53話
宙と水面で睨み合いになった。戦いでまともに首魁級と対峙したのは初めてか?
ロクなもんじゃないっ。と思いつつ、俺は魔力杭十数本を展開し、これに合わせてさっきと変えた方がいいだろうと風属性の『エアジェム』だけを十数個収納の腕輪から引き抜いた。
相手も自分の真下の水面を結晶化させて『手札』増やし始めた。『形があれば』なんでも結晶化できんのかよ、デタラメだろ······
と、ここで、
「ヘルファイア!」
「ディフェンドっ、ヒールっ」
「押さえなさ〜い」
杖に乗って飛来したロックローズが爆炎魔法を放ち、浮遊しているアストロロジーが守備魔法と回復魔法を俺に掛け、ブルースカイハイスライムに乗ったエル・ジェリーマンが時空属性の『パープルハイスライム』達に『重力波』を放たせた!
ダメージはともかく炎でクリスタルリトーの注意を引き、重力波で動きを封じて下方の水面結晶化は砕いて水底に沈めたっ。
俺の体力も回復し、アバドンさんの光の盾程じゃないが1枚魔力障壁が掛かった。ありがたいっ。
「助かったが遅いって!」
「ここからは完璧よっ?」
「ムフフフ」
「予見にブレがありました。なにか、劇場のような所が見えたのですが??」
「そこ見なくていいからっ、あとエル・ジェリーマンも別に面白くない!」
「失礼、天使殿とアリッサ様がいないと必死になるもんだな〜、と」
「······」
やり辛っ。つーか、アバドンさん達どこた?
クリスタルリトーに数発風の魔力杭を撃ったら『結晶の戦斧』を連打してきたから慌てて水面を飛び退きながら、チラっと辺りを見回す。
「っ!」
いたーーっっ! 樹の砦のバルコニーの手摺の上にアリッサを背負ったまま立って腕組んでる。
完全に『教官モード』だ。もう手、貸してくれない流れだなこれ。つか今、鍛えなくてもさぁ。
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切り替える。興奮して気付かなかったが溺れ掛けて意外と減っていた体力も戻ってるっ。
「おっし······探知に専念したい! 頼む!!」
「任せなさいな!」
「先読みします」
「ごゆるりと〜」
ゆっくりはしてられないがっ、俺は3人が大暴れするクリスタルリトーを引き受けてくれている内に素早く水面を移動しながら鍵の杖を基点に探知に集中する。
展開させた風の杭はキープしたままだ。
改めて探る。······いや凄いな、脳が、『無い』。他も人の頭のような形をしているだけだ。コイツ自体が人形なんだな。
それでも位置を探る······ん? 全体からすると小さいが、ある! ちょうど子供が膝を抱えたくらいの魔力の結晶? らしいのがある。奇妙だ。魔力が頭部と一体的で、これが核だとわかり難い。
それでも確かに感じる。錆びた王冠と同じ形ある濃密な、飛躍の可能性を秘めた魔の魂の鼓動!
「見えた」
俺は風属性のさっきより簡単な超シープランド完封陣を放って牽制! もう見切られて結晶の戦斧を当てられて相殺されるが派手な爆発が起こるっ。
1本戦斧がこっちに抜けてきたが、魔力障壁が砕けて逸れた。あっぶねっ、だが俺はその隙を逃さず、失恋で培い修得した鍵の杖で姿と気配を消す力を使ち透明になる。
これを予見してたらしいアストロロジーが水晶玉を基点に『俺の幻影』を造って配置してくれた。上手い。ロックローズより完璧補佐!
とにかく水中に入る。顔の周りだけ泡沫の守りを利かし、杖の念力でクリスタルリトーに迫るぜっ。
「······」
クリスタルリトー。単純みたいに聞いてたが、事態から『根本的に離脱』することを実は企んでた中々のヤツ。思考がシンプル過ぎるのと、時間や個に関する認識が他と違ってたんだろな。
『そもそも罰を受け、更生する筋合い等ない』
酷い話だが、罪人側からするとそんな考えもあるだろう。
対して、意識なかったが俺は『法』の側で働いてる体だ。
成り行きではある。俺も講師できるくらい器用じゃなかったら、帰る故郷がなかったら、巡り合わせが悪かったら、どうだったかわかったもんじゃない。
演芸は楽しかったがそう綺麗な世界でもなかった。細い綱の上歩いてここまで来たようなもんだ。
クリスタルリトー。全く懲りず『俺は俺以外どうでもいい』て基本姿勢。清々しいくらいさ。
「······っっ」
魔力結晶はバレるか? 今使える自力の魔力の全てと水に紛れ易いと期待してウォータジェム十数個を込め『特大魔力杭』を1本作る。
ヤツは水面の上を激しく立ち回ってる。
『じゃ、面白くなくなったらどうするんですか?』
夢ん中のアリッサ。アイツ、夢魔だから本人だろな。言ってくれるぜ。
狙い澄ます。エル・ジェリーマン眷属の重力波からのアストロロジーのマナボム連打による結晶の戦斧全弾相殺! 続けてロックローズの近接攻撃魔法『マナキャリバー』で一太刀浴びせる!
今だな。
「っ!」
俺は特大魔力杭を水中から撃ち出し、精確にクリスタルリトーの核を貫いた!!
ヤツの頭部が砕け、俺は水上に飛び出した。幻影の俺を消して水晶玉を回収するアストロロジー。
「どうもこうもない。面白くなくたって今日も生きてるピロシさんだっ、てやんでい!」
「なんの話よ??」
近くにいたロックローズには戸惑われちまったぜ。
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というワケで樹の砦に生存者と共に引き返した。人形分体? 達はクリスタルリトー撃破後に崩れ去った。独立した存在ではなかったようだ。
回収できたこちらの眷属の遺骸はそう多くなかったが、可能な範囲で蘇生も行われた。
倒された樹海軍の上位個体は遺骸が消し飛んでしまっていて、ヨミロートスによって改めて『新生』する必要があるらしかった。
「で、コレの処遇だよ」
「生きてるわね。錆びた王冠に変わらないし!」
ヨミロートスの感覚で、あまりにもなにもない樹の砦の広間に俺達はいた。アリッサを背負ったアバドンさんに首魁連中に今いる上位個体達勢揃いだ。
大穴の空いたクリスタルリトーの核を取り囲んでいた。
『後手』に回らないようにアストロロジーに近くにいてもらってるが、ロックローズが対抗してアストロロジーの前に立つから結構邪魔になってんな。
「クリスタルリトー、観念するのである。こうなってまで足掻くでない」
アバドンさんが諭すと······
「クソ天使めっ! ちくしょう〜っっ。寝込みを寄って集って襲いやがって〜〜っっっ」
さっきまでとは打って変わってかなり甲高い声が穴空きの核から響き、核はカッと地属性の光を放って変容し、幼児のようなシルエットの小さなクリスタルリトーになった。きっちり胸には穴が空いてる。
「それが矮小体か? というか、お前どーやったら死ぬんだ?」
「うるせー! 遅刻鍵の主めっ。不意打ち卑怯野郎っ。俺はこの状態でも『50分』は勇者と殴り合ったっっ。舐めんなよーーっっ!!!」
小さい拳でめ〜ちゃ素振りしまくって威嚇してくる矮小化クリスタルリトー。
「え〜と」
取り敢えず完封できた、てことでいいんだよな??
やり難いヤツだなぁ······




