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親父の遺産がダンジョンだった件  作者: 大石次郎


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46話

うへぇ、て感じだが、水場から大群で来た『自我持ち』のエント主体の軍勢との交戦が続いていた!


つかロックローズ、反撃は頼もしいが火力が高くて『動きが大味』だからあぶねーんだよっっ。


とにかく、相手の戦力でややこしいのは高速飛来してそのまま自爆する虫『バーストカナブン』だが、これはネオサダコが伸ばした髪で全て捕獲して発動させる大技で対処。


『濡れ髪縛り呪殺陣』! 纏めて呪い殺すっ。凶悪!! 髪を使い果たしてベリーショートになってたが······


他に厄介な水場からどんどん攻めてる相手に対してヤロカ石達の『鉄砲水』による牽制も有効だった。


この激流にヨコヅナペンギン達と、新調した『ミスリルの銛』を持つリュブリャナが便乗して間合いを詰め、効率よく水場の敵を削り仕留めてく。


オーク・バンデットはアクアリーフウォーカーを守り、素早いヘルスパルトイにはあちこち生えてくる茸系モンスターの大型個体を『邪炎(じゃえん)斬り』で仕留める。


全体の流れは悪くないな。んがっ!


「すんごい狙われるんだがっ??」


『俺狙い』が露骨だ。


「当代主はちょいと力使い過ぎたねっ、スラ公はもっと眷属出しな! ロックローズは加減を知らないのかいっ?!」


「いいでしょ〜」


「加減してるわよ!」


「坊、ロックローズの攻撃だけ防御しているといい」


「了解!」


「ちょっとさぁっ!」


錯綜しながらも、徐々に形を作りつつはあった。


_____



撃退できたが、さすがにそこら辺の野良とは規模もパワーも違った。編成改編前なら被害が出てたろう。


俺達は旧リザード拠点に一旦戻ることに決めたが、まず簡易に解放していた今回の進行の2つ目の野営地で立て直しする運びとなった。


少し念入りに、野営地の魔除けを補修し直し強化する。ここは元は水棲種達の陸上野営地だ。


「野営中、ワタシが結界を強化する」


スキュラ配下の1人、カースウンディーネが水属性のここの魔除けの結界と共鳴する形で結界を強化してくれた。助かる。


『5時間』を目処に、それぞれ手当てや休息することになった······


「仮設でも全員飛べる転送陣設置は無理がありますねぇ〜、すでに浄化済の陸路に沿った水場を小舟のハイスラ船で近道するのが無難では?」


「それで行こう」


魔王城以外の瓦礫は途中でも除けられるしな。帰りはエル・ジェリーマン達に一働きしてもらうことになった。


「むにゃにゃ······」


「ふひ〜☆」


「ケムん······」


「ケムケム······」


暴れて疲れたロックローズはケムシーノ達とアリッサを囲んで早々に眠り込んだ。


俺も近くに寝そべってなにげなく取り出したまだ持ってるサニディン石を眺めていた。今さらなのと魔除けも強化済だから焚き火を焚けて結構快適だったりもすんな。


「坊、力を使った。寝ておけ」


炊き出しの仕込みを終えたアバドンさんも来て、火の前に座った。


「ああ······さっきのはヨミロートスの眷属だろ?」


「であるな。だがヤツの采配にしては粗雑。跳ねっ返りの類いであろう。ヤツは冷淡だが俯瞰的なヤツでもある。鍵の主という者の役割を理解している」


役割か。つまり、


「管理人?」


「冒険者や首魁ではない、ということだ。ま、坊は坊なりにやるべきことを行うことだ」


そう言ってアバドンさんも横になり背を向けてすぐイビキをかき出してしまったので会話が切れてしまった。


「俺なりにやるべきこと、ね」


サニディン石は焚き火の火に照らされ、しかし涼しく光っている。


これはこれで、一段落つけるか。


_____




地上のメジハに戻った俺は、変な時間だったから兎パンチの屋根裏で一眠りして時間調節し、モリオより早く連れ出せそうなミラルゴを引っ張っていつかの青果店に急いだ。


「ピロシ! 私は青果店に用はないけどっ?」


「この間、いいの見掛けたんだっ、石が高く売れたから奢ってやる。明日治療院にでも差し入れしてやれ!」


「ありがたいけど、私を連れてく必要は??」


とにかく、青果店に着いた。時間的に来ていても不思議ない。店なら確実でもちょっとバツが悪いし、もっと『偶然な感じ』でいきたい。


「いらっしゃいませ〜」


変わらず声たっか。ワーラクーンドッグの店員だ。


「フルーツなら皆に配りたいから普通の物でいいよ? イーストオレンジくらいで······」


来たら来たでさっさと選びだすミラルゴ。この辺のクレバーさはモリオと同じだな。なんだかんだでたまにつるむようになった風なのもわかる。


まぁクレバー助祭はおまけだ。目当ては······いた!


「よぉ、ユーナン」


「あ、シープランド君」


前髪重め、背高めのユーナン氏だよ。俺は冷汗かきまくりだが平静を装う。


「仕入れかい?」


「ええ、店の保冷箱(ほれいばこ)の空きが少ないから、買ってすぐの方がいいかな? て」


「そっか、俺はミラルゴの明日の治療院詰めに差し入れしようと思ってさ」


ミラルゴの話にスッと乗ってみる。


「助祭の? へぇ」


棚の向こうでオレンジを物色するミラルゴをチラ見するユーナン。顔を傾けるとまた前髪が開いて片目が見えた。


「石、高く売れたんだ。そうだ! 飾ってたよな? これ、売れ残りなんだけど、いるかい?」


さり気なくサニディン石、ではなく同じくらいの価値の翡翠を差し出す俺。


「いい、の? 悪いよ」


「高い物じゃないから、森に落ちてるし、遅れた開店祝いみたいな。友達と仲良くがんばりな、てことで」


「シープランド君······ありがとう」


またちょっと泣かせてしまったが、受け取ってくれた。よかった。まず採取業やってるのに飾り棚見てから、なにも渡さないってのもそこそこ感じ悪い。


「あれ? ユーナンさん」


ミラルゴも気付いたな。


それから3人で少し立ち話をして、オレンジを買い、青果店前でユーナンとは別れた。


ミラルゴもオレンジを治療院の保冷箱に置きに行くと礼を言って帰ってゆき、俺は1人でいつかのモリオのように金葉亭のカウンターで飲むことする。


今夜も楽士は悠久の里を奏でていた。


沁みた。そして、オッサンになると失恋の最終処理にちょっと慣れてきてるのに苦笑しちまったさ。


塩煎りナッツと、カウンターに置いたどこにもゆきどころのなくなったサニディン石に掛かる魔力灯の暗めの明かりをつまみにする。


あの子に乾杯! なんてね。

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