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親父の遺産がダンジョンだった件  作者: 大石次郎


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48話

ピロシが琥珀のオーブの光の中に消えてからも、攻略探索本隊の交戦は続いていた。


「シュゥッ、やり辛いなっ!」


リュブリャナは対峙した『バケヤナギ・エント』の即座に再生する無数の根や枝に苦戦していた。水場ではないので得意の水属性技も簡単には使えない。


ツルベ火クィーンは同じ火属性で素早い巨大虫『オオホムラオニヤンマ』に手こずり、ヘルスパルトイは打たれ強く再生分裂し負の炎も燃焼部位を変質廃棄する為いまいち通らない粘菌の怪『モジホコリニュウドウ』に苦戦。


スキュラ、カースウンディーネ、ヤロカ石は近くに水場のない陸上の戦い自体に苦戦し、制圧力の高いネオサダコは髪による呪殺を警戒され実態のない『フォレストガスト』の群体を当てられやはり苦戦していた。


「さてさて?」


器用に相手に応じて様々なハイスライムを分裂させながらエル・ジェリーマンは応戦していたが、相手からも物量をぶつけられていた。


「マズいねっ! いつの間にかアバドンのヤツもいないしっ!!」


ゴールドスコップは重装備のキノコ兵『タンクシメジ』の群体に応戦していた。


首魁の眷属達やオーク・バンデット、ヨコヅナペンギン、アクアリーフウォーカー、ゴーレム達も乱戦状態だった。


「ええいっ! コメリナ! 探知に専念するわっ。守りを固めなさい!!」


「わかりました。皆、準備を。しかし初動が遅れていますよ? ロックローズ様」


「わかってるわよっっ、あの天使が大体『見』に回るからややこしいのよ!」


負け惜しみを言いつつコメリナとメイジ個体達に結界を張らせ、ロックローズは探知の魔法陣を発動させた。


「······ん? これは、深部から······来てる!!」


メキメキメキッッッ。樹海深部方面の森が音を立てて変容し道が開け、駆ける石の羊に立ったピロシと、小さく光輪のみを出して浮き上がったアリッサとケムシーノ達を連れたアバドンロード、そしてレウケートレントと矮小化したダークエントが現れた。


「シープランド?!」


驚くロックローズ。


「停戦だ! そこまでっ」


「「ケムんっ!」」


「矛を収めなさい。意外と残りましたね」


「オレは秒でボコボコにされたけどな······」


ピロシとレウケートレントの登場で、双方牽制しながら距離を取り、樹海の争いは一先ず鎮まったのだった。


_____



改めての協議はヨミロートスの座する樹海中心部の大樹の広間。俺とアリッサとケムシーノ達付きアバドンさん以外は、各首魁とスキュラが参加した。


ヨミロートス側はさっきまで交戦してた各幹部とレウケートレント。


それ以外はここの1つ手前の樹海の中の広場で待機だ。これまでと違いケリが付いてるわけでもないからまだピリついた感じがあんな。


「ヨミロートス、和睦成立。で、いいんだな?」


「試しは済んだからね。まずここまでたどり着き、ロックローズを当代のまま仲間したことも評価したい。成立させたサキュバスクィーンを味方としたことを含めて」


「偉そうに! 協議が成立するならもっとこれまでもやりようがあったはずよっ?!」


ロックローズはさすがに収まりつきそうにない。これにレウケートレント以外の相手方の幹部連中も反応して殺気を強めてくるっ。マズい······


「鍵の主が現れた。『前提』が違う。まず『先代の君』は好戦的で始末に負えなかったからね?」


「ぐっ」


状況、タイミング、出来事の連なり、相性もか? ヨミロートス側は植物系モンスター特有かもしれない『思考の俯瞰傾向』もあるんだろうな。


やたら攻撃的なのもいたし、植物系ばかりでもない感じではあるが······


「和睦だ。ピロシ・シープランド。君にダンジョンマスターの素養があると認めた。3層の環境改善、それからこの層の『最後の首魁』対策に協力するよ」


最後の首魁、か。


「わかった。それじゃ、いや前に」


聞いとこう。他の連中ももう少し、納得できる材料がほしいだろう。


「俺が現れるのがさらに遅かったらどうするつもりだったんだ?」


「どうにも。この層は陸地が頼りなくこうなると維持が難しかった。樹海と、植物の侵食で補強していた。上層は魔力が薄く、我々の多くは移住が難しい。ここでただ滅びを先延ばしする日々だね」


人に近い暮らしとは一線を画す、森の自然を体現してる者達だからそんな過ごし方を許容できたのかもな。


「納得してくれたかな?」


「なんとなくは。まずは、毒樹海からか?」


「坊、その大樹を介するといい」


「そうだね、この木が『核』だね。というかボクの本体なんだけど」


「へぇ?」


改めて、見上げると大樹は中々の老木であるようでもあった。この環境に消耗しているのか? ヨミロートスのどこか老いた印象に合点がいった気がした。


_____



俺は大樹にグランドマスターキーを触れさせた。


魔力の呼応が始まり、周囲の毒樹海を含め樹海全域がおおよそ認識できるようになった!


一番はっきりするのはやはり大樹周辺だが、『うっすら』程度なら樹海の外の植物侵食の広がる3層全域まで感知できそうだ。


「······植物越しに認識が拡大する、ずっと筒抜けだったのか?」


「ボク達は鍵の杖を使ってるわけじゃないよ? でも、まぁ1箇所に集中して眷属や野良化した眷属でも補完すればかなりわかるね」


いい気はしないな。


「あんたがオークキング並みに敵対してたら終わってたよ」


「特に友好的ではなかったけどね」


「······」


やんわり口調だが結構、バシバシ返してくるタイプだな。ま、いいか。


「取り敢えず毒樹海の浄化と、壁面、天井、地盤構造の大雑多な補修を済ます。それで俺は一旦眠るが、無駄に揉めてくれるなよ?」


「ボクとしては」


「私どもの『多くは』他意ありませんので」


ちょっと引っ掛かるが、ヨミロートスもレウケートレントも維持管理、生存に必要。と割り切った立ち回りだったという認識。しかしそう割り切れるもんか? 世代を経て、多くは直接の当事者になってないのがせめても救いだが······


チラっと、まだ目が三角のロックローズと目が合った側から『自分に多くは期待するな』て顔のアバドンさんを見るが、うだうだしても詮無いな。


「やるぜ」


俺は杖に魔力を込めた。大樹越しに浄化と再構成の力を発動する。


この樹も1つの装置だが、杖の、いや俺の力の精度や『実現性』がこれまでとは違う。


長年に渡る、安全圏を造る死の代償だった様子の毒樹海を一気に浄めてゆく。


3層の本格浄化を始めるっ!

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