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親父の遺産がダンジョンだった件  作者: 大石次郎


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60話

ピロシ達は4層の厄介な魔力吸収植物を退けつつ、一応あるにはある『道の跡』辿って最初の中規模野営地に到達していた。


居着いていたいくらかの野良モンスターは少数精鋭である今回の攻略探索隊が問題なく撃破。


そこは利用した大階段に比較的近いにも関わらずやや4層磔の森の内側に入り込んだ場所で、わずかに残った魔除けの城壁にマスクとゴーグルをしたコメリナが登って窺うと、毒の砂漠と化した中心部の端の辺りも見渡せた。


「4層の記憶自体曖昧だが、5層の砂漠もうっすらとは覚えてはいる。混乱するな。ふんっ」


ひとりごち、コメリナはその場の見張りを強化エッジキューブ2体と交代し、野営地内の毒気の祓われたエリアも戻っていった。


これに、


「······あっぶね〜、あれコメリナだぞ?」 


毒の砂丘に術も使って身を隠していた、背に鳥の翼を持つ長身で単衣の布地の少ない格好の黒い肌の女が姿を現した。コメリナと比べればかなり鈍いエッジキューブ2体はさして警戒していない様子。


5層首魁の1体『ヘェネクス』の軍幹部個体、怪鳥『ダーファン』であった。


「コメリナ? ああ、あのめちゃ矢を撃ってくるヤツか、相性悪っっ」


もう1体、姿を現したのはやはりフェネクス軍幹部、怪鳥『テラツツキ』。こちらは小柄で頭部はマントと一体化した鋭い嘴の鳥の被り物を被って口元だけ出した東洋風の女。身体は水着のような格好をしている。


「アストロロジーの婆さんは連れてきてないようだな、あの婆さん厄介だからなっ」


「さすがにもう生まれ直してるっしょ。前見た時、迷宮の毒でだいぶ寿命減ってたじゃんか?」


「ハッ、こっちはフェネクス様のお陰で『死ぬに死ねない』がな······」


野営地の様子を窺いながら、近くの砂中から這い出してきた魔物化した毒蠍を高速で捕まえてバリバリ食べるダーファン。


「つか、今頃来た鍵の主、使い物になんの? 1回『摘み食い』してやらね〜と収まりつかねーしっ! クソ役立たずのシープランド一族!!」


片手の鳥の鉤爪に変えて気色ばむテラツツキ。


「まずは『クソトカゲ』を始末できるか様子見だ」


「マジ、ダルいわ〜」


2体の幹部怪鳥はそれぞれ翼とマントを閉じ再び毒の砂漠の景色に紛れていった。


_____



まぁ、事前調査と対策は必須だったが、降りてみると4層進行は1層並みにスッ行けてる感じだ。


1層や2層の様な壁面は少なく、3層のような水場だらけでもない。魔力吸収する植物群は迷宮の構造物に属するから、ヨミロートスの植物侵食よりむしろ鍵の杖で制御し易いんだよな。


道があるのもいい。大体壊れてるが補修するとそこには魔力吸収植物は入り込まない。これ、楽。直してから除ける件がないから早いんだよ。


野良モンスターは結構強いが数は少ない。宝箱は解除し難いけど中身が結構よく、トラップも強めだがヨミロートス達の根や蔓による解除能力や接近する必要もないズッコい対処で特に問題はなかった。


「3日目にはネガジャバウォックの拠点まで着いちゃいそうだな〜」


杖で浮かせた魔力結晶とプラントジェム、ガイアジェムを消費しながらバシバシ前方の棘だらけの壊れた道を直し進んでゆく。


すっかり慣れたもんさ。段々『草刈りのバイト』でもしてる気がしてくる。


「とは言っても一度ちょっかいを掛けてしまった形だよ。2つ手前くらいの拠点でエル・ジェリーマンに転送陣を造ってもらわないと。ボクも本体から離れると疲れるからね」


「あんたは植物用の『グリーンエリクサー』でもぶっかけとけばいいんじゃないかしら?」


ロックローズが話に入ってきた。


「君はすっかりぞんざいな物言いになってしまったねぇ」


「あ〜ん?」


3層懸案は一通り片付いたからか、最近思い出したようにヨミロートスなんかに絡みがちだぜ。ヨミロートス側からは『その段はもう過ぎました』くらいの淡白対応されてるから癇に触るんだろう。


