47話
色々すっきりしてダンジョンに戻った俺は、攻略探求本隊を再出発させ2番目の野営地までハイスラ船を使ってまずはショートカット。
そこから今度は側面奇襲により慎重に進み、4つ目の野営地までたどり着いた。
このルートでヨミロートスの支配域ギリギリの場所だ。
「毎度形式的だがやっとかないワケにもな」
ボヤきながら、今回はハイスラでバリスタを作ってもらい、見晴らしのよい高台から和睦の矢文を先んじてヨミロートス支配域を撃ち込み、その数時間後に相手の支配域に侵入を始めた。
「『トロール』の群れが出るか?『ジャバウォック』が出るか? といったところかしら?」
「意訳するとロクでもない所に行く、ということだ」
「大体合ってるけどね······」
ロックローズとコメリナの掛け合いを聞き流しつつ、俺はビッグヘッドから預かってる追加のヒートストーンゴーレムを前衛盾役に十数体取り敢えず召喚した。
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ズンッ、ズンッと先頭のゴーレムの足音が響く中、『毒の樹海』進んでゆく。
下に水場や崩壊した石材構造があったのかもしれないが、『全ては侵食植物』に覆われ、その上に毒に満ちた樹海が繁茂していた。
樹海は解毒まではせず安定化だけしているがここまで支配が強いと気休めだな······
「毒の領域に眷属の気配はありません、ヒィィィッッッ」
ツルベ火クィーンの報告通り、眷属どころか野良の気配すらなく、俺達はそのまま徐々に『毒の薄まる領域の樹海』に入り、さらにそこを抜けて『完全に解毒された樹海』に隊を進めた。
「ヒーホ」
「鍵の杖なしで浄化領域を広大に作るとはね」
「シュウゥッ?」
「マメな所はありますよね〜、ムフっ」
「この環境の獲得は他種族や、いや自分の種族でも捨て石にする者には容赦ない結果です。賛同はできません」
「それは全体の大きな流れに内包されることです」
樹海の一角から大輪の花が咲き、中から白い樹木の魔女が現れ、スキュラに応えた。
「レウケートレント、ヨミロートスの腹心である」
なぬっ? 俺は咳払いをして、1発口上をカマそうとした。
「俺はピロシ・シープラ」
「ここまでたどり着いたあなた達に、試しを課しましょう」
レウケートレントが杖を振り上げると樹木の大地と木々から無数の虫や茸や草花の眷属モンスター群が現れ、さらに幹部らしい大型個体も出現し、それぞれこっちの首魁勢に突進しだした。
ロックローズとアバドンさんに相手が現れ、特にアバドンさんに数十個のアクセサリーで自分を強化したらしい闇属性の怪樹『ダークエント・マガリコダマ』が突進!
全方位、足元からも来られたから前衛のヒートストーンゴーレムの壁もいまいち機能しなかった!
「マズいっっ」
問答無用ってのは抵抗あるが、俺は多重魔力杭をレウケートレントに撃つ構えを取ろうとしてが、当のレウケートレントは琥珀製? らしいオーブを構えて俺を見ていた。
「主より、承っております」
琥珀のオーブが妖しく輝くっ。
「シープランド!!」
ロックローズが援護しようとし、俺も咄嗟に魔力杭を解いて結界を張ったが一瞬で砕かれ、俺は植物属性の魔力の奔流に晒されてしまった。
これは、ミスったか······??
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気が付くと温かな日差しの昼の深い森にいた。魔力濃度は3層程度、しかし毒の汚染や劣化崩壊の様子はまるでなく、モンスターの気配も取り敢えずはしない。
樹木による恣意的な侵食も特に感じなかった。
林道が通っていたが一方向にしか続いておらず、逆向きには道は途切れただ深い森が続くばかりだった。
「ここまで試しらしい試しは初めてだな」
鍵の杖を手に取ると反応はあった。
先へ、と促している。
「甘やかしてはくれないもんだ」
俺は林道を進みだした。
試しの森は奇妙な物で進んでいるのかいないか? 判然としない感覚だったが、背後の『行き止まり』は飛ぶように遠ざかっていった。
そうして······
道は二手に分かれていた。どちらも露骨に魔力が強い。
右手は火水土風等、属性を宿した木々が立ち並ぶ林道。
左手は鋭い棘の目立つ枯れ木が続き、わかり易くモンスター達の待ち構える気配がした。
「ふ〜ん?」
ここまでこの杖を使ってきた。詳しく鑑定するまでもない。右手は絡み合う属性を正しく整え調和させてゆく、言ってみれば『知恵の道』。
対して左手はひたすら叩きのめして押し通る『力の道』、といったところか。
俺が賢者の類いなら右、俺が迷宮のボスモンスターを目指してるなら左、なんだろう。
だが、
「ちっとずっこいかもしれないが!」
俺は最大の魔力をグランドマスターキーに集めた。
「ヨミロートスっ! この迷宮の『構築者』は俺だ!!」
ガリィッッ、空間を引き裂き、二手の道を分断し、その中央に『新たな石材の道』を構築させて突き通すように道を伸ばしてゆく!
俺の迷宮の道はついには最奥のこの空間の壁を突き破り、清浄な植物の属性に満ちた場所へと接続させた。
「よっと」
結構遠いから、足元から『生きた石材の羊』を造り出してそのままその上に立ち駆けさせて、その清浄な場所へと出た。
そこはおそらく全ての樹海の中心点。奇妙な果実を鈴生りさせる大樹のある所。
大樹の根本には古風な貫頭衣を着た1本角を持つ少年がいた。大樹と繋がっている。ヨミロートス、だな。
側にはなに食わぬ顔のレウケートレントと、アリッサを背負いケムシーノを連れたアバドンさんがいた。
「ダンジョンマスターとして正しく来れたようだが、遅いのである」
「ふひ☆」
「「ケムん」」」
「いやっ、なんでアバドンさんそっち側にいるんッスか?!」
「闇属性であってもエントごときに2級天使の足止めができるワケもないのである」
よく見るとアバドンさんは片手で矮小化して「きゅう〜っ」と目を回しているダークエントを掴んでぶら下げていた。
「そッスね······」
あんたそんな感じだよねっ。
「仲良しなのはよくわかったよ、そろそろいいかな?」
ヨミロートスが口を開いた。見た目も声少年だがどこか老人臭くもある。
「ヨミロートスだな? 俺はピロシ・シープランド。当代の鍵の主だ」
「グランドマスターピロシ、その『傲慢と理解』。合格だよ、君はこの迷宮の魔法と対峙する準備ができているね」
老いた少年、ヨミロートスは冷笑するような厳格なような? 奇妙な加減で俺にそう告げ、魔力の残滓のある鍵の杖に視線を移していた。




