49話
3層の浄化補修の本格化は重要だ。んがっ! 同レベルで重要な使命が俺にはあったそれは······
『隔月の納税に関する役場手続き』。
正確には石材個人採取業限定2種の納税手続きだっ!!
「はい、お疲れ〜。最初の届け出のあとの1回目だからややこしかったが次からは年度締め以外は簡単だ、2種だしな。今後も先納してくなら手数料免除だぞ? ピロシ。これ、地味に大きいからな」
「おお〜」
『みんなで支えよう! 納税のしおり』という表紙や挿絵は可愛いが中身は楽しくなさそうな資料をモリオに渡されつつ、役場をあとにした。
「······」
只今、午後2時過ぎ。平日。天気はいい。メジハ村のショボい魔除けの結界上空をほぼ空飛ぶ蛇な下位竜『ワイアーム』数匹が連れ立って跳んでいた。
「たまには芝居でも観に行くか」
確か、村の小劇場に聞いたことない旅の一座が来ていた。演芸はまだ観る気がしないが、生活の懸かった他人の芸を観てみるのもいい気分転換になりそうだ。
ドサ周りでもまだ舞台を降りてないヤツら。昔より見応えがあるだろうさ。
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エル・ジェリーマンが造っていた転送陣で3層のヨミロートスの樹海に行ってみると蔓植物で造られた広い東屋ができていて、そこで協議が行われることになった。
人工物は転送陣と協議用? の東屋とかなり簡素な宿房のみ。毒樹海は消えても『延々と森』であることに変わりない感じだ。『とある古い部族の聖域です』て感じだ······
「『変化が乏しい』と思うかもしれないけど、長く文明的な生活は放棄していたからさ」
数日ぶりの俺の拍子抜け感にヨミロートスは先回りして言ってきた。
「ただボク以外の上位個体は大樹に繋がる必要はなくなった。それに連なる個体群も野良化し辛くなり、凶暴性も薄れる。改善はしてるよ? 他の人型種族と比べるとちょっとわかり難いけどね」
「ああ、まぁ」
「そもそもお前達はこれ以上『繁茂』しなくていいだろ?! シュウゥッ」
極論きた。ヨミロートスとレウケートレントも涼しい顔だ。『釣り合いが取れない』とリュブリャナなんかがもう反発して、今回からレウケートレント以外の樹海の幹部は同席しないことになってよかったぜ······
「個々の感情はともかく、当面の課題や方針、各自の提供材料を確認しませんか? 不毛ですからな」
さすがに話が早いビッグヘッドも来てる。
「私もそう思ってました」
アイディアはなさそうだがビッグヘッドに対抗するロックローズ。
「勿論ここにもキングの貴賓保育室を建てるんだろうな?」
「ばぶっ!」
赤ん坊のキングを連れて来ちゃったオークジェネラル······
アバドンさんが咳払いをした。
「3層の、和睦が成立していない最後の首魁について確認するのである。ロックローズは情報の更新ができておらんだろう? 森の者達、述べよ」
レウケートレントがヨミロートスに目配せをして口を開いた。
「残る首魁、『クリスタルリトー』は物質系モンスターを眷属とする力の権化です。毒の類いは効かず、鉱物の化身である為に洞窟の劣化崩壊にもさしたる関心を持っていません。攻撃的な眷属幹部もいましたが、クリスタルリトーが眷属の復活に関心がない為、今は残る幹部個体は2体のみです」
「随分怠惰そうだな、それだけ聞くともうほっときたくなるんだが?」
味方にもならなそう······
「野放しの残存眷属は厄介ですがそれも1つの手ではあります。しかし、これから『より劣悪環境の4層』に降りるのであれば環境耐性の強いクリスタルリトーとその眷属は味方に付けておいて損はありません、というより必須でしょう」
うーん、それな。
と、ここでエル・ジェリーマンが挙手した。
「エル・ジェリーマン。言ってくれ」
「はぁい、野良の物質系モンスターをスカウトしていけば事足りる気もしますね〜。まずは環境改善進めませんか?『彼』は交渉困難ですよ? 結果的に戦力を削ることもできますし」
エル・ジェリーマンのこの意見が利いて、最後の首魁クリスタルリトーは一旦保留となった。
まず3層は広いのと、水場の環境で手付かずな所が多く野良モンスターだらけでどうにも落ち着かないというのもあった。
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またハイスラ小舟船団を駆る! この層でお馴染みの植物系、虫系、菌系の野良モンスターもいるにはいるが上位個体の支配が強まったせいか一部を除いて遠巻きにしてる。
向かってくるのは中型小型のエッジキューブや様々な属性の敵意ある魔法石『ジュエルビースト』なんかだ。
「キングのお通りだぁ!」
「ばぶっ」
オーク・バンデット達と連携して重いクロスボウを撃ち込む子連れのオークジェネラル。
「ヒィィィッッッ」
「ヒホッとな!」
「小舟はすぐ上がってこられるのがねっ」
ツルベ火クィーン達は警戒しつつ程々に援護の火炎弾。ヘルスパルトイ達とゴールドスコップは船まで取り付いた敵に対処。
「「「クェー!」」」
「「「ハパン!」」」
ヨコヅナペンギン達は『アクアブレス』、アクアリーフウォーカー達はダメージを受けた味方に素早くヒールの魔法。
スキュラ達は水操作で、牽制に専念。リュブリャナ達は水の溜め技で応戦。エル・ジェリーマンは船団の操作に専念。
そして俺は······
「ゆくぞっ、完璧補佐!」
「任せなさいな!」
素で広域浄化補修してゆくのはちょっと大変だぞ? ということでロックローズに念力で水植物の『ウォータジェム』、植物触媒の『プラントジェム』、地触媒の『ガイアジェム』をいい塩梅で供給してもらいつつ、俺は3層の水場の環境をガンガン改善していった。
前に攻撃に使った時もそうだったが、ジェムありだとパワーが段違いだ! ガンガン浄化補修してゆくっ。侵食植物も引っ剥がすっ。
「やはり、植物系モンスター等は多少大人しくなってるな」
コメリナの中では『もう今から敬語使わなくていいか』と判定されたらしく、メイジ個体と連携して矢を放ちながら防毒マスク越しに素っ気なく話し掛けてくる。
「今、俺は使役化してられないけどな! よっ」
とにかく浄化だ。今日中に旧リザード拠点からダークエルフ拠点までのルートと、ヨミロートスの樹海までのルートの水場は全部片すっ!
「気張り過ぎんよう気を付けるのである」
「私は上層に戻りたいのだがなっ」
「······☆☆☆」
「「ケムん!」」
ケムシーノ達はやる気だが、特に参戦するでもないアリッサを背負ったアバドンさんと、ビッグヘッド。いや、ビッグヘッドも『下の状況』見といた方がいいかな、と。
「お前とお前はあとで樹海に来るのです、お前とお前も、お前も······」
戦闘には参加せず、代わりにめぼしい元眷属やその系譜の野良モンスターをスカウトしてくレウケートレント。現状、樹海組では唯一同行。
ま、役割はそれぞれだ。俺は俺で浄化補修しまくるっ。『ダンジョンマスター適性あり』らしいピロシさん、仕事するぜ?!
ジェムを対価に、荒ぶる毒の水場にとびっきりの浄化と再構成の光を撃ち込んでいった。




