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親父の遺産がダンジョンだった件  作者: 大石次郎


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52/53

52話

ぬいぐるみを手に戸惑ってると、


「オイオイ、今から小道具変えんのか?」


違ったか? あれ?? いやでも、


「思ってたのと逆が正解だったりすんだろ?」


「はぁ〜?」


「どんだけアドリブに自身あんだよ? 俺らフォローしねぇかんなっ!」


「へへっ、大丈夫大丈夫」


適当にごまかし、俺は仲間2人と蝙蝠のぬいぐるみを持ったままオーガの大男の案内で楽屋を出た。


小汚い舞台への廊下を歩く。


今日より明日。面白いことを探す、まだ面白いことを確かめる日々、さ。


「じゃ、面白くなくなったらどうするんですか?」


「え?」


急にぬいぐるみに話し掛けられ、俺は、眩しい魔力灯照明の舞台への廊下を歩く若者ではなく、自分が入り組んだ崩れかけの迷宮で右往左往してるオッサンになってることを思い出した。


_____



目が開く。


「はっ?!」


水中!! 既に結構深いっ! 俺は泡沫の守りを発動させて空気で自分を覆い、胴に杖を魔力を撃ち込んで水を吐き、呼吸を確保し、息を整えながら鍵の杖の念力で浮上を試みる。


さっき、ブッ飛ばされてたっ。アバドンさんの光の盾は砕けたようだ。


途中、水中でぐでんぐでんになって伸びてたロックローズも回収して泡沫の守りの泡の結界の中に入れて水を吐かせとく。


「だぁっ!」


水面に顔を出す。


岸近くで、他の首魁達や上位の眷属達が隻腕になったクリスタルリトーと争っていた。


さっきまでいたヤツの眷属軍はヤツ自身の大技で消し飛んだはずだが、代わりにこっちの首魁や上位眷属達の攻撃で飛び散った『ヤツの破片』から『結晶の人形兵』が次々と発生していた。


始末に負えないがっ、これはアバドンさんの盾で護られたらしい樹海軍の生き残りと、後衛組の眷属軍が応戦している。


ビッグヘッド達、初手でカマした上位魔法使い組はこっちに参戦してる。


どう手を付けたもんか? 俺が水面で考えていると、知った気配が近付いてきた。


「坊、起きたか? アリッサの魔力を少し感じたのである」


「「ケムんっ」」


「ダメージの酷い者達は回収して樹の砦で保護しています。ロックローズ様も私が一旦預かりましょう」


「私もハイスラ達で回収しましたよ〜」


アリッサを背負いケムシーノ達を肩に乗せた光輪に乗るアバドンさんと、浮遊するアストロロジーと風属性のブルースカイハイスライムに乗るエル・ジェリーマンだ。


「わかった。頼む! アバドンさんは引き続きアリッサ頼む。あと、ケムシーノ達貸してくれっ」


「ふむ、先行したリュブリャナとザトウマージの消耗が激しい。気に掛けてやれ」


「わかった!」


俺はロックローズをアストロロジーに任し、魔力でアイアンケムシーノとケムシーノライトニングを引っ張り上げ、一気に杖の念力で水面から飛び上がってクリスタルリトーに向かった。


「両眼を狙う、フルパワーで攻撃してくれっ」


「「ケムケム!!」」


接近するっっ。


「っ! 生きてたか鍵の主ぃっ!!」


相手の反応にザトウマージとリュブリャナが反応してる。もう一手は任せられそうな気配っ!


俺はそれぞれ4本重ねの魔力杭にケムシーノ達を乗せた。


クリスタルリトーは『結晶片のブレス』を俺に吐いてきたっ。街1つ呑み込む勢いだ。おそらく結晶化と粉砕特性だろう。これを、


「水よっ」


「シュウゥッ」


ザトウマージが大量の水の激流を発生させ、それを触媒にリュブリャナが湖水割りスキルを発動させて撃ち込み、クリスタルリトーの結晶片のブレスを相殺!


