59話
ヨミロートスが生成した琥珀のオーブに映し出し、生き残りのエッジキューブの解析した結果、最後の4層首魁である魔竜『ネガジャバウォック』は4層南東の以前の拠点にそのままいた。
爬虫類と両棲類の中間のような奇妙な竜だ。映像で棘の植物を重ねた寝床から鎌首をもたげ、ブレスで数十体のエッジキューブを破壊!
逃げ切るまでにもどんどん数を減らされ、未帰還個体の半数はヤツによるもの。
目が合ったら、音を立てたら、気配を気取られたら、終わり。映像は通俗本のパニックホラー物の世界そのままだったな······
ジャバウォック種の竜自体は地上でも『強壮なモンスター』として魔物の多い所にチラホラいて、各地の普通のダンジョンても『中層』くらいでお馴染みのモンスターだが、抜けた強さだ。
勇者伝説では『竜との戦い』が多いから紛れて正直あんまり伝わっていない魔王軍の幹部モンスターだが、クリスタルリトーより下の階にいるだけのことはある。
だが、そこは既に毒気と棘の植物に覆われ、眷属は全滅している様子だった。
「ボクの見る限り、知性を失ってるね。これはクリスタルリトーよりマズい状態。一度倒して冠に戻さないとやりようがない」
例によってこの種のアイディアを淡々と話すヨミロートス。
「ただ倒すだけで眷属もいなくて、場所もわかってて、わりと開けたとこにいる。これは遠距離の一斉攻撃で潰しちまえばいい。強くて中々死なないヤツだが、俺様より『柔らかい』からな。ハハッ!」
身も蓋もないアイディアのクリスタルリトー。サイコパスコンビ案だが、ベターではあるか?
「ネガジャバウォックは一旦置いて、他の、中心部とかの映像は?」
「遠目に見ているだけだけど、あるにはあるよ?」
映された、4層中心部の5層首魁達が『砂漠の環境』に変えたエリアは外周から見る限り拡大はしていないが、毒の侵食は激しいように見えた。
あとは、外周エリアは崩落と毒に加えて、毒に適応した魔力を吸う棘の植物がそのまま繁茂している劣悪さで、結果として野良モンスターや野良化した眷属モンスターは少なかったが、ここで生きて居られる個体はかなり強壮! ネガジャバウォック戦以外でも、エッジキューブがガンガン破壊されていた。
「3層以上に数だけ揃えてもなんともならない具合だな」
「ペンギンとリーフウォーカーも攻略後の環境改善まで留守番だね」
渋い顔のリュブリャナとゴールドスコップ。
念入りな選抜と、強化も必要そうだった。安定化させた3層のリゾート開発とか楽しそうだが、暇はないか······
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俺のシーカーローブを強化する。ビッグヘッド、アストロロジー、ロックローズ、レウケートレントの4人で組んで錬成の魔法陣を展開し『強化ミスリル糸』『魔力結晶』『魔力吸収対策の書』なんかを触媒とし、バシュゥッと融合!
『魔力吸収特化型シーカーローブ・改』か生成された。
「お〜っ! カッコイイじゃん。ありがとな」
早速、着てみると前より軽いくらいだった。
「アクセサリーも泡沫の守りから、シンプルに魔力障壁を展開できる物に代えた方がいい。ボクが作った『琥珀の盾』の首飾りをあげよう。回数は3回だけ、強力に君を守ってくれるよ?」
ヨミロートスが盾っぽい装飾の琥珀のネックレスを伸ばした蔓の先に掛けて渡してくれた。
「こりゃまたありがとう。上手く使うよ」
ガード3回か。ミスらないように気を付けよう。
「私とクリスタルリトーとロックローズで前衛盾役が務まる物質系眷属群の生成強化を行います」
前衛も必要だからな。
「リーフウォーカーの代わりに、ヒーラー個体達を4層でも動けるよう整えましょう〜」
回復役も必要。
「眷属はともかく、あたしはアクセサリーを用意して殿に加わるよ」
「我々も眷属はもう連れてゆけませんが、殿頑張りますぞ〜?」
「ヒィィィッッッ」
ゴールドスコップ、ヘルスパルトイ、ツルベ火クィーンが3人だけで護衛を担当。
「俺は当代主の護衛だ。居残り組用にリザードマン・エリミネーター個体も十数体育てといた」
3層用にも育成していたリュブリャナ。
「絞るといっても多少は頭数必要ですからね。ボクらの方で揃えるよ」
生き残った上位個体を含めて攻略団の成立に協力する構えのヨミロートス。やるとなったら結構行動的だ。
「水棲種族勢で参戦できそうなのは私とスキュラだけだが、配置で手薄な所はしっかり埋めよう」
控え目ながらザトウマージ達もきっちり仕事してくれそうだ。
「俺らオークは·····まぁ、3層の土木工事も手伝ってやるよ」
バツ悪そうなオーク・ジェネラル。ここはしょうがないとこ。
「アリッサのお守りにケムシーノ達の強化も必要である。サンダージェムはあるが、ミスリル材のあまりを少しくれ」
黙っていたアバドンさんがヌッと顔を出してきた。
「おお、進化させるんだ」
渡すとケムシーノ達本人とも小声相談して、陣を張り、ケムシーノと素材配置して······
「出でるのであるっ、『ミスリルケムシーノ』! 『テラケムシーノ』!」
進化錬成発動!!!
「「ケムーーーンっっ!!!」」
アイアンケムシーノはメタルな光沢っ、ミスリルケムシーノに進化! ケムシーノライトニングは雷雲の申し子っ、太鼓を3つ背負ったテラケムシーノに進化! どっちもレアモンスターだっっ。
「カッコイイ〜〜っっ。アリッサも安心だな」
「でしょうけど、どんな夢見てるのかしらね」
ロックローズが杖の握り手の方で頬を押すと、例によって、
「ふひっ☆」
ニヤニヤするぬいぐるみアリッサだった。
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2日後、準備は整い、これまた例によって『一番マシなルート』と判断された大階段前に選抜探索攻略隊は集まっていた。
「まずは大型の現地野営地の確保からだが、今回は完全に討伐前提っ。微妙なとこだが、蘇生し直して正気に戻す。てことで前向きにいこう」
「遅刻鍵の主も、それなりのサイコパスだぜ!」
「······」
言うよな、クリスタルリトー。苦しい言説だとは自覚あるがなんともならんところだ。
「とにかく! 出発!!」
俺達は魔竜退治に、棘だらけの4層、磔の森へと大階段を下り始めた。




