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親父の遺産がダンジョンだった件  作者: 大石次郎


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50話

1度俺が村に戻ったこともあって10日掛かりで西部のクリスタルリトーの支配域以外の3層環境を全て浄化補修し終えた!


その過程で素材が集まったので樹海の東屋広間でザトウマージを錆びた王冠の状態から復活もさせる。


ロックローズ、ビッグヘッド、レウケートレント、アストロロジー、ゴブリン・シャーマン、キラーモール・ソーサラー、リザードマン・プリースト達が魔法陣を管理し······


バシュッ!! 閃光と強い魔力の水飛沫の直後に水が逆巻き、最初に古風な東方リュートが構成され続いてローブが形成、最後に盲目の老人が現れ、


「むぅ。世話を、掛けたな」


「ザトウマージ様!」


泣いちゃうスキュラ。一方、じゃないのもいたが。


「シュウッ、記憶も維持! しぶといジジイだ」


「ふんっ、お前達が『忘れっぽい』だけよ。鍵の主、状況は、む? ヨミロートスにロックローズか······生まれ直しかロックローズ。また一段と呑気な面構えになっているが」


「なってないわよ! 当代では初対面よっ! 無礼っっ。なにこのシャバシャバした爺さんっ」


「はい、ちょっと説明するからっ。アリッサも休眠しちゃってさ」


「久し振りだね、ザトウマージ」


ヨミロートスも会話に入りつつ、俺は経緯を説明。この後、幼体でまだ参戦できそうにないがマブチタユウとミズチとサハギン・グラディエイターの1体もザトウマージの手によって復活させられた。


_____



翌日、俺達は3層怒涛廟西部のクリスタルリトーの支配域が望める位置にある、ヨミロートス影響下の『樹の砦』のような野営地の小島に来ていた。


水場の先の陸地の毒汚染地帯に結晶の壁が延々とそそり立っていた。天井近くでドーム型を形成していて毒靄と規模が大き過ぎて端までは見通せない。


今、眼下のギリギリの所まで浄化済みの水場を20隻程のハイスラの小舟の岸に向かっている。


舟操作の為にエル・ジェリーマンも乗ってるが、主な乗員はヘルスパルトイとその眷属達だ。ツルベ火クィーンとその眷属達も同伴している。


幸い結晶の壁付近に敵影は見当たらなかったが、油断はできない。


ヘルスパルトイ達には例によっての和睦の矢文を射ってもらう。ここからだと遠いのと。近くで向こうの陸の様子を偵察もしてもらいたかった。


「ボクらが前衛を行くから」


全て『生きた樹』で出来たの砦の物見台には俺、アリッサとケムシーノ達を連れたアバドンさんの他にヨミロートス、レウケートレント、ゴールドスコップ、ロックローズ、コメリナが来ていた。


ヨミロートスは大樹から離れ、草花をあしらったローブを着込んでいた。淡々と話す。


「後退しながら少しずつ削ってけば」


「クリスタルリトーは手強いし、『雑』なヤツだよ?」


俺はため息が出る。


「もう矢文持たせちまったが、4層。そんなにか?」


「酷いね」


端的。


「それにね、他に選択肢があるのに『五分五分』くらいの無難な策じゃ危ういよ。もう少し『確度』を上げよう」


「そっちに相当犠牲が出る」


端正で幼く、それでいて老いを感じさせる。アストロロジーの知性からくる『老成』とは質が違う。


「その為の、今日のボクらの勢力の繁茂だ。自分達ばかりが帳尻の外とは考えていないよ」


「ヨミロートス······」


俯瞰は、自分の眷属込み。徹底はしているが、眠るアリッサと口を出さない構えのアバドンさん以外は素直には賛同しかねた。


前に突っ掛かってたロックローズも。


ただ俺の案も穴が多く、なにより『ダンジョンマスターの不在』の取り返しのつかなさと、次のマスターの目処の立たなさ、いや、場合によってモモミか、あるいは数年後により状況が悪化した迷宮に対峙する形で姪っ子辺りに引き継がれることを考えると、自分のアイディアの陳腐さが目立った。


