41話
アリッサはスヤスヤって言っていいくらい呑気そうに眠り続けていた。
ダメージを受けたとか魔力が枯渇したという感じではなく、矮小体のまま強く高度な力を使い分け与えてなお魔力を蓄え過ぎた影響のようだった。
ロックローズは植物系眷属達が退散してから小一時間で気が付いたがバツが悪いようで、アストロロジーが維持していたかつての自分の私室に、
「気を落ち着ける」
と籠もってしまい出てこなくなってしまった。
「ま、わかんなくもないさ。『赤ん坊までは戻ってない』のは好材料ってことで。まずは魔除け城壁と旧リザード拠点までの転送陣を回復させよう。ここは物騒過ぎるぜ」
「また土木工事かっ! 消化不良だ! シュウゥッッ」
リュブリャナなんかは不満そうでもあったが、別に『メジハ迷宮武闘大会』を開いてるワケでもないしさ。
「そのパワーで城壁積んでこうっ」
さっきのただの斥候だったとしたら結構ヤバいかんな!
「ゴーレムの生き残りも手伝わせられないかい?」
「御殿支部が増える一方ですね〜、ムフフっ」
「私達は見張りと結界維持に専念······ヒィィィッッッ」
「拠点内の水路や貯水池の瓦礫撤去は私達水棲種が······」
「それも結構ですが、ペンギンは壁工事に回した方がよいでしょう手が足りません。リーフウォーカー達は体調の悪いダークエルフ達を診させたらよいですぞ〜?」
「それは助かるな」
「私は結界の張り直しの支度を······」
「では炊き出しの準備を始めるのである。持ち込みの糧食を使うから心配無用。坊、飲料水用の水場の改善をいくつか先に済ませるのだ」
「おお、忘れてた。コメリナ案内してくれ。あと、ケムシーノ達はアリッサ見といてくれ!」
「「ケムんっ!」」
それぞれざっと役回りや手順は決まった。
······半日掛からず、ざっくりだが今のダークエルフ拠点の規模相応で魔除けの城壁完成! 飲料水用の水場も必要分清めたり増やしたりした。体調不良者も回復。
結界補助に掛かりきりでバテバテになったツルベ火クィーン達を含めウィスプ勢は休憩に入ってもらった。
俺もそろそろしんどいが、もう一がんばりで最低限拠点内で影響の強い毒の染み出した箇所を手早く浄化して回り、
「だぁっ! もう無理っっ。ちょい寝るわ! あとは首魁達とスキュラでダークエルフ達と話して回してくれっっ」
炊き出し所の眠るアリッサとケムシーノ達のいるスペースで寝転がった。しんどっ。
それでも要領は得てきてる。余剰な魔力を鎮め、杖に循環吸収させ······
「ピロシ・シープランドといったわね?」
「っ?」
不意に話し掛けられて目を開けると浮遊する杖の上に立ったロックローズだった。
「臍、大丈夫か?」
「うるさいわね!」
臍を庇って赤面するロックローズ。いや、他意ないんだが?
「混乱していたけど、コメリナから大体話しは聞いたわ。フッ」
髪をかき上げてなにやらポーズを取るロックローズ。
「仕方ないわね。不本意だけど、バカ師匠に借りができたから首魁の役目は一旦アストロロジーに任せ、私があなたの補佐として完璧な」
「悪い。眠いからあとにしてくれる? 細かいことはアバドンさんに聞いてくれよ。あの、岩みたいな顔でスープ配ってるオジサンな」
俺は寝返りを打って、ちょいめんどくさそうなロックローズに背を向けた。
「ちょっとさぁ! 私がっ、この私が下手に出てるのよっ?! あんた血統で鍵受け継いだだけでしょ? 大体あんたの一族がポンコツだからっ」
あーー······結構手強い感じの新補佐役来たな、コレ。俺はため息ついて、敷かれたクッションの上でケムシーノ達に囲まれて眠るアリッサの頬を指で押してやった。
「ふひひっ☆」
軍師兼師匠殿はだらしなく寝たまま笑うばかりだった。
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なんだかんだで2日掛かりで城壁、拠点内環境改善、旧リザード拠点まではギリ繋がる転送陣の設置、それならこれもだいぶ荒いが旧リザード拠点とはギリ繋がる言霊の石の通信塔も設置完了!
ダークエルフ拠点の方が危険そうだから、俺、アバドンさん、眠るアリッサとケムシーノ達以外はここに残し、一先ず旧リザード拠点まで転送陣で戻ることにした。
「留守番頼むぞ補佐役!」
「大して補佐になっておらんのである」
「あんた達ね! 私がアリッサの弟子だからって軽く見てるんじゃないかしら?! 首魁よっ!」
「作業はまだ多い、早く戻ってくれ」
心配なくなると淡白なコメリナ。
「ああ、明後日には」
「見えます。『失恋の相』が」
「別れ際にそういうの占うのやめてくれっ」
急に占ってくるアストロロジー!
とにかく俺達はまだ仮設のスライム御殿支部の転送陣で旧リザード拠点まで転送していった。
そのあとオークジェネラルに、
「いつまでここに詰めりゃいいんだ?!」
とゴネられ、通信でビッグヘッドに普通のストーンゴーレムでいいから作業と防衛の壁役に40体寄越してくれと頼んだら、
「言うが易しですな。そもそも」
とクドクドと長文で返信が来たりしてげんなりしたが、とにかく俺達は再転送で地上のアバドンさんの小屋に戻った。
「ふぅ〜、魔力薄くて軽っ!」
伸びをしちまう。
「「ケムんっ」」
上位ケムシーノ達ものびのびだ。
「なぁ、お前らも1層の住人だし、いっそ外の方が······てっ、連れてきて大丈夫なのかよっ?!」
『出所判定』じゃないと死ぬんじゃ??
「問題ない。そもそもこやつらは迷宮の外から入り込んだ部外の者達の子孫。また俺は『善き者』と判定した。出てよし」
「ええ〜?」
「「ケムケム!!」」
飛び跳ねて喜ぶ上位ケムシーノ2体。
「アリッサは迷宮に置いておくと狙われる可能性がないではない。この小屋で、世話を引き続きケムシーノ達にさせるのである」
「マジか」
アバドンさんは眠るアリッサを片手で摘んで連れて地下室から出てゆき、ケムシーノ達も意気揚々と続いた。
「メジハ迷宮、出るとなったらわりとサックリ行くのな〜」
呆れるやら、けどまぁそんなもんかもな。ようは『もう無害で、好きにしてよし』て判定だろうから。
「······」
それよりもだ! 失恋の相ってなんだ? めちゃ怖いんだが??




