61話
休息、お土産配り、主に見劣りする非幹部の眷属用装備品の道中の拾得品等を活かした強化は済んだ。
出発した俺達はこの磔の森階層の外周で目立つ、絵札カルタをモチーフとした魔法生物『札の兵士』片付けつつ、このルートで最もネガジャバウォックの拠点に近い野営地まできていた。
「ここは近過ぎるから休める程度にしておくか」
浄化補修は程々にして、交代で軽く休む。戦力的に盾役の強化エッジキューブはさほど減っていない。悪くない進行だ。
最初のエッジキューブの偵察で帰巣本能が強く、脅威でないと判断すると一定範囲を越えると拠点に戻っている風だったが、周囲に気配はない。
「エッジキューブは覚えられているかもですので、我ら2人で偵察してきますぞ? ヒホッ」
「行ってきま、ヒィィィッッッ」
眷属を連れてないから身軽なヘルスパルトイとツルベ火クィーンがそれぞれ隠れ身のマントを被って拠点の様子を窺いに行ってくれた。
偵察慣れしてるとはいえ、ここの環境はツルベ火クィーンにはちょっと負担が重いので心配だったが、程なく2人はなんともない様子で戻ってきた。
「よく眠っておりましたぞ?」
「安眠、ヒィィィッッッ」
さてどうしたもんか? クリスタルリトーの時とは似て非なる感じ。まず、こっちは一方的にちょっかいを掛けてる体だ。
『知性込みで、また冠で復活させればいい』
というのは合理的なんだろうけど、
「マスター。君の良心は評価したい。でも効果はないよ? 逡巡は状態の悪化以外は招かない」
この期に及んで躊躇しているとヨミロートスにパチーンと言われてしまった。
ここで『じゃああんたの3層対応はどうだったの?』とか反論しだすと収拾がつかなくなる。
「わかった。リュブリャナ、物理の歩兵の遠距離攻撃の段取りを頼む。他もよろしく頼むが、ロックローズ一派とエル・ジェリーマン一派はもう少し柔軟に対応できるよう備えていてくれ」
「任せろ! シュウゥッ」
「バリスタ苦手だよ」
「俺様達は勝手にするぞ?」
「他はメイジだから、弓を使うのコメリナだけなのよね?」
「どの道、今回ヒーラーばかり連れてますからね〜」
「さて、私とスキュラはどうしたものか?」
ここまで実際の対応は流動的と見ていたから、いざとなるとちょっとザワザワしてきたな。
_____
······配置についた。
ネガジャバウォック。映像で見たより酷い環境だ。
棘の魔力吸収植物だらけ。またそれを集めて巣にしてる。知性を放棄したのも納得だ。
この竜を恐れて野良モンスターが一切いないのがせめても救いさ。
遠巻きにするにしても浄化はできない。強化したシーカーローブは問題なく毒気を無効化してるが、ヒヤヒヤする。
この層の毒気は棘植物の影響か? なんか甘いちょっといい香りがすんだよな。うげ〜っ。
相手はよく眠っているがなんだか苦しげだ。もう、1人ぽっち。
つくづく親父、罪作りだぜ。やりたくないってのもまぁわかるけどさ!
「アバドンさん」
「うむ。今回はブレス対策の魔力耐性に全振りするのであるっ、光よ!!」
アバドンさんは中に巨大な光輪を展開し、全員に魔力耐性の祝福を与えたっ。
「っ!!」
目覚めたネガジャバウォックはまずは頭上の光輪に気を取られた。チャ~ンス!
全員が一斉遠距離攻撃を放つ! こっちはヨミロートス軍のタンクシメジのバリスタが一番手数がある。クリスタルリトーの所の強化エッジキューブはあくまで盾役。
アバドンさんの守り込みでもジャバウォックのブレスが致命打過ぎるからさ。
俺も右の翼狙いで超シープランド完封陣を放つっ。
左の翼はロックローズ一派が狙ってる。
ドドドドドッッ!!!
一気に削るっ! 左右の翼は完全に消し飛ばした。
自分からなんもしてないのに、ごめんよっ。
「ゾォアアァッッ」
吠える魔竜! もう飛べなくなったが、ブレスによるカウンターが来たっっ。一閃!!
ゴォッッ。激怒で火力が上がっていて、こっちの盾役強化エッジキューブは一気に6割は粉砕された。
余波もある。結構、タンクシメジ達にはダメージが入った。これをハイスライム・ヒーラー達が素早く回復っ。
「追い打ちだ!」
お礼を言ってる間もない。この一手で仕留め切れないと本格的に被害が出そうだ。ネガジャバウォックは再生力が高く、翼も速攻回復しそうっ。
ブレス後の隙に再度の一斉遠距離攻撃!! ドドッ!
「ゾォァ······ッッ」
大ダメージを受け、片腕も消し飛ぶネガジャバウォック。さらにっ、
「さっさとくたばれっ!」
「新生するといいよ」
クリスタルリトーの地表から水晶の柱を多数噴出させる『広域・結晶剣』と、ヨミロートスの樹木で砲台を造って魔力波を放つ『樹海砲』を撃ち込まれるネガジャバウォック!
魔竜は頭部が消し飛び、身体中穴だらけにされた。沈黙した。
「坊、再生は止まったがまだ死んでいないのである。トドメを、ぬっ?!」
突然、4層の中心部の方を振り向くアバドンさん。なんだ?
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遅れて、俺は他の首魁達も察知した。飛来する見えざる気配!
相手は姿を現しながら、1体は風の刃を多数放ち! もう1体は奇妙な鳥の被り物の嘴は超高速で伸ばして『俺』に突き掛かってきたっ。
ガキィッ! リュブリャナのミスリルの銛とロックローズの掲げた杖の結界とミスリルケムシーノの『加速スピンアタック』でこれを弾いてくれたっ。
風の刃の着弾でこっちの陣が混乱する中、テラケムシーノの『雷光スピンアタック』、エル・ジェリーマンの『触手乱舞』、ゴールドスコップの『手近なエッジキューブを投擲』、コメリナの『鉄縫い矢』が2体の襲撃者を迎撃するっ。
「おっとぉっ!」
「首魁だらけっ、最悪ぅ〜。てゆうか、ケムシーノ強っ。なにコイツら??」
自在に高速飛行して避ける襲撃者。
「ヤツらは5層首魁フェネクス軍の幹部、ダーファンとテラツツキ! ネガジャバウォックを仕留める隙を窺っていたようですなっ」
スキュラと『水弾』を撃ちながら言ってるザトウマージ。
「東方では『鳶にアブラアゲ』て言うんだよね〜っ?!」
「『燕にダンプリング』とも言うぜ?!」
飛び回りながら挑発してくる幹部個体達。
「お前ら、俺達襲ってもメリットないぞ?!」
「メリットだぁ?!」
「理屈言うじゃん、コイツ〜っ」
「「ギャハハハッッッ」」
爆笑だよ。つか、アブラアゲってなんだよ??