敗北は、勿論俺や家族の負担だけでは済まない。


いざとなったら命を懸けるとか、そんなの大して問題でもない。いやずっとそうだったはずなんだが今頃実感が伴ってきて、鍵の杖を持つ手に冷たいモノを感じた。


_____



······上陸後の初手は大量にジェムを消費したビッグヘッド、ゴブリン・シャーマン、キラーモール・ソーサラー、リザードマン・プリーストによる一度限りの強化爆破魔法の行使!


「「「マナフレア!!!」」」


向かって正面の結晶障壁が砕け散るっ。


中には案の定、物質系モンスター軍が犇めいていた。


「ゴーレムを盾に、進軍っ!!」


ヨミロートスはヒートストーンゴーレム百数十体を前衛に、樹海の軍勢を突入させた。地表攻撃対策と味方への強化を兼ねた植物侵食も合わせて行う。


俺達本隊も慎重に続いた。


接近までの遠距離攻撃の撃ち合い互角の火力だったが、ヒートストーンゴーレムが壁になってくれたお陰で樹海組の損害は軽微っ。だがここで、


「今さらダンジョンマスターに忠義面でしゅかっ?! 反吐が出ましゅねぇっっ」


「結局ただの『木』だから『遠くに見えた結果』以外、関心ないんじゃない? まぁウチの大将は結果にも興味ないけどっ! チャハハハッッ」


黒い宝玉の化身の導師『黒玉仙(こくぎょくせん)』と闇の宝石の魔獣『エビルカーバンクル』が現れた。幹部個体だっ。


黒玉仙は黒い礫を散らすように放って速攻を掛けようとしたオオホムラオニヤンマにいくら被弾させたが、このわずかなダメージが瞬く間に全身に黒い結晶として拡大し、オオホムラオニヤンマは為す術なく砕け散っていった。


逆にエビルカーバンクルに速攻を掛けられたバケヤナギ・エントは再生が追い付かない速度で、結晶の針山状に実を縮めての超高速回転体当たり攻撃で削り潰され摩擦で炎上しながら滅ぼされた。


樹海軍に動揺が走ったが、


「ああいう術の搦手でくる輩は任せよ。リュブリャナ、ゆくぞ?」


「指図するな! だが乗ってやるっ、俺はあのトゲトゲだ!!」


本隊からザトウマージと彼の生み出す水流に乗ったリュブリャナが飛び出した。


「2人とも気を付けろよ?!」


「3層首魁が3層首魁眷属に引けを取ると?」


「見くびり過ぎだぜっ?! 鍵の主! シュウゥッハッハー!!」


相手の幹部個体2体はザトウマージとリュブリャナに任せる流れになった。


ヨミロートスも下手に手を出さないよう自軍幹部に采配する。


水棲種軍の指揮はスキュラが、リザードマン軍の指揮はプリースト個体が引き継いだがプリースト個体はまだ疲弊しているな。


「坊、あれは保たんぞ?」


「だな! プリーストに2体回ってくれっ」


アクアリーフウォーカーを少し回す。と、


バチィッ!! 激流と銛が相手の幹部と激突っ!


ザトウマージとリュブリャナの交戦が始まる中、ロックローズも闘志を漲らせていた。


「ずっとあの木偶の坊をとっちめてやりたかったのよっ、私達の『拘泥』もヨミロートス達の『割り切り』も下に見やがってぇ〜〜っっっ」


「下というか、関心がなさ過ぎただけじゃないですか? 幹部は対策してきてますが、あの首魁、同じ層にいると認識してるかすら怪しいもんですよ」


「お黙りコメリナ!」


「······」


それぞれ考えは錯綜しているが事は動き出した。もう最善手を目指してやり切るだけだっ!

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