでアバドンさんの地獄の連投は続いた······


「はぁはぁはぁっっ」


なんとか防ぎきったが、限界だ。


「「「あばばば」」」


ゴブリンウォリア達は全員腰抜かしてる。


「ふむ。杖の防御、の基本は習得できたか。坊、存外器用であるな」


「そりゃ、どうも······」


「よーしっ、ゴブリン達! マスター君の杖が魔力切れだから魔力結晶を拾ってきなさい! 操作と打撃で、2回分ねっ?」


「「「は、はひ〜っ」」」


このあとの杖を使った念力操作術と、衝撃波を放つ打撃術訓練も大変だったさ······


_____




そう遠くもなかったゴブリン達の拠点は魔王城の瓦礫らしい物を組み上げて作った城壁で囲まれた小ぢんまりした村くらいの規模の拠点だった。


毒気を祓う結界で覆われていて、鍵の杖で浄化するまでもなくここの周囲だけは毒から護られていた。


遠目に見てもゴブリン族の番兵が多くいる、物々しいくらいの様子だ。


「ここが荒れても適応してる感じだ。さすが何百年もここで暮らしてると違うな」


感心してそう言いいゴブリンウォリア達を振り返ったが、きょとん、とした顔をされてしまった。え? 変な聞き方だったか??


「マスター君。個体や種族にもよりますけどね、ここの大半の個体は寿命や事故や病、抗争なんかで普通に『何度も死んで』その都度、記憶をいくらか引き継いだり継がなかったり、といった具合で復活してますのよ?『完全には死ねません』から」


「牢獄であるからな」


「マジ、か······」


ドン引きだっ。思ったよりヤバいとこだぞ、このダンジョン!

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