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親父の遺産がダンジョンだった件  作者: 大石次郎


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43/68

43話

ベルの付いた扉を開ける。


「いらっしゃいませ」


控え目だが、意識して滑舌よく話そうとしている声。ユーナンだ。


中に入ると採光強めで換気しっかり。シンプルな内装で観葉植物が多く······


「っ!」


飾り棚には『山羊系』の雑貨と、そう高価でもないが『見栄えのいい鉱石類』が並べてあったっ。


「お、ピロシ。石置いてるぞ? これ全部でいくらくらいだ?」


入って観念したモリオは急に俗なことを言う。


「普通の絵皿並べたくらいだよっ。座るぞっ」


「絵皿も物によるだろ?」


「お好きな席にどうぞ。シープランド君達、来てくれて、嬉しいけど······ちょっと」


気恥ずかしいそうに手頃な窓辺の席に案内してくれるユーナン。エプロンにバンダナ、いいな。


店内はランチには少し早く、年寄夫婦と奥さん勢が少し、くらいだ。


「ココミがよく来てるから邪魔になると思って避けてたんだが、ピロシが行こうってしつこくてさ」


「そう、なんだ」


振り返った拍子に前髪が分かれて片目が見えた。夢より穏やか、大人だ。


心臓バクバクしてきた。あるあるだが、気になる女は予想を軽く越えてくるもんだ!


「いや、俺としては同級生のやってる商売は一通り品評しておこうかと思ってさ」


「ええ?」


「お前は、どの立場なんだよ?」


モリオがツッコミとして機能してちょっと3人で笑っちまう。


よし、いいぞ。モリオを捕獲しておいて正解だ。コイツを相方にトークを回そう。


「これ、メニュー。ハーブを使ったのがお勧め、だから。ここの裏庭で、ハーブ育ててるんだよ?」


「「へぇ〜」」


ハーブの世話をするユーナンか。いいな······


「ユーナン」


キッチンの方から同年代くらいの女子の声がした。


中くらいの背で、短髪。胸大きく身体を鍛えていて料理人というより若手の冒険者前衛職って感じ。


「は〜い! 決まったら、呼んでね」


お喋りが長かったらしい、ユーナンはキッチンの方に足早に戻っていった。


「今の人が共同経営者?」


「みたいだな。フサ村の山羊牧場の3女だっけな? 接客は苦手みたいだが料理は上手くて、よく働くらしい」


「そんな感じだな〜」


ユーナンが接客担当になるのは意外だが、今の様子を見る限り2人でいい塩梅なのかもしれないな。


······実際、このあと頼んだ料理はどれもシンプルだが丁寧で、美味しかった。ヘルシーだけど素朴な感じ。フサ村的らしい『田舎風ヨーグルト漬け山羊肉とビートのハーブキッシュ』なんて最高だった。


「ユーナン、御馳走さん。どれも美味しかった。相方さんにも言っといてくれよ」


「値段も手頃だ。ココミが通うわけだ」


煎り豆茶を飲みながらオッサン2人揃って満足!


「ありがとう。私も、うれしい······」


ユーナンがちょっと涙ぐむから俺達の方が慌てちまった。


「そういや、石を飾ってるんだな。ピロシは専門家だぜ?」


「大袈裟に言うなよっ」


「最初は山羊の置物だけ飾ってたんだけど、ちょっと拘り過ぎかな? て思って。2人で話して、飾り棚のバランス、よくなった気がする」


なるほど〜、これは······渡していいんじゃないか? 俺が採取業やってると伝わってるし、そこまで高価でもない。話の流れ的に不自然じゃない。


よし、渡せ。渡すんだ、ピロシ! 今だ、それっ!


_____



はい。退店まで渡せずしまいでした〜。トホホ。


「じゃ、俺はココミに花でも買ってくるわ」


「予防線かよ周到だな〜」


「うるさいよ! お前が連れてくから仕事増えたんだよっ」


「キッシュ美味かったろ?」


「オッサン同士で『お洒落キッシュ』とか食べたくない!」


言いたい放題だなコイツっ。


まぁいい。モリオと別れ、俺は······ポケットの中のサニディン石に触れる。


「行くだけ行っとくか」


俺はせせらぎ亭に引き返しだした。都会で、『また今度』と言ってそれっきりになった人がどれくらいいたことか。今は、環境違うけどさ。


店の前まで来ると、もうランチタイムでちょっと混みだしてた。あちゃ〜、日を改めるか?


チラっと窓を見ると、店内にユーナンの姿が見えなかった。


「裏庭でハーブとか言ってたな」


と呟きつつそっちに足を向けるが、どうなんだ? いきなり裏庭に行って石渡すのか? 普通に怖いぞ? 俺よ。


このまま帰るのが口惜しいだけなら、ヤメテオケ。


等と自分と問答しながらコソコソと裏庭が見える辺りまで来ちまったよ······


「っ?!」


いたことはいた。ユーナン。と、その共同経営者の短髪女子。


よく手入れされたハーブ園で、2人して園芸ハサミと籠を持ったまま、


「······」


結構熱烈にキスしてらっしゃった。


あ〜、んー。そっち、かぁ······作業中に不意に燃え上がっちゃったんだろな。


俺は素早く収納の腕輪からグランドマスターキーを抜くと、練習中の『迷彩及び気配消失』の力を使い姿と気配を消し、その場をそっと離れた。


_____



ダンジョン3層に戻った俺はダークエルフ拠点周辺の環境整備の為に戦いまくっていた!


「雷、氷、炎っ。奥義!『10連鎖魔法杭超シープランド完封陣』っ!!!」


ちゅど〜〜〜んっ!!!


野良モンスターの群れを吹っ飛ばした。


「よーし! アバドンさんっ、ロックローズ! アリッサの弔い合戦だ!! このまま船着場まで駆逐してくぞっ?!」


「アリッサは別に死んでいないのである」


「一方向だけやっても管理し難いわ。まず拠点の周りを固めてよ?」


「どぉりゃああーーーー!!!」


「「······」」


2人や他の仲間達にドン引きされながら、俺はダンジョンで暴れまくった!


結局、仕事だけが親友だぜっ! バッキャローーーーっ!!!!

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