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親父の遺産がダンジョンだった件  作者: 大石次郎


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69/120

69話

ダンジョンに戻ると、小型の物質系眷属『ミニエッジキューブ』を500体! 砂漠に放った。


「行けっ! 俺様軍っ!!」


いずれもオークジェネラル達が各層でせっせと素材を集め、ビッグヘッドが調整に参加した力作で、魔力吸いの4層環境に加えて迷彩効果と気配を消す効果を念入りに高め、耐熱性も高い個体群!


ただミニエッジキューブは通常のエッジキューブより同期し辛く、簡単な指示しか出せないので事前にアストロロジーに『良さげな20本程のルート』を占ってもらって概ね砂漠エリア全域を観測できることを期待して放たれていった。


前回と違い無事帰ってくるまでほぼ把握できないが、


「『鳥の姿は捉える』、と予見できます」


アストロロジーの内なる星見に期待するしかなかった。


······予定の2日後、妙に大人しく外周域までさっぱり襲ってこない怪鳥コンビに拍子抜けしつつ『3割程』戻ってきたミニエッジキューブの解析が行われた。


果たして成果は?


ネガジャバウォックの拠点には生きた樹木の館の作られていた。かなり大きい。


「ボク達や魔竜軍は気にしないけど、野晒しは落ち着かない人達も多くてね」


「オレ、気にしない。ゾァッハッハッ」


「とにかくっ、屋根と壁は造ったから」


館、と言っても頑丈な樹木で建物の骨組みとガワは作ってるが、中は通路と階段と広間が雑然とあるばかり。あとは取水所と専用種のスライム入りトイレと調理場だけだ。


似た構造の3層の樹の砦との違いはネガジャバウォックが出入りできる巨大な窓と、より広大な広間があるくらいか?


俺達はそこの2階の一番大きな広間に来ていた。時間があったからか? スライム椅子ではなく『スライムソファ』がネガジャバウォック以外に用意されていた。


座り心地はいいけど、ちょっと協議するにはリラックスし過ぎるがっ。


「よし、集めた情報を確認しよう。ロックローズ」


「任せて! 完璧っ」


ロックローズは張り切って杖を振るい、広間の中空に集まった情報を表示させた。


_____



4層、磔の森の中心部に出現した毒砂漠。ざっくり2つのエリアに分かれる。


フェネクスの支配する北東エリア。ザリチュの支配する南西エリアだ。


北東は高温。南西は意外と平温だが『渇き』の呪いで砂中からしばしば顔を出してる棘の植物すら枯死している。


「ザリチュの特性対策はまだ不十分。まずはフェネクス! 今回は交渉もするぞ?」


「毎回言ってる気がするわ」


「いや、戦ってる首魁の方が少ないってばっ」


「いいからとっとと行くのである」


「「ケムん!」」


「アストロロジー、『飛行絨毯』をあまり高く浮かべるなよ? 的になる」


「うん」


「砂漠の環境は骨がカラッとして、わりと好きですぞ? ヒホホ」


「燃える! ヒィィィッッッ」


「リュブリャナ氏、無理してませんかぁ? ムフフ」


「どーってことない! シュゥッ」


「地面は掘り易そうだけどねぇ」


「この環境なら俺様を完全復活させたら1人でフェネクス以外の雑魚幹部は完封できるぜ?」


「最悪、それもありだけどね」


「最悪だぁ?!」


ざわざわしながらも俺達は北東のフェネクス拠点を目指し出発した。


ツルベ火クィーン以外は全員、熱や渇き対策のアクセサリーを装備。物理攻撃組は氷属性の武器も装備。非物理組は無難に守備系や魔力アップの装備を追加していた。


俺はあんまり効果が重複してもあれなんで、属性ジェムを多めに持ち込んでいた。


最前列は変わらず通常サイズのエッジキューブだが、これも耐熱耐渇き仕様。同じく耐熱等の特性を足した札の兵士達は側面防衛を担当させることにした。


偵察、警戒役はコメリナと飛行絨毯に乗ったアストロロジーがいるから省略できる。


今回支援専門の人間体スキュラは一番安全なアバドンさんの近くに付いてもらうことにした。籠には背負われてないから、最低限は自分で身も守れるだろう。


現状ベストの布陣!


フェネクス、闇の不死鳥か。話せばわかるヤツだったらいいなぁ······


_____


毒砂漠の北東、フェネクス拠点の黒い炎を帯びた神殿の最深部に首魁はいた。


巨大な燈火台に燃え盛る、時折七色の尾羽根が閃く暗黒の炎。それが魔鳥の首魁フェネクスであった。


その炎の中で瞳が1つ開いた。


その前にはダーファンとテラツツキ、他2体の魔鳥の幹部個体が控える。


「当代の鍵の主がこちらに向かっている。首か! 心臓を持ってこいっ。我が不死の力で永続的に迷宮維持に奉仕させる。最初からこうすればよかったのだ」


「この数日でみっちり準備が整いました! 多少構成が変わっても手の内もわかってますっ。今度こそとっちめてやりますよっ?!」


「余裕〜で、処して来ますっ! 超、任せて下さい!!」


張り切るダーファンとテラツツキ。


「父の罪は子の罪。贖わせねばならない······」


執念深そうに思念に唸り、フェネクスは怒りの炎をより猛々しく滾らせるのであった。


_____


入ってみてわかった。砂漠、浄化し辛っ。


棘の魔力吸い植物の生えた劣化毒地帯上に大量の砂が乗ってるもんでさ、しかも砂って『散る』から。3層の水場は対外やり難かったけど足元の陸路をどうにかしておけばそんな支障なかった。


ここは迷宮にもある空気の対流がややこしい。


目の前のルート浄化後もゴーグルやマスクを付けてるメンバーは外せない感じだ。


俺も強化してるシーカーローブで毒は問題ないんだけど、砂粒がややこしい。ゴーグルと、ケムシーノ達の糸を風触媒の『エアジェム』ベースで加工した『風吹くマフラー・改』を巻いてガードするしかない。


「······あれ? そういやアリッサ、砂大丈夫か?」


籠には日傘風の熱と渇き対策のカバーが付けられているが、密閉されてるわけじゃなく、そもそも籠で隙間だらけだ。


「風吹くマフラーで包んで、籠にも砂避けの護りを与えてある。特等席であるな」


「ならいいけどさ」


「呑気なもんだわ」


一安心しつつ、続けてロックローズが気まぐれに寝ているアリッサを構いに行こうとしたらアバドンさんにうるさがられて手でシッ、とやられて引き下げって不機嫌になったりしていたが、


「っ! 前方に。たぶん大きな······蟻地獄のようなモンスターが群生しています。少し遠回りですが、砂の下の魔除けの道の跡をたどって避けましょう。下から襲われるとタンクシメジに被害が出ると予見できます」


「よーし、回り込もう!」


「アストロロジー、ピロシにわかり易いように示してやったらいい」


「わかった」


コメリナに促され、アストロロジーは水晶玉を翳し砂中の道の跡に沿って魔力の光の印を点々と記してくれた。


こりゃわかり易い。俺はその印を目標にして一気に砂中の道を浄化し回避ルートを作った。


北東のフェネクス拠点までは結構遠い。ミニエッジキューブの観測通りなら途中いくつか砂中に魔除けの野営地が埋まった地点があるはずだから、そこを上手く使ってこう。

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