同時に俺はケムシーノ達の乗った魔力杭を鍵の杖で放ったっ。


高速で飛ぶ杭は『4本分』軌道を変え、クリスタルリトーの両眼に激突! それに合わせてケムシーノ達が左右の目に『鋼鉄スピンアタック』と『雷撃スピンアタック』を放ったっ!


バチィッ!!


「んがっ?!」


これでも目を砕けなかったが、仰け反らせて隙は作れた。


他の首魁と上位眷属達が一斉攻撃を放ち、左腕も砕くっ!


「ザトウマージ! リュブリャナ! 一旦引いて樹の砦で回復してもらってくれっ」


「まだやれる!」


「いいだろうっ。リュブリャナ! 味方に庇われるぞっ?」


「シュゥッッ」


リュブリャナは口惜しそうだったが、ザトウマージと共に下がってくれた。


力を使い切ったケムシーノ達も踏み潰されそうなクリスタルリトーの足元を掻い潜って上手く逃げてくれたようだ。よっし。


「チビどもがぁーっ!!」


激昂して地を踏みしめて、『地属性の魔力波動の柱』を無数に発生させだすクリスタルリトー。


自分から分かれた人形を眷属も巻き込むがお構いなしだ。


「クリスタルリトー! もう最初からなにも言うタイミングがなかったから言っとくっ」


これまでで最大量のアイスジェム、サンダージェム、ファイアジェムを触媒に既に準備してるっ。


「交渉決裂だバッキャロー!!!」


俺は『30連鎖魔力杭超シープランド完封陣』」を放った!!!


説明しよう、この技は属性付与の10連魔力杭×3をいい感じに撃ち込んで相手を完封してカッコイイ、という主旨のとっておきだぁっ!


ドドドドドッッッ!!!!


クリスタルリトーの胴体と両足にヒビが入るっ。


そこへ、ヨミロートスが蔓で動きを封じ、地の魔力波動の連打を凌いだゴールドスコップがノヅチ衾スキルを放ち、ヘルスパルトイがナマクラ斬鉄スキルを放ち、ツルベ火クィーンがネガパイロシュトルムを放ち、オーク・ジェネラルが、キラーモール・ヘビィナイトが、ゴブリン・コマンドが、スキュラと水棲種の上位眷属達が、コメリナとメイジ個体達が、レウケートレントと他の樹海組上位個体の生き残り達が強打を放つ!!


「ぐぅおぉっっ??!!!」


クリスタルリトーの胴体と両足は砕け散った。


がっ! その大きな破片から『大型の結晶人形兵』達が発生してゴールドスコップ達を襲い、さらにヤツの残された頭部が『俺に』突進してきた!


咄嗟に大きめの魔力杭十数本で壁を造って受けるがまた水場の方に押し戻され始めたっ。


しぶとい! アバドンさんの言った通りかよ!!


_____



斜め下に押し込まれる形だが、泡沫の守りがあっても動き辛い水中に突っ込まれのは避けたいっ。


念力で確度を変え、魔力障壁で水面を引き裂くようにして堪える。


「だいぶズボラみたいだがっ、逆にどうやったら納得してくれるかなって思ってんだが、クリスタルリトー氏?!」


「交渉決裂なんだろぉっ?!」


「言うだけ言ってみてくれっ、柔軟な方だぜ俺!」


「そうだな」


クリスタルリトーはデカい顔で嗤った。


「ここで死ね。杖も砕いてやるっ!」


「なるほど〜、んじゃ改めて······交渉決裂だこの野郎ぅっ!!」


ちっと危ないが至近距離で魔力杭に収納腕輪から引っ張り出したウォータジェムの水属性を足し、水面の水を引き寄せて突進の角度をズラすように杭を炸裂させ、宙に弾いてやった。


ヤツの頭部数割が砕けで例によって人形兵が100体以上散らばったが、俺も即座に魔力杭を100本以上放って全個体着水する前に仕留めた。


「······お前、勇者より器用だな」


顔の欠けたクリスタルリトーが言ってくる。俺は水面の上に魔力で立ってヤツを見上げる。鼻血も出てきたな、こんにゃろめっ。


「手品だのジャグリングだのの講師もやってたもんでさ」


言いつつ探知を続ける。コイツ話にならないが、全然死にもしない。核は、どこだ??

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