「ピロシ様」


めんどくさ、と考えてると、レウケートレントが話し掛けてきた。


「なんだい、レウケートレント?」


「一度地上に戻られるのでしたら、植物の種等を持ち帰って頂けませんか? 我々が育てている種は種類も系統も少なくなり過ぎているのです」


「いいぜ? 買ってくる」


この安易な返事が切っ掛けになった。


「では私は怪談本を所望します! ヒーホッ」


「私は御香がほしい、ヒィィィッッッ」


「『ビワリュート』に合いそうな新しい楽譜があればありがたい」


「地上のリザードマン達の資料とかないか? もう随分違ってるだろ?」


「人類文明とかそんな関心ないが、なんか『美味そうな宝飾品』でいいぞ?」


「美術書等がいいですね〜、グミ菓子でもよいですが! ムフフ」


すげぇ、頼まれだしたっ! いや宝飾品??


「ちょっ、待ってくれ?! 金の用意がややこしいんだよ、悪目立ちすっからっっ」


「······俺が『下級天使達』に命じて買ってこさせるのである。ピロシ坊は形だけでも代金になる石材なりなんなりを用意するのだぞ?」


1人すんごい高いオーダーされてるんだがっ。


「わかったけどさ、ビッグヘッドとオークジェネラルにも聞いた方がいいな」


「私は?!」


ロックローズ。


「お前はアストロロジーが『どんぐり』とか拾ってきてるだろ?」


「超可愛いけどもっ!『キュン』とするけどもっ、宝飾品とかとの格差があるじゃないっ?」


「俺とお前の格の違いは『プライスレス』だぜ?」


「お黙り石ころっっ」


「おおん?! お前を宝飾品に変えてやろうかぁ??!!!」


「胸の穴、爆裂! させてやろうかしらぁ?!」


······3層組、収まりつかないわ〜〜。


_____



で、それから2つ手前の野営地までなんとか進み、エル・ジェリーマンに取り敢えず3層まではテレポートできるようにしてもらった俺達は一旦休憩する運びとなった。


例によってゴールドスコップとアストロロジーも連れて地上に戻ると、『買い出し』の準備に取り掛かる。


地下で溜め込んだ鉱石類に増える一方の換金アイテム類も足す。


「クリスタルリトーの言う、美味そうな宝飾品てどれくらいのもんなんだ??」


「図に乗るから程々で良いのである。こんなもんで十分であるな」


「「ケムん!」」


「長く地上にいないのでお金になる物が並べられるというのも不思議ですね」


「総じて食えやしないからね」


段々脱線してきたが、東屋の手前辺りでアバドンさんが光輪を使って小天使クピドを3体喚び出した。


宗教画のイメージだったが、案外普通の古風でもない平服姿に翼を生やし小さな光の輪を掲げて浮遊する男女の子供達だった。


「『キックエル』『ニーエル』『エルボエル』、この換金物を使い、この買い物リストの物を買ってくるのである。目立たぬよう幻術等を使ってな」


「了解ッス〜」


「お釣りもらっていいですか?」


「下界で羽根伸ばしちゃおっ!」


軽いノリのクピド達······


「釣りは好きにしてよいが余計な真似はせぬこと。天使とバレぬこと。わかったな?」


「「「はーいっ!」」」


元気よく返事したクピド達は換金物を掻っ攫って飛び去っていった。


「随分お遊戯だね?」


「今の天使は平和なのですね」


「むしろ幻術を使って普段からウロウロしてる風なのに驚いたぜ?」


「······あくまで見習いの類いである」


「ふひ☆」


バツ悪そうな顔をするアバドンさんだった。

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