51話
後衛のピロシがやきもきする中、ヒートストーンゴーレムが全壊すると接近戦となり樹海軍とクリスタルリトーの眷属軍の激しい潰し合いが始まった。
「負け犬が3層に戻ってきたんでしゅねぇ?」
「勝ち馬に乗った気だがなっ!」
「チャハハハ!」
「シュウゥッ」
黒玉仙とザトウマージ、エビルカーバンクルとリュブリャナの争いも激化していた。
結晶化する死の礫を水流の盾と結晶化部位の切り離しで対抗するザトウマージ。これにより強力な槍状の黒い結晶を放って射抜きに掛かる黒玉仙。
「2度と復活しないよう固めて祠に納めてやりましゅ!」
「祀ってくれるとは存外礼儀正しいではないか!」
一方、針山の超高速回転体当たりをウォータジェムの大量消費で発生させ続ける水を効かせた斬撃で弾くリュブリャナ。さらに移動にも水を利用して追撃をリュブリャナは試みたが強固な魔力障壁を展開されて弾かれる。
「キーンっ! だよっ、チャハ!」
「面倒なヤツめっっ」
「······」
ザトウマージはリュブリャナの扱うウォータジェムがそう長く保たないと判断し、攻勢に出た。
「しゅ?」
『濃霧』を周囲に放ち、
「『イリュージョン』」
幻影魔法を重ね、分身するザトウマージ。
「こんな物っ!」
『黒結晶のギロチン』を多数出して広域旋回させ、濃霧ごと取り囲んだ分身を纏めて斬り裂いてゆく黒玉仙。しかし、
ドッ!
天井付近からザトウマージに超圧縮された水流『水蛇孔』スキルが杖先から撃たれて頭頂部に風穴を空けられ、
「しゅぴゅっっ??」
黒玉仙は塵と消えた。
「次はもそっと賢く生まれ直してこい」
ザトウマージは言って、リュブリャナの方の様を伺った。
「よしっ、いいことを思い付いたぞ?!」
「チャハ?」
リュブリャナは全てのウォータジェムを使って大渦を作り、一気にエビルカーバンクルに迫り、湖水割りスキルを放った。
回転体当たりの体勢から慌てて魔力障壁に切り替えるエビルカーバンクル。
「お前は硬いから、もっと思い切りブッた斬る! シュウゥッハッハー!!」
リュブリャナは魔力障壁ごとエビルカーバンクルを両断した。
「チャ······脳筋、過ぎる」
力を失ったエビルカーバンクルは2つに分かれたまま落下して砕け散っていった。
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ザトウマージとリュブリャナの2人がやってくれたお陰で、樹海軍は勢い付いたな。
損耗しながらも物質系の眷属軍を蹴散らし、地表を植物侵食しながらクリスタルリトーの『ねぐら』に迫る!
俺は念力で飛行するよりマシだから石の羊の上に立って駆けさせていた。アバドンさんは光の輪の上に胡座をかいて飛ばしている。
前方には『水晶の小山』が見えてるが、それがねぐら。というかあれはクリスタルリトーが『寝てるだけ』らしい······
「坊、クリスタルリトーはただでは済まん。核を見抜き、確実に打ち込むのである」
「矢文は撃たせたけど、いきなり殺しにいく感じなんだな」
もう開戦もしてるわけだが『寝てる相手』てのがやり辛い感じ。
「そもそも急所を狙ってもそうそう死なん。最初のヤツを倒すのに当時の勇者も苦労していた」
「······因みに勇者氏はどうやって倒してた感じ?」
「夕暮れから、夜明けまで殴り合っていた」
「······」
勇者氏、『ドン引きする逸話』ばっかしだな、て。
「俺はもうちょい上手くやるよ、というか」
的の砕けた物質系モンスターの死骸もゴロゴロしてるがそこら中、樹海軍の死骸だらけだ。ざっと見た感じ普通の蘇生が効きそうなのは3割くらいか?
「やっぱヨミロートス式、馴染めないな」
「皮肉じゃないが、あたしらは土台遅れて来てるからね」
スコップを担いで走るゴールドスコップ。
「今は今! 私達がガツンと起こしてやるわっ」
ずっとこの調子な杖飛行のロックローズ。
「『最初の一撃』に備えておきます」
ブッ飛ばされるのを前提としてる、箒で飛ぶメイジ個体を連れて走るコメリナ。
状況悪化に備えエル・ジェリーマンと樹の砦に残ってもらったアストロロジーの占いによると、『決着は水中の率が高い』とのこと。
そこまで吹っ飛ばされる確率大、か······等とげんなりしてると、
「いっ?!」
「「ケムんっ?!」」
水晶の小山から凄まじい魔力を感じ、地表が鳴動しだした! 植物侵食は小山に迫っていたが、これが『地表の結晶化』に上書きされ押し戻される。
結晶化の波は相手の眷属軍は素通りし、樹海軍だけ石化させて砕いてゆく! 前衛のタンクシメジ群は粉砕され、同じく前衛のフォレストガスト群と輝く砂粒のようにされて地表に落ちていったっ。
「『緑壁』!!」
ヨミロートスは強い魔力の植物の壁を結晶化の波を覆うように展開して受け、この呪いを相殺。
「なんだぁああ?? まだ『終わって』なかったのかぁああ??!!!」
水晶の小山は起き上がり出した。結晶の大巨人クリスタルリトー!! デカ過ぎるっっ。
「鍵の主かっ! 俺の『硬さ』なら混沌の底さえ抜けられる!『監獄ごっこ』はぁああ、もう付き合い切れないなぁああ!!!」
1つの塔のような右腕に最大の魔力を付与するクリスタルリトー!
「盾の祝福を与える!!」
アバドンさんは樹海軍だけでなく後衛の俺達と自身にも光の障壁を付与した。
「俺を、起こすな」
ボォッッ!!!
クリスタルリトーは自らの右腕が粉砕するのも厭わず魔力を暴発させながら地表を殴り付け、大爆発を引き起こした。
滅びの地の魔力の爆風はヤツの眷属を消し飛ばし、樹海軍を呑み込み、俺達にも迫る!!
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···
······楽屋だ。安っぽい賑やかしの衣装を着ているが他に同じ衣装のヤツが2人もいるな。顔に紗がかかったように判然としない。でも『知ってるヤツら』だ。1人は獣人。1人はハーフのフェザーフット。
そうだ、寸劇興行のユニットだ。最近よく組んでるヤツら。2人は姐さん方のいる店の話で盛り上がってる。俺達は20代半ば、怖い物知らず。
近くのテーブルには小道具がやたら山盛りで置いてある。なんに使うのか? 骨らしい翼のある蝙蝠のぬいぐるみもあった。
と、楽屋にやたら大柄な『オーガ族』の劇場スタッフが入ってきた。やはり顔に紗が掛かったようにはっきりしない。
「✩✩✩✩さん、そろそろです」
大柄な割には腰が低い。
「しゃっ、ピロシ! 行くぞっっ?」
「今日興行作家が何人か観に来てるらしいぜ?」
「······いいなっ。見せ付けてやろうかっ?」
俺達は小道具を手に取り出した。俺は、なんとはなしに蝙蝠のぬいぐるみを取っていた。
ん? これ、使ったっけな